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「……どこまで『思い出し』てるの?」
「さぁ?どこまでだろうね。答える必要はないよ」
「じゃあ、今の君は、『何』」
「僕は僕。それだけだ」
子供は……いや、片割れはそう言って、リジェネを見据えた。
そんな片割れにハレルヤは呼びかけようとして……何故か、躊躇った。どう呼んだらいいのだろうと一瞬、不思議な疑問が頭をよぎったのだ。
妙な話である。彼はアレルヤだ。アレルヤ・ハプティズム。それ以外の名前など持っていないはずの、自分の双子。なのに、どうしてだかその名前を口にすることを躊躇った。まるで、それが彼の名に相応しくないかのように。
少なくとも身に纏う空気は変わらない。首に巻き付いていた鎖が消えた瞬間に、片割れとの遮断されていた繋がりも復活した。姿が変われど中身は変わらない。目が金銀なのも変わらず。彼は間違いなく、アレルヤだった。
なのに、そう思って眉根を寄せる。
そういえば、自分の名前は何だっただろうか。
「……おい」
「ん?……あ、えっと……誰?キュリオスに似てるけど…」
アリオスの呼びかけに振り返った子供は、困ったように頬を掻いた。相手のことが分からないため、どのような反応をしたら良いのかがイマイチ分からないだろう。……あぁ、このあたりは間違いなく『アレルヤ』だ。
けれども。
なら、さっき、どうして名乗らずぼかすような言い方を?
……そうしてもう一つ、違和感がある。何だか分からない違和感だったが、しかしそれは間違いなく自分の中に存在している。他の人形以外のメンバーを見てもそのような様子がないことから、気付いていないのだろうと分かるのだが。
「え…!?何で僕の名前知ってるの!?」
「あ……あぁ、そういえばこの姿って知らないんだっけ……教えてないしなぁ…」
「キュリオス……彼はアレルヤです。正確に言うと、精神体の」
「そうそう。ソーマちゃんの言うとおり」
ね?と笑ってみせる片割れに、再び奇妙な感覚を覚えた。
また、自分から名乗ろうとしない。自分の名前を口にしない。
「本当にお前なのか…?」
「ライルも知らなかったね、そういえば」
「……アレルヤ」
「ん?何?」
あと一つ、違和感がある。
この状況下。リジェネと敵対しているこの状況下で、彼だけが妙に明るい。いつも通り過ぎる、というべきか……この状況を物ともしていない様子なのだ。他のは口は開いても、喋ってはいても、どこか警戒は解けずにいるというのに、片割れに至っては警戒すら行っていない。そんなもの必要ない、とでも言うように。
そして何となく、自分の方もそれが必要ないように思えてくるのだ。そんなことをしなくとも問題はないと。リジェネと最初にあった日、手も足も出ないで敗北を覚えたというのに、その記憶は薄れもしていないというのに。
その思考の根拠が分からないのが、実に腹立たしい。根拠があるのは分かるのだが、その根拠が掴めない……本当にイライラする。
イライラしてイライラしてどうしようもなくて。
一体どうするべきなのかも分からないままに、それでも何かを掴もうと片割れの意識に触れた、その瞬間。
何かが、流れ込んできた。