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この話は正直、紅白まんじゅう屋のおばちゃん(フルカラー劇場第五巻を参照のこと)を出したいなぁと思ったたために生まれたといっても過言ではない……かもしれない。
そんなおばちゃんと、ウイングとデスサイズの話です。
24:自転車
そろそろ夕陽が沈んでしまうだろう、そんな夕刻だと呼べる時間帯。
とある饅頭屋の前に一台の自転車が止まり、それから二つの人影が降りた。
ウイングとデスサイズである。
「饅頭屋のおばちゃんに事情説明……かぁ。出来る?」
「……難しいな」
そういって、ウイングは軽く肩を竦めた。話すにしてもどこから話せばいいのかが分からない。話したところで信じてもらえるかどうか。ガンダムが先に電話である程度は伝えていたらしいから、そちらで既に理解していることを期待している。
というかそもそも、である。どうして自分たちが彼らの代理として饅頭屋に来なければならなかったのだろうか。事情説明が必要なのは分かるのだがそこは解せない。お願い、と言っていた顔には疲労の影があったような気もするし、何か手を離せないことでもしていたのかも知れない。他のはフィールドワークに出かけたとかどうとかでいなかった。だから、自分たちが代理なのだろう。ただ、代理に自分たちが選ばれたことが本気で分からなかった。何をどう考えたらそうなるのか。
「大体、直接の事情説明など必要なのか?電話で話してそれで終わり、で良いだろう別に」
「んー……ま、そりゃそうだろうけどさ、コトがコトだし?実際に見せた方が良いんじゃないかってコトに落ち着いたんじゃない?」
「実際に見せる……か。それでお前がよく了承したな…」
「そりゃね、断ったらいけないような雰囲気だったし」
本当は帰宅なんて無かったんだけど。そう続けるデスサイズは、やっぱり自分の顔のことが気に入らないらしい。どっちかと言わなくても可愛らしい顔だから。こちらとしては、それで構わないと思っているのだが……そういえば言ったら殴られたのだったか。
まぁ、確かに嫌だろうとは思う。男なのに何が悲しくて可愛いとか言われなきゃいけないんだよ!との叫びは今でもしっかりと覚えているので、尚更分かるというか。
などと思いながらもウイングは店の中へと足を踏み入れ、少し遅れてデスサイズも入ってきた。あぁは言った物の、少し躊躇い気味だ。
そんな自分たちを見てか、カウンターの向こう側にいた女性が目を丸くした。
「おやまぁ、アンタら本当に人間になったのかい?」
「え……オレたちが元・何かって一目で分かった!?」
「分かるともさ」
「へぇ…凄いな。流石はおばちゃんってトコ?」
感心するようにデスサイズが呟く。
そして、彼の言うとおり、目の前にいるこの女性こそが『饅頭屋のおばちゃん』だった。
「…本当に人間になっているとはねぇ……聞いたときは半信半疑だったけど」
「けど?」
「これは信じるしかないだろうねぇ」
「だよなー……」
苦笑する女性に彼の方も笑って返して。
しかし、次の瞬間。
「にしても、えらくべっぴんさんになったねぇ…」
「……え」
その笑みが引きつった物になったのを、ウイングはこの目でしかと見た。引きつったというか……表情の中に呆然としたような何かが入った、というべきなのだろうか。まさか、ここに来てまでその内容の事柄を言われるとは思っていなかったらしい。ちなみに自分も思っていなかった。
衝撃を受けているデスサイズが見えているのかいないのか、女性は何度も頷きながら言葉を続ける。
「何だか色々と着せてみたくなるような顔だねぇ……あぁ、いっそ元に戻るまでは看板娘でもやってくれないかい?充分いけるよ」
「か……看板…娘……ぇ?」
「……すまない。もう帰って良いか?」
「あぁ良いよ。元々私の方がワガママを言っていたんだしねぇ」
女性から返る許可を得たウイングは、完全に固まってしまったデスサイズの腕を引いて店を出ることにした。何か、このままここに置いていたら彼があまりにも不憫だというか。仲間に言われるのとそれ以外に言われるのでは、受ける感情も違うだろうし。
店から出れば、夕陽は本当に沈みかけるような場所にあった。沈みきるまでに帰れるかは五分五分と言ったところか。
自転車の所で鍵をさしているところで、ようやく我に返ったのかデスサイズの瞳に意志が宿った。
「あ……オレ…」
「ようやく正気に戻ったか。帰るぞ」
「…なぁ、思い切りスピード出して帰ってくれる?ちゃんと背中にしがみついてるから」
「落ちないようにか……で、何故だ?」
「……何か全部忘れたい。スピード出したらホラ、爽快な気分になれるかもってことで」
「分かった」
流石に今回ばかりは彼の気持ちがよくよく分かったので、ウイングは大人しく頷いた。
…いや、ごめんね?デスサイズ、本当にゴメンね?
でも、こういうのもアリだと思いま(以下略)