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マリーはやっぱりソーマになってました。
やっぱり、荒熊三のことが辛かったのでしょうね…。
ソーマとアレルヤは、あの空白の四ヶ月間、どんなやり取りをしたんでしょうか…。
18.不器用なりに
カツンカツンと音を立てて早足でソーマは歩いていた。
そして、それを追いかけてくる足音もまた、追いかけている時点で早足だった。
「……貴様はいつまで付いてくる気だ」
カツン、ともう一つ音が響いたところで足を止め、イライラしながらもソーマは振り返った。足でおいていくことが出来ないのなら、残るは言葉のみ。艦内を走って巻くことは、自分よりも長くここにいる相手に対しては不可能と言っていいだろう。
だから、ソーマはアレルヤを見た。
何か微妙にキョトンとしてるアレルヤを。
「いつまでって……ごめんマリー、僕にも分からない。いつまでだろうね?」
「……はぁ?」
その答えに思わず、ソーマは『私はソーマ・ピーリスだ!』と返すいつものパターンを覆してしまっていた。訊いてるのはこちらだというのに、どうして聞き返されなければならないのだろうか。しかもそんな根本的なところから。
しかし、そんなこちらの驚きも関係なく、アレルヤの方は腕を組んでしきりに首を傾げていた。
「あれ……本当にいつまでかな……マリー、分かる?」
「私に分かるわけがないだろう……」
「だよねぇ」
朗らかに笑うアレルヤに、あぁもう、とソーマは頭を抱えた。
こんなのだから、マリーマリーと煩いと思っても殴れないのだ。怒鳴りはするのだが、その先のあと一歩が踏み出せない。一発でも殴ることが出来たら、今までの事も含めてある程度は溜飲が下がるような気がしているのに。
そう言うところも少し、腹立たしい。
「で?私に用事でもあったんじゃないのか?」
「えぇっと…うん、多分無いよ」
「……無いのに付いてきたのか」
「うん」
こくりと頷かれ、ソーマは脱力する。するしかなかった。
用事もなく付いてくる……その様はまさに人なつっこい子犬か。こんなの主人格で、さぞもう一つの今はいないという人格は苦労しただろう。戦闘中は何度も罵られもしたが、そうやって考えてみると憎々しさよりも同情の方が強く思えてくるから不思議な話だ。もう少し、ちゃんと言葉を交わしてみたかったかもとも、思う。
今考えたところで詮無き話だが。
はぁ、と息を吐いて、とりあえず。
「アレルヤ・ハプティズム……いいか?今更だが言っておく。私はマリーではない。ソーマ・ピーリスだ。忘れるな。というか二度とマリーと呼ぶな。以上だ」
「でも、君はマリー…」
「だから私はソーマだと言っている!」
物わかりの悪いヤツだと、ソーマは声を荒げた。全く、何でこんなに聞き分けがないのだ。お前ともう一人の関係のようなものなのに。お前だって、もう一人の方の名前で呼ばれて、もう一人の方に対する扱われ方をされたら嫌だろう?
そう言うと、アレルヤはいいや、と何でもないように首を横に振った。
「呼ばれるのは置いておいて、ハレルヤにされる対応が僕にされても仕方ないと思う」
「というと?例えば?」
「えっと……まぁ、同じ顔だし。ていうか同一人物だから……ハレルヤのこと嫌いだなぁって思ってる人がナイフもって飛び出してきて、僕だと分かっていても刺してきたりしても、僕ってあまり気にしないかもとか」
「……」
確かにそれは、もう一人に対して……という点では一緒な気もするが。
多分、何か違う気がする。
ツッコミを入れるのがバカらしくなるくらい。
いや、本気で。
「……では、一つ訊こう」
「何、かな?」
「何故、お前は私をマリーと呼び続ける。違うと分かっているだろう」
違うというのが、本当に『違う』のだという事を、この相手ならばよくよく分かっているはずだ。なのに今でも自分を『マリー』と呼ぶ。違うと知っているのに『マリーに対する扱い方』をする。
不快かと言われれば分からないと答えるが、不可解かと聞かれれば頷く。
どうなのだろうとじっと視線を送ると、彼は、困ったように笑った。
「…失礼なのかも知れないのだけど、僕にとって、君はやっぱり『マリー・パーファシー』なんだ。これはそう簡単に変わらないんだ…そこは、分かってくれる?」
「では、どうして付きまとう?私が『マリー』だからか?」
「それもある、けど…」
困ったような笑みは、さらに深くなった。
「やっぱり、君とも仲良くしたいから。でも…僕にとっては『マリー』なのに違う君と、触れ合ったらいいか分からなくて。だからマリーと同じに扱ってしまうんだ…ごめんね」
その言葉に気付いた。こいつはかなり不器用だ。
こんな感じで少しずつ仲良くなってくれたらとか。
…仲良くなってくれないでしょうか。