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拍手再録です。
アレルヤ、ティエリア、留美で王の庵の孤児院時代。
10.ため息 (王の庵)
「……で、あなた方は何をしているの?」
「りゅ……留美…!たっ、助けてっ!」
「助ける……と言われましても」
必死のアレルヤと、それから……ティエリアを見て、留美は溜息を吐いた。
端から見れば力比べの真っ最中、という様子の二人。けれども両者ともの纏う雰囲気は、遊びなどと形容させないほどに緊迫している。
「本当に、何をして?」
「簡単なことだ……っ」
ぐぐ、と押して、ティエリアが言う。
「アレルヤ・ハプティズムが血を摂取しないなどと言い出しただけ…だっ」
「うっ……だっ…だってティエリア貧血気味なんだもん!」
押したり押し返したりを繰り返す少年達を眺め、成る程、と状況の原因を納得しながら咀嚼する。一週間ずっと血を吸われ続け、そういえば昨日は(互いに)嫌々ながらもハレルヤにも血を与えていた事もあり、これで貧血にならなかったら奇跡だ。
吸血鬼とは何とも不便な種族だと思いながら、ならば、と提案を一つ。
「私の血を吸えば良いでしょう?」
「ダメだ」
「ダメだよ!」
即座に二人からだめ出しされてしまった。
そのあまりの拒否っぷりに、留美は少しばかり頬をふくらませる。
「何がいけないんですの?」
「留美は女の子でしょ!?そんな、噛み傷なんて無い方が良いよ…」
「噛み傷は無いんじゃなかったかしら」
「だとしても、だ。彼に血を与えるのは俺の役目だ」
「誰が決めたの?」
思わず問いかけていたが、再び争いだした二人の耳には届かない。
本日二回目の溜息を吐いて、留美はソファーに座って紅茶を飲むことにした。
(2009/02/11)