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拍手再録。
一期の、ソーマとミン中尉の話
14.華奢な指 (人革連)
視線を感じて、ソーマはうつむき加減だった顔を上げた。
すると、ばっちりと合う自分と相手の視線。
「……何でしょう」
「あ、いや…その」
話し掛けられると思ってはいなかったのだろうか、相手は少し慌てる素振りを見せた。
が、それも僅かの間だけ。いつものように微笑みを浮かべて、最近知り合った上官は穏やかに言葉を紡ぎ出した。
「貴方の」
「私の?」
「手ですとか腕でですとか……やはり細くて、たとえ超兵であろうと少女なのだと、しみじみと思っていただけです。気に障ったのなら謝罪しますが……」
「いえ。ただ貴方の視線の理由が気になっただけですので」
謝られるのは、あまり本意とは言えない。
そう続けると、彼はそうですか……と安堵の息を吐いた。自分が嫌だと思っていたわけではないと知って、安堵を覚えているらしかった。
彼のそんな様子は気にならないが、ふと、先ほどの言葉を思い返して眉を寄せる。
超兵であろうと少女。だから一体何だというのだろうか。少女だろうと少年だろうと何だろうと超兵は、超兵。戦うためだけに存在を許され、戦うことだけで存在を確立させる者。戦いさえあれば存在できる、戦いが無くなれば存在は否定される者。それが、超兵であろうと少女……などと、当然のことを。
なのに彼は口にした。
単なる『超兵』ではなく、そこに『少女』というものを付け加えた。
それは。
「ミン中尉」
思わず呼びかけた声は、どこか固い。
「貴方は、私が戦場に出ることを今、どう思ったのですか」
「今……ですか?」
「今です」
頷けば、彼は数秒ほど悩んで、言った。
「何故、少女が戦場にと思いました」
返ってきたのは一番嫌な答え。
嗚呼、少女だろうと私は超兵だというのに!貴方は思考の中だけであろうと、超兵から戦場を奪おうというのか!
(2009/02/11)