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来週は戦闘がたくさんあるんだろうか…なんて思ってました。今回の話の終わり。
あぁ、ていうか、でも、先週が先週だったから落ち込む人は落ち込んでますよね。
そんな感じの話です。



「アリオス」
「……ダブルオー、どうかしたの?」
 話し掛ければニコリと笑うその顔に、影があると言えば彼はどういう反応をするだろう。格納庫の隅で両膝を抱えて座っていた同胞を見て、そんなことを思う。きっと、慌ててそんなことはないと否定するのだ。そして、いつものように笑おうとして失敗するのだ。失敗して、もしかしたら……泣き出すかも知れない。
 あまりにも鮮明にその様子が浮かんでくるようで、顔を顰めかけて頭を振った。ここで顔を顰めればアリオスに嫌な思いをさせる。それはごめんだ。
「お前、何か言いたいことはあるか。何でも言い。俺に対してでなくても良いから、何か」
「……ない」
「あるだろう」
 そうでなければ、はき出したい何かがなければ彼だってこんな状態ではないだろう。
 ……本当はケルディムが良いのだが。そう、ダブルオーは息を吐いた。彼の方が他人を気遣う事が出来る、という点で優れている。兄貴気質というか、そういうのが備わっているのだ。言葉だって上手に使う。
 だが、今の彼はセラヴィーと一緒にいるので使えない。というのも、セラヴィーがとてつもなく苛立っているので、そちらを宥めているのだった。原因は連邦のあのテレビ放送。自分たちがメメントモリで軌道エレベーターを破壊したくせに良くもまぁ、他人に罪をなすりつけることが出来る物だな……見苦しい。彼は絶対零度の声音でそう呟いていた。そんな彼を放って置いたら、ヘタすると八つ当たりでプトレマイオスⅡに穴が空く。
 だから、同じ格納庫にしまわれている自分が、自然とアリオスの相手をする事になる。それは、もちろん義務感からではない。向いていまいが彼のことは心配なのだ。少しでも力になってやりたいと思うものだろう。
 ダブルオーはアリオスの隣に立って、俯いている彼の頭に右手を乗せ、オレンジ色の髪を軽く梳いた。精神体であり痛むことを知らない髪は、いつまで経っても手触りが良い。
「……言い出しにくいか?」
「言い出すも何も、言う事なんてないもの」
「なら、俺から話す」
「……え?」
「最近の、後悔の話だ」
 思わぬ展開にだろう、顔を上げたアリオスの表情を見ずに、ダブルオーは自分の本体の方へと視線を移した。
「成功率が、とても低い仕事があった。それはあの時点では俺以外に出来る存在が居なかったから、何が何でも俺が、成功させなければならなかった物だ。そうしないと、何万物命が消えると、分かっていた」
 ここまで言うと察することが出来たのだろう、ほんの少しだが彼の体がピクリと震えたのが、彼の頭に乗せている手を通じて感じられた。
「なのに失敗した。……不思議な話だな。四年前だって、今だって、出来なかったことは数えてみればかなりあるというのに。この不快感、後悔は……初めてな気がする」
 言って、自嘲の笑みを浮かべる。
 今までは、ここまで大きな被害を一度に出さなかったからだろうか。落ち込むことがあってもここまでではなかった。
 かつて無いほどの、一般人への被害。
 それは、恐らく軍人やCBに参加している人々の犠牲などとは比べることが出来ない事柄だ。自分たちは戦っているが、彼らは戦いすら知らない。なのに運命に翻弄されて命を落とした。もしかしたら助かっていたかも知れない命を。助けられたかも知れない命を落としたのだ。無惨に、無慈悲に、容赦など無く。
 何と言う不条理だろう。
 しかも、その不条理には逆らいようがなかったのだ。彼らには。
「……あのね、僕は約束を破らせたことが悲しいんだ」
 目を閉じ思いを馳せていると、小さく紡がれる言葉。
「君の後悔と比べれば、きっと些細で粗末な悲しみ。だけれどね、僕は、彼女を……マリー・パーファシーでありソーマ・ピーリスである彼女を戦場に出してしまったことが、とても悲しいんだ。それとも辛い、のかな」
 軌道エレベーター崩壊の時だけでなく、二つめのメメントモリを破壊するときまで。
 彼女を、戦場へと出してしまったのが辛い。
 言葉には出さないがそう言っているようなアリオスの様子に、何となく目を開いてみれば、彼は、泣いているようだった。涙は流れていなかったが、そう思えた。
「甘いね、僕。分かってるんだけど。でも。だって彼女の一番信頼していた人が、死んでしまったんだよ?ならせめて、あの人との約束だけは守りたいって、僕だって思ったんだ。あの人は、いい人だと思ったから。たとえ彼女の意思であっても、僕は、出来れば戦場に出て欲しくなかったよ」
 そう言って、顔を上げたアリオスには涙の後など無かった。当然ながら。
「ねぇ、これってどうなんだろう?道具なのに、誰か一人に感情移入しすぎている僕って、どうなんだろう?何だかアレルヤよりの考え方しか、出来なくて」
「…別に構わないと思う」
 これだけ長く一緒にいるパイロットなのだ。感情移入があっても仕方がない。
「人間だって、そうやっているだろう」
「人間……も?僕らも、人間と同じ?それで…良いのかな…?」
 どうなのだろうと、不安げに見上げる彼に、軽く微笑みもう一度、頭を撫でた。
「あぁ。道具であろうと、俺たちは人間と同じ心を持っても、良いんだ」
 これは何度も繰り返される問いだろうが、きっと答えはこれで良い。






みんな、自分のパイロットがとっても好きなんですよ。
だから感情移入しちゃいます。大好きだから。
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