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緑のお題とか久しすぎる気が。
何となくね、何となくニールが恋しくなっただけだから気にしないで…。
一期の話なので、ロックオン=ニール。
ていうかこのサイトのロックオンは全員ニールですよね、基本。
12.割れたグラス
「ロックオン、これ、この前借りた本ですけれど……」
「おー、アレルヤか……って何だその大所帯」
「みんな用事があったんだそうです」
ね、とアレルヤが視線を向ければ頷く二つの頭。
その様子をロックオンは呆れたように眺め、小さく息を吐いた。
「お前さんたちは何の用で来たんだ?」
「何となく」
「ふと寄ってみるのも良いかと思っただけです。お気になさらず」
「……それ用事か?」
言いながら、絶対に違うだろうとロックオンはまぁ入れ、と三人を招き入れた。刹那とティリアのよく分からない用事の内容はともかくとして、それを口実にここに来た理由くらいは察しているつもりだ。
そりゃ、気にもなるよな。
いつもは『頼れる兄貴』の自分が、あんな風に熱くなるなんて。
ラ・イデンラのテロの話を聞いた時、苛立ちに耐えることも出来ずに吐き出してしまった。あれは今思うと失敗だったと思うが、同時に仕方がなかったのだとも思う。どうしようもなかったからこそ、アレは外側に出たのだ。
だからこそ、アレルヤは本を返すことを口実に、刹那は何となくと言いながら、ティエリアだって気にはかけて、そしてここに来た。
それは、頭が冷えた今なら明確に分かることだった。
シュン、とドアが閉まる音を聞きながら室内を見ると、やはし個室に四人の男はきついのか……ちょっと部屋が狭く思えた。そこは招き入れた張本人であるから文句を言うことは出来ないのだが。
「…狭いな」
「同感だ。全く、これは一体どういう事なんだ…!」
来客の方はそんなこと知ったことではないらしい。
まぁ分かってけどと軽く肩を竦めて、ロックオンはとりあえず椅子を引き出してそこに座ることにした。ベッドの上は三人のせいで満員だ。
「アレルヤ、本。しまうから」
「あ、はい」
「サンキュ」
慌てた様子で、恐らく本を返しに来たのだと言うことを忘れていたのだろうアレルヤから本を受け取って、ロックオンはそれを棚の中へとしまう。……いや本当、何が口実で何が本音か分かりやすい同僚だ、全員。
「んで、お前らどうするんだよ。何しに来たって、何もしに来てないヤツまでいるしな…」
「俺は目的は果たしたので帰ります」
「…俺もだ」
「あ、僕も…」
立ち上がったティエリア、刹那に次いでアレルヤも立とうとしたようだったが、しかし何かを見つけたらしく動きは止まった。
「……いえ、やっぱり残ります」
「そうか?んじゃ、お子様たちだけ退場だな」
「子供扱いはしないでください」
「はいはい。悪かったって」
二人の子供を部屋から出して、本当に様子を見に来ただけだったのかと苦笑する。自分の様子を見て、それで安心でもしたのだろう。
ただしアレルヤは除く。彼の方は折角部屋の片隅、しかも見えにくいような場所にあった物を見つけたようだったから。こういう時、彼は本当によく分からない。鈍感かと思えば妙に勘が効くこともあって。
「ロックオン、実は全然いつも通りじゃないんですか」
「さてな?見たまんまだと思うぜ」
「なら、大丈夫じゃないんですね」
はぁ、とため息を吐いてアレルヤは続けた。
「どうせ僕らが来るのを予測でも何でもして、それで大雑把にでも片付けたんでしょう」
「ご名答。床一面にガラスが散らばってんのは流石にな」
「……頭は冷えたんですか」
「だから見たまんまだって言っただろ?」
物に当たったってどうしようもない。が、それをすることによって生じる虚しさに我に返ることはある。別にそれを狙っていたワケではないのだが、それでもしないではいられなかった。結果、こうやって今の自分は大分いつも通り。
自嘲気味に笑って、ロックオンはアレルヤの隣に座った。
「こんなことしても何もならないって分かってるんだけどな、つい」
「つい、じゃありません。破片で怪我したらどうするんですか。傷つくのは手だけじゃないですよ?」
「その時はアレルヤが手当てしてくれるだろ?」
「……しません。絶対にしませんからねっ」
ふい、と視線を逸らすアレルヤに、ロックオンは少し笑った。
部屋の隅に纏められたガラスのグラスの破片の事など忘れて。
みんなロックオンのことが心配だったんだよ、みたいな。
ラ・イデンラとかどれほど前の話?って感じですね。