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十年後ヴァリアーです。そして前回の「スクの仕返し未遂」の続きっぽく。
ある意味ザンザスの復讐です。

でも視点は山本だぜ。



「あ、山本ー」
「ん?ベルか?……っと、隣の人は?」
「ミーはフランって言いますー。で、貴方は雨の守護者さんですねー?」
「おう。山本武ってんだ」
 ヴァリアー本部へ着いてみて早々に出会った二人と言葉を交わしつつ、車の鍵をかけながら山本はどうしたのだろうと首をかしげた。いくら考えても、二人がこの場所にいる理由が思い浮かばない。何せ訪ねていけばフランの方は良く知らないからともかくとして、ベルの方は室内でのんびりとナイフで遊んでいたりする姿しか見ない。あとはスクアーロで遊んでる姿とか。
 だから、どうして二人は玄関にいるのだろうと思ったのだ。
 ちなみにお出迎えというのは無い。反応からもそうだと伺うことが出来るし、何より、彼らは自分たちに対しての敬意はない。多少は認めてくれているようで、こうやって話をするくらいはするけれども。
「お前らどうしてこんなとこに?」
「あ、そうだ。なぁ山本、こっちにバカ鮫来なかった?」
「いいや?来てないけど」
「ふーん……そ。じゃこっちに用はないから王子たち行くね」
 じゃーね、と手を振ってカエルのかぶり物をかぶっているフランを連れ、ベルフェゴールは去っていった。あっという間。
 その遠ざかっていく背中を眺め、それが見えなくなって元から感じ取りにくい気配も感じられなくなったところで、山本はくるりと振り向いて窓越しに車内を見た。
「でさ、どうして追いかけられてんだ?スクアーロ?」
「……言う義理はねぇぞぉ」
 内部から開けられた窓、そして中から聞こえてくる声。
 そこには、外から存在に気づかれないように、体を小さく丸くして屈み、気配を完全に絶っているヴァリアー次席の姿があった。
 ここに着いた途端に現れて「匿え刀小僧!」と叫ぶな否や車へと滑り込んだ彼。何だ?と思っているうちにドアが閉められ、その直後にベルフェゴールとフランがやってきた。先ほどは、実はそういう状況だった。
 ちょっと遅かったら見つかってただろうなと、車体にもたれかかりながら思う。
「そんなこと言うなら今からでも二人を呼んでも良いけど?」
「テメェ……あ、ちょっと待て!言う!言うから呼ぶんじゃねぇ!」
 両手をメガホンの形にした自分を見とがめたのか、慌てて小さく叫ぶスクアーロ。小声で怒鳴るなんて、結構器用なマネもできるのかと今更ながらに知った。
 とりあえず話してくれるらしい彼に笑顔を向けると、げんなりした表情を返された。
「可愛げ無ぇガキだぜぇ……」
「俺、もうガキじゃないって。二十代」
「ガキで十分だぁ。まだまだ甘いガキだろ」
 ケッと吐いて捨てて、憮然とした面持ちのまま彼は口を開いた。
「フラン見たな」
「ベルと一緒にいたやつだろ?カエルのかぶり物かぶった」
「そのかぶり物が問題なんだぁ…」
 額に手を当て、スクアーロはため息をつく。
「強制的にアレを付けられて、フランのヤツ何て言ったと思う?『ミーだけじゃ不公平なのでもう一人くらい生け贄が欲しいですー』、だぜぇ!?」
「……あー、そういう流れなのな」
 そこまで言われれば分かる。
 山本は苦笑を浮かべた。
「その生け贄に選ばれたんだな?」
「そーいうことだぜぇ……」
「それで追われてたのか……大変だな」
「まぁな。…んで、あの二人だけならまだ良かったんだけどなぁ」
 どこか遠い目をして呟く彼。
 まだ何かあるのかと思い、そして……山本は絶句した。
 そんなこちらの様子に気づいた素振りもなく、スクアーロは続ける。
「何でアイツらと一緒に追いかけてくれんだボスさんは……」
「嫌がらせに決まってんだろうが」
「あーやっぱりそーいう……って…え……?」
 恐る恐る見上げる彼の目の先。そこには、ヴァリアーの頂点に君臨する男の姿。
 本当にいつの間にか、ザンザスは山本の隣で車内のスクアーロを眺めていたのだ。気配も足音も何も有った物ではないから、山本も今の今まで気づかなかった。外から見えないように小さくなっているスクアーロに至っては、外の様子も見えないだろうからなおさら、突然に彼が現れたように思えただろう。
 こういう時、ザンザスってやっぱり暗殺部隊の人間なんだと思う。
 ……が、そんな話は今は関係なく。
「なっ……何でアンタがここにいんだぁ!?気配なんて感じてねぇぞ!?」
「バカか。気配なんざいくらでも消せる。それに、あれだけ喋っといて気付かれねぇとでも思ってたのかテメェは」
 ハッと鼻で笑って車のドアを開けるザンザス。あれ鍵閉まってるのにどうして?と思ったが、山本の手にあった鍵は抜き取られて彼の手の中にあった。……気付かなかった。
 顔を引きつらせているスクアーロの髪を掴み、笑う彼の顔はそれはもう凶悪だった。
「戻るぞ。ベルとフランにはもう用意させてある」
「んなっ……どうしてアンタがそんなにノリノリなんだぁ!?いつもみたいにくだらないって言ってほっとけよ!」
「っせぇな。今回は気が向いただけだ。安心しろ、ちゃんと写真を撮ってバラ撒いてやる」
「写真…ってもしかして寝顔写真のこと根に持ってんのかぁ!?結局アンタにあれは阻止されただろーが良いだろ許せぇ!」
「あぁ?何で許さねぇといけねぇんだ。あと煩ぇから少し黙れ」
 ガン、という鈍い音が響いた。
 そうして、銃で頭を思い切り殴られて気絶したスクアーロを担ぎ、ザンザスはちらりとこちらに視線を向けた。
「テメェは何の用があって来た」
「あ……あぁ、ツナから書類をアンタにって」
「なら、それ置いてとっとと帰れ」
「んじゃ、お言葉に甘えてそうさせてもらうぜ。あ、あと」
 書類を渡しながら山本は言った。
「起きたらスクアーロにさ、今度手合わせできないかって俺が言っていたって、伝えてくれるか?」
「自分で言え。俺はテメェの言伝なんざ伝えねぇ」
「本人に?言えたら言うって」
 その言葉には苦笑しか浮かばなかった。
 自分をつまらなさそうに見ているザンザスに、一言。
「だって、アンタがいっつも邪魔してるだろ」
 話してる最中に今回みたいに気絶させることもあったし、割り込んで連れて行くこともあったし。場合によっては会わせてさえもらえなかったりするし。
 つまりはそういうことだった。
 たまにくらい、貸し出してくれてもいいと思うのだが。
「……そういうワケだから、頼むぜ」
「そう言ってルッスーリアにも言伝を頼んでいくヤツの台詞とは思えねぇな」
「あ、やっぱりバレてんだな」
 隠す気も無いけれど。
 まぁ、それはともかくとして。今回はこのあたりで帰った方が良いだろう。
 じゃあな、と言えば二度と来るな、という返事。
 予想通り過ぎてちょっと笑った。





微妙にザン様vs山本みたいな。
 
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