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刹那とヨハンは、コッソリと夜の都へと繰り出していた。
宿に残っている他のメンバーには何も告げていない。外に出た理由が『アレルヤのことを誰もが忘れている原因を探る』では、言ったところで誰からも了承は得られないだろう。
ならば言うだけ無駄だ。
ヨハンは少し、躊躇していたようだった。大方、ミハエルとネーナとすれ違いになることを心配したのだろう。が、あの二人が自分たちのように『アレルヤ』を知ったままでいるかどうかも分からないのだから、やはりここは接触せずにいた方が良いだろう。もしも知っているままであれば要らぬ心配を掛けることになるし、知らなければ……混乱が激しくなるだけなのだから。
原因が分かればいいのにと、刹那は唇を噛んだ。
そうすれば、まだ対応のしようもあっただろうに。
「……ヨハン・トリニティ、ここからは別行動をする」
「というと?」
「手分けした方が早い」
二人でやるよりは、一人一人でそれぞれが何かに当たった方が良い。そう刹那は判断したのだった。それに何より、今は一人でいたい。
そんな刹那の思いを汲んだのか、ヨハンは小さく息を吐いて頷いた。
ホッとしたのも束の間、ただし、と彼は続ける。
「今から二時間後には、少なくとも宿に戻ること」
「それがリミットか?」
「誰にも知らせず出ているからな。少し遅いくらいであれば問題はないが、かなり遅いとなると問題が出るだろう。誤魔化しも効きにくくなるからな。……妙な疑われ方をするのは本意ではない」
どうだ?と言われて刹那が断る理由はない。彼の言うことは正しい。
だから黙って頷くと、ではここで別れようと、ヨハンは別の方へと歩いていった
残ったのは刹那だけ。
しばらく立ち止まったままであった刹那だったが、軽く頭を振って再び、今まで向かっていた進行方向に向かって歩き出した。
途中、脇道に逸れることもなく。
ただ、真っ直ぐ。
後から付いてくる誰かが、付いてき易いようにと。
多分、ヨハンも気付いていただろう。そして、その目的が刹那にあると判断して、全てを自分に委ねて行ったのだ。彼がいれば実際、相手は反応を起こすこともないだろう。今でさえ、どうするか分からない相手なのだから。
行動を起こす気配のない、尾行してくる何か。
さて、行動を起こさせるにはどうすればいいだろうか。
「……そこにいるのは誰だ」
「おや、気付かれてたんだね」
何気なしに、考え無しに、反応がないだろうと思って口にした言葉に返事があった。
拍子抜け、というのが今の刹那の最も正しい感情か。とりあえず言ってみただけなのに返事があるとは。行動を起こす気配がなかったのは、別に存在を隠したかったからではないらしい。単に行動を起こす理由がなかったのだと……そんな風だった。
どんな相手かと、刹那は振り返った。
……あったのは、小さな影。
エクシアたちと似たような、人形なのだと何となく察せられた。
そして、相手は口を開いた。
「やれやれ、何も隠そうとは思ってなかったんだけれど。でもこうも簡単に何かリアクション返されると困るなぁ……僕はどういう反応をすれば良いんだろうね?ねぇ、貴方は僕にそれを教えてくれたりしない?生憎、教えてくれそうな相手は先に帰っちゃったから。倒れた半身を抱えてね。うわ本当にあそこの繋がりって強。ちょっと羨ましいかも」