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「でさ、刹那、君一体どこへ行くつもり?人探しといっていたけれど、手がかり一つもないような様子で一体どうするつもりなの?もう朝になっちゃったのに、僕もある程度は助けても良いかとか、ちょっと思ったりしてるんだけれどどうかな?」
「…助けてくれるのはありがたいが、お前の能力を俺は知らない」

 新しい人形の同行人が出来てから数十分。
 この頃には、刹那もセラヴィーの扱い方が分かるようになっていた。会話文の一つ一つが長いことにはツッコミを入れず、自分に必要なところだけを聞き取ればいいのだ。そして、必要最低限のことを言えば終わり。あとは彼が勝手に喋る。

 ただしその『勝手に喋る』というのも食わせ物であり、喋るから途方っていると彼から大切な情報が引き出せないこともある。
 匙加減が必要なのだ。

「あ、そういえば言ってなかったっけ。ゴメンね?」
「…訊かなかった俺も悪い」
「ふふっ、刹那って本当にいい人。アリオスとかにも見習わせたいくらいの殊勝さだね」

 いや、これは殊勝さというよりはむしろ諦めなのだが。セラヴィーのマシンガントークは止まらないのだろうという。

「僕はね、記憶を司ってるんだ。司る、というのも語弊がありそうだけれど、そうだね、記憶分野が僕の専門分野だということで。大学とかで専攻したりするでしょう?あんな感じだと考えてくれたらいいかも。そこだけがずば抜けているんだ」
「具体的に何が出来る?」

 成る程、記憶が専門であることは分かった。
 が、何が出来るかを知らなければ意味はない。

 そう思いながら問いを続けると、セラヴィーは嬉しそうに表情を明るくした。ちゃんとこちらが問いかけているからだろうか。多分そうだろう。

「具体的に言うと?僕はね、人の記憶を覗いたりは出来ないんだけれど、封じたり上から書き換えたりすることが出来るんだ。記憶が読めない理由は分からないけれど、きっと僕らを作った父が、それを悪用されることを恐れたんだと思うよ?僕どうするかはさておいて、何気なく行ったことが大惨事につながりかねないから」
「…確かにな」

 記憶というのは大切な物だ。暖かく優しい物もあれば、酷く冷たい物も、隠しておきたい物もあるだろう。もしもそれらを全て垣間見る事が出来たとして、その力を思わず発動してしまった場合。知らなくても良いこと、日の目を見る必要がないことまでもが世に現れるかもしれないのだ。

 それはマズイだろうと、一国の皇女の親戚である刹那は考える。人は誰しも大小の違いはあろうと隠したい過去がある。その過去は、やはり隠しておくべきなのだ。出来るのならばずっと。隠せる物ならばずっと。日の目を見てしまったら……その時はその時で、その時の対応をするしかない。

 などといっても、やはり隠すべきではない隠された過去もあるのだが。
 全てがそれに当てはまるわけではないのだ。

「では、封じることはともかく、上書きというのは?」
「偽物の記憶を上からシールみたいにペタって張るんだ。ただしシールだから取り外し可能。僕にしかできないけれど、でも、記憶をいじることが出来るヒトだったら、強い力を持っているのならば出来るかも」
「他には」
「ん?」
「他には、何か能力はないのか?」

 どうにも刹那には、セラヴィーが他に何かを隠し持っているような気がするのだが。
 キョトンとした表情をしていたセラヴィーは、その後直ぐに苦笑のような笑みを浮かべた。どうして気付いたの?と、告げているような気がする笑みを。

「うん、無くはないけれど教えないよ」
「何故」
「だって切り札だもん」

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