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色々とやっていたらとにかく変な方向へ突っ走ってしまった話です。
本気で変な方向。何がどうしてこうしちゃったんだと和訳すると死神の鎌という名前の人に人じゃないけど謝った方がいいんだろうかと思ったり…うん、まぁ多分最終的には直るからごめんねってことで。
あ、あと無駄に長いです。
さらに言うと、以前に上げた話の流れをくんでいたり。
「待てーッ!」
「待てと言われて止まる馬鹿はいないっ!」
高校の廊下を、そんな言葉の応酬を続けながら駆け続ける二つの人影があった。
片方は教師で、実験用の白衣を着ていることから理科の教師だろうと言うことが推測された。微かに息を切らしていることから、運動系は特別出来るわけでもないであろうことも、同様に。
対してその男を追うのは生徒。ちゃんとした校則があれば間違いなく目を付けられるだろう黒の長すぎる髪、紅の大きな瞳が特徴的で、かわいらしい顔でセーラー服を着ている『少年』だった。
そう……セーラー服を着ているその生徒は、男子生徒だった。
ただし、彼に女装癖があるわけでは無く、これにはれっきとした理由があるのだ。
そこを知っている廊下に出ている人々、観衆と化している学校の関係者たちは何も言わずに苦笑を浮かべている。中には同情をしている者もいるようで……まぁ、それもこれも彼の顔立ちがセーラー服を着ても違和感が無いからだろう。もしも似合っていなかった場合、待っているのは袋だたきだとかそういう未来である。
…ともかく、生徒は教師を追っていた。
「じゃあ止まん無くても良いけど本気で行くからな!?」
接近戦型(?)の運動能力を舐めんなよ!
そう叫ぶ生徒の言葉を受けてだろうか、白衣の教師はピタリと立ち止まった。
両名しかいない廊下で、彼の突然の行動に警戒を覚えたのだろう、生徒は少しばかり離れた所で止まって身構えた。
しばしの間の膠着状態の後、
生徒は気付いた……教師の教師の方が微かに震えていることに。
何だ…?と生徒が不審に思っている中、その教師はついには大声で笑い出した。
「ハハハハハハハッ!本気で来れるものならば来てみるが良い!」
「なんっ…」
言いかけて、気付く。
振り返った教師の手には今まで無かった黒の、幾つかのボタンが付いた物体……いわゆるリモコンが握られていることに。
それから物凄く親切なことに、リモコンの裏に『ワナ』と赤い字で書かれていることも。
まさか……と思った瞬間に一つのボタンが押され、
天井が落ちてきた。
「どぇぇぇぇぇぇぇ!?」
生徒は慌てて後ろに下がり、それによって事無きを得たが……舞い上がったホコリの向こうに走り去っていく教師の後ろ姿を見た。
「逃がすかッ!」
体勢を整え、瓦礫の上を越えながらふと思う。
(天井の修理費って……誰持ち?)
駆けながら思い、思考を中断した。
確かにそれは問題だろうが、今はそれよりも教師である。
(ま、行政か何かがやってくれるだろ…多分)
だが、学校破壊はまだまだ始まったばかりだった。
「見つけたッ!」
「甘い!まだまだワナは有り余っているのだからな!」
ポチ
「ゆ…床が抜けた!?」
「どうだ!追っ手来れないだろう!」
「それよか下の階のヤツは大丈夫か!?」
「次こそっ!」
「お次はコレだ!」
ポチリ
「なっ…壁から槍!?」
「槍の購入費が高かったぞ!」
「なら買うな!ていうか薄い壁にどうやって長い槍を隠したワケ!?」
「フッ…そこは壁でなく柱だ!ちゃんと分厚い!」
「そこを改造!?なお悪いだろッ!」
「お前いい加減疲れてない?」
「それ程でもない。私はお前と違ってコレがあるからな!」
ポチョ
「床が登ってく!?いや、それよか何だその効果音!」
「気分だ!ハハハハッ!さらばだっ!」
「あー、もう頼むから逃げるなーッ!」
そして。
「諦めて大人しく捕まれーッ!」
階段を駆け上っていくセーラー服のデスサイズを見送りながら、ウイングははてと首をかしげた。……どうして彼はギャンを追いかけているのだろうか?
幾ら考えてみても理由は浮かばない。強いて可能性を挙げるとすれば昨日の放課後、どうしてだか理科室に呼び出されていた時に何かという所……というか、思いつく限りでは、それしか無いような気がする。
さて、今回は何をされたのかと、駆け登る幼なじみと踊り場に立っている理科教員を眺めながら思う。彼にとっては嬉しく無い何かとは思うが。
「観念しろッ!」
「断る!」
と、ギャンはそう返した後に手元にあるリモコンのボタンをカチ、と押した。
結果。
「んなッ…」
階段の段が動き、そこにはスロープという名の下り坂が誕生していた。
そして、突然のことにバランスを崩したデスサイズが落ちてくる。
危ない、と思ったときには体が動いており、丁度良いタイミングで受け止めたのは良かった。良かったのだが……その際、手が彼の胸の辺りに触れ、
「……デスサイズ」
「……何?」
「お前……女だったのか?」
真剣にそう言ったら、顎に彼からのアッパーがクリーンヒットした。
あまりの衝撃に後ろに倒れかけたウイングの両肩を素速く掴んだデスサイズは、そのまま前後にガクガクと揺さぶってきた。
「お前までそーいうこと言うな!オレだって…オレだってなぁ…好きでこんなになってんじゃ無いんだからな!ていうかウイング、お前オレの裸とか見たことあるだろ!?小さい頃は偶に一緒に風呂入ったし、そもそも夏にプールも行ったよな!?」
「いや……だがさっきの感触は…」
「オレがどーしてギャンを追ってるかを照らし合わせて考えろッ!」
言われたので少しの間、熟考。
……つまり。
「妙なクスリの被検体か。性別変換か何かの」
「……そこ、薬をクスリってカタカナ表記しない。危ないモンみたいだろー…?」
「ギャンのも危ないだろう」
「いやま、そうだけどさぁ…」
そう言って、はぁ、と溜息を吐いている彼には悪いのだが…。
「デスサイズ、ギャンが居ないが」
「え?……あ!アイツどこ行った!?」
慌てて辺りを見渡すデスサイズ。
……まぁ、ずっと話し込んでいたから、こういう結末も当然と言えば当然なのだが……ここでギャンを見失うのは痛手だろう。
階段が元に戻っているのを見て、彼の手を引いて一段上る。
「…で、解毒剤をアイツは持っているのか?」
「分かんない。けど、無かったら作らせるだけだからな…」
呟くデスサイズの目が半分据わっている。
……よっぽど、現状が気に入らないらしい。
それはそうだろうとは納得できるが、ならばどうして昨日のあの時に理科室に行ったのだろうという疑問はある。こういう結果くらい、簡単に予測できそうな物だが。
不思議だったので訊けば、あぁ、と普通に答えてくれた。
「オレだけじゃなかったから」
「成る……程?」
「オレ以外に二人な。片方は断りたくても断れないヤツで、片方は断るのが面倒だからって付いていったヤツで……そんなん放り出して逃げれると?で、付いていったら流れで」
「…そういうことか。あとついでに訊くが、それはキュリオスとゼータか?」
「ご名答。二人とも今日は学校休んでるだろ?あ、ちなみにオレとは違うの飲んでたから」
「そういう理由か…」
何が起こったのかが気になるが、それよりも今は。
「…早めに回収するべきだな、そのクスリ」
「だからカタカナ表記は……ま、良いけどさ…で?どうして回収する必要があるって?」
「渡してはならない相手が何人もいるだろう、この高校には」
例えば腹黒だとか。
例えば天然だとか。
例えば馬鹿だとか。
……誰に渡しても大惨事になりそうだった。
「なーる…」
「急ぐぞ」
「りょーかいっ」
そして、二人は階段を駆け上った。
数分後、屋上には追い詰められたギャンと、追い詰めたウイングとデスサイズの姿があった。
ギャンの方はかなり息切れしている様子で、疲れている隙に奪い取ったワナ発動のためのリモコンはウイングの手の中である。つまり……彼にとって現状は万事休すな物で、自分たちにとっては千載一遇のチャンスな物であるといえる。
「さ……解毒剤、あるなら出してもらおうか…?」
「…デスサイズ、何か怖いんだが…」
ゴゴゴ、としか形容できないオーラを纏っている相棒をチラリと見やり、ウイングはギャンの方へと視線を戻した。
それから最終勧告。
「どうする?大人しくしていれば腕一本で済むかもしれん」
「腕一本!?」
「違うって、腕は授業に支障が出るから両足」
「折る箇所が一本増えているだと!?」
「そして…デスサイズは本気らしいな。どうする?」
ここまで言えば、きっと今の彼の立ち位置の危険さを理解してくれるだろう。
ダラダラと(冷や)汗を流しているギャンを見ながら思い、すっと足を一歩出す。
ここは、デスサイズよりも自分がどうにかした方が被害が少ない。今の彼はかなり頭に血が上っているので……任せたら割と危険だ。
というわけで。
「さぁ、死にたいのか生きたいのかハッキリしろ」
「わ……分かった!解毒剤はあるから見逃してくれっ!」
「オレだけじゃなくて、他の二人のもな」
「あ、あぁ、当然だ、当然だとも!」
とても焦っているギャンから解毒剤を受け取って、それからウイングは彼の白衣の襟首を掴んだ。
「…!?」
目を白黒させているギャンを一瞥して、一言。
「まさか、これで終わると思っていないな…?」
とりあえず、自分監修の元でデスサイズの気が晴れるまでは相手をしてもらおう。
……でないと、晩飯が大変なことになりそうだ。
全てはこの話を書いてから始まったのです…。
そう、残りのクスリを飲んでしまった二人の話もあるのでした。
…被害者の皆さんごめんね本当。