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完全にストライキ関係ないですね…なんか本当は「ストライキにまつわる話」みたいな…でもストライキの話じゃないんですね…ごめんなさいね。



「……で、どうなったの?」
「どうもこうもねぇよ…その後はベルに振り回されて終わりだぁ…」
 ぐったりとした様子で、ヴァリアー本部に帰ってきたスクアーロを見やって、ルッスーリアはクスリと笑いながら紅茶を淹れる。マーモンも一緒だったとはいえ、やはりあの王子のお守りは大変だっただろう。
「アイツ、そりゃもう散々にこっちに注文付けやがって……少しは自分でやれってんだ。誰が部屋を片付けてやってると思ってんだ、あのクソ王子…っ」
「その様子だと変わらなかったみたいねぇ、やることなすこと全部」
「ってもなぁ、寝る時間だけはキッチリ早かったぜ」
「当初の目的は忘れなかったって事ね」
 偉いじゃない。そう続けながらスクアーロの前にカップを置く。
 目的の為に行動を起こしたのに、いつの間にか行動のために行動を起こしていた、なんていう話はよくよくあること。つまりは目的を見失って勝手に色々とする、ということなのだが。基本的に楽しければ全て良し、のベルフェゴールであるため、場合によってはそのような状況に陥る可能性も高いだろう。
 それが無かったとなると……よっぽどに身長を伸ばしたかったらしい。しかも、とてつもなく切実に。
「もう少し厨房に牛乳を多めに入れてもらおうかしら…」
「…何やってももう無駄じゃねえのか?」
「ダメよスクアーロ。折角ベルちゃんがやる気になってるのに」
「やる気になる方向が違うだろ」
「それでも、よ。やる気になったという事実が大切なの」
「どうせやる気になるなら自分の部屋を片付けて欲しいけどなぁ…」
 はぁ、と息を吐いて紅茶のカップを取る彼。確かに、ベルフェゴールによっていつの間にか片付け要員にされていたスクアーロから見れば、そういう感想も出てくることだろう。
 しかし、スクアーロが任務でいない時は割と綺麗に片付けようとしているのは、スクアーロを除いて殆どの幹部メンバーが知っていることだろう。部屋を汚して片付けさせているのは、いわゆる『甘え』というものだとこちらでは認識しているのだが。
 それをスクアーロに気付というのも無理な気がする。
 そういう方面にとてつもなく鈍感なのだ、彼は。
「あぁ、そうそう。お菓子もあるけれど、どうする?」
「今は気分じゃねぇし…これ飲んだらボスのとこに行くからなぁ」
「呼ばれたの?」
 訊くと、頭は横に振られた。
「いんや、自主的に。とりあえず訊きてぇことあっからそれ訊きになぁ……ったく、何であんなこと言って切りやがるんだ…」
 最終的には彼だけの呟きになった言葉を聞きながら、でも、とルッスーリアは見やる。
 談話室に置いてある大きめのソファーにスクアーロが座っている。そこは良い。
 が、その膝にマーモンが座って、左隣に座ったベルフェゴールがスクアーロに寄りかかり、さらには二人とも眠ってしまっていて。
 この状況で、彼はどうやってボスの所へ行くつもりだろう。
 起こしてから行く……というのは考えにくい。ここまで熟睡している相手を起こしていこうと考えることは無いだろう。呼ばれたのではなく自主的に、ならば確実に。
 ちなみにルッスーリアの頭の中に『暗殺部隊の幹部が人のいるところで寝て良いのか』という疑問はない。もう、こういう三人の風景はヴァリアー幹部内ではごくごく一般な物になっている。へたすると下っ端の中にも知っている人間はいるかもしれない。
 まぁ、寝ていようと関係はない。
 どうせ何か……例えば殺気、危険、あるいはそれを告げる第六感によって、彼らは直ぐに起きる。熟睡しているように見えて、実際そうなのだろうが、それでも彼らは直ぐに起きることが出来るだろう。
 それはヴァリアーにいる以上誰にでも当てはまること。
 従って、危険は敏感に察知して回避することも、応用ではないが…出来るはずなのだが。
「スクちゃん」
「ん゛?」
「後ろ」
 危ないわよ。そう言い終える前にスクアーロの後頭部とそこそこの厚さの辞書が出会った。響いた音は鈍く、結構痛そうだ。
 それでもルッスーリアの顔色が変わることはない。
 これも日常。普通の風景である。
「…ってぇな!テメェいきなり何しやがんだ!」
「煩ぇな。テメェが来ねぇから俺が直々に来てやったんだろうが。ありがたく思え」
「思えるかぁッ!」
 何年経っても本当に変わらない応酬の後に、ソファー傍まで来たザンザスは当たり前のようにスクアーロの右隣に座った。そうして出来上がった四人の図は、どこからどう見ても家族そのものである。
 腕を組み足を組んで、軽くスクアーロの髪を引いてザンザスは口を開いた。
「で?俺に訊きたいことがあんだろ?」
「んなっ…何で知ってんだぁ!?」
「忘れたのか?アレを言い残したのは俺だ」
「…ってことは確信犯かよ!」
「愚問だな。そのくらいも分からねぇのかよテメェは」
 そんなやり取りを聞きながら、ルッスーリアは新しく紅茶を淹れようと席を立った。







もう既に後日談…。
あと一話でストライキの話でないストライキの話、終わります。
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