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大佐と炭酸は反乱分子になりましたね第二十二話現在。
ということで今回は二人の話です。
20.スーパースター
「良いか?」
態度を改め、目の前の男に話しかける。本当に自分の言うことが、自分たちの置かれている現状が分かっているのか……些かどころでなく心配になってくる男、自称・不死身のパトリック・コーラサワーを。
今、自分たちはアロウズ…ひいては連邦に反抗する身となっていた。
以前からアロウズに対する憤りは覚えていた。たとえ自分が属している場所だろうと、いや、自分が属しているからこそ。その行いは、近くで見れば見るほど非道さを感じる物ばかりだったのだから。そして、指揮官としてその場所にいたこともあいまって、作戦について客観的に見る事もあった。全ての要因が、現状の『反乱分子』という立ち位置を創り出したのだ。
だが、だからといって。
ハァと息を吐いて、カティ・マネキンはコーラサワーを見た。
何で彼まで付いてきたのか。
自分が何をしようとしているか、まさか分かっていないのではないだろうか…。
「私はこれから連邦に刃向かうのだぞ?それでも貴官は私について来ると言うのか?」
「はいッ!」
凄く元気の良い返事。いやだから、本当に分かっているのかコイツは。この場面はそんな笑顔で返答するような場面ではないはずだが。
ちょっと頭が痛くなってきた。
「……ちょっと良いか」
「?何でしょう」
「一発殴らせてくれ」
そう言い終えるやいなや、立ち上がった自分の右拳がコーラサワーの左頬にめり込んだ。
吹っ飛ぶ体を机に手をついたまま眺めて、座っていた椅子に腰を下ろす。思い切り殴ったので右手が痛いが、吹っ飛んだあちらはもっと痛いだろう。
「痛いか?」
「……ひゃい…」
涙目で見上げられて、少し罪悪感を覚える。もう少し手加減した方が良かったかもしれない。しかし…手加減というのはあまりしないから、どうやる物か良く分からないのだが。
ともかくだ。これで彼の意識はハッキリしたはずである。先ほどまでの言葉が寝言であろうとなかろうと、これからの言葉は確実に彼の本当に思っていることだろう。それから…これでも元気よく返事をしたらもうダメだと思う、色々と。
「もう一回訊く。連邦には向かう私に付いてくる気か?」
「はいッ!!」
帰ってきたのは元気な返事だった。しかもさっきよりも元気で、『!』のマークが一つ増えているような感じを受ける。その上直立の姿勢で敬礼までされている。これはもう……疑うのは無茶を通り越して無謀である。
本当は疑ったまま、否定できるままが良かったのだが。
死ぬ気はないが裏切りなど、たとえどんな組織からであれ行うのは不快感がつきまとうだろう。少なくとも自分はそうだ。あの場所には知っている誰かがいるかもしれず、これから自分が殺すように命令するのはその相手かもしれない。
そういう事態なのだと、彼は分かっているのか。
「大佐ぁー?頭痛いんですか?」
「あぁ。どこかの誰かのせいで盛大にな……」
「誰です!?俺が倒してきます!」
「いや、そこまでしなくても良い」
だって目の前の彼が原因だというのに。自分を自分でどうやって倒す気だろうか。調子に乗って一人芝居でも始めかねないから何とも言えなかった。
「……後悔は、無いのか?」
「後悔?」
キョトンと、コーラサワーは目を丸くした。
「何でそんなものするんですか?」
「裏切りだぞ?私はこの行動を間違った物だとは思っていないが、それでも裏切りというのは苦々しい物だ。昨日の味方が今日の敵、という状況なのだから」
「言われてみればそうですね…」
気付いてなかったのか。
呆れかえっていると、でも、と彼は続けた。
「俺、大佐と一緒ならどこでも良いですから。それに」
「それに?」
「俺はスターですよ?そう簡単にどうこうなりませんって!」
「……そうか?」
その点は非常に訝しいのだが。まぁ、あまり触れぬが花という物だろう。
グッと握り拳を天井に突き上げているコーラサワーを見て、思った。
コーラとか死なないか少し心配…です。