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「…知るかよ、出来損ない」
「んー?ハプティズムその2さん、どうかしたですか?」
「いんや。別に何でもねぇよ」
きょと、とこちらを見ていたミレイナに何でもないと答えて見せ、ハレルヤは先ほどまでの思考を中断した。アレのことは今は置いておこう。自分の中ではこちら……アレルヤ関係の方が優先順位は高い。
「んで、アレルヤ、お前の体は見つからねぇのか?」
「…うん。完全に迷子だね、これ」
「体だけ迷子…うぅむ、ちょっと凄いです…」
「凄くないよ。厄介なだけだから」
苦笑したアレルヤは、グッとのびをした。今の今までずっと片割れは自身の体のありかを探っていたのだ。少しくらい精神的に疲れていても不思議ではない。自分の精神と体とを繋げている物を辿っていくのは、離れていると非常に難しいのだ。
死にでもしない限り、ヒトとヒトの心が離れることはない。けれども希なケースとして今のアレルヤのような状況がある。
そうなった場合は抜け出た精神と体の間には見えない『繋がり』があり、それを介して繋がっている。街一つ分くらいの中なら繋がりを辿るまでもなく、基本的には体の居場所が分かるのだが、生憎と都は街など比べものにならないほどの大きさである。
「えっとね…どこかホラ、裂け目の中?あんな感じの場所に入っちゃったっぽい」
「ちゃったっぽい…じゃねぇよバカか!?お前、それどうやって見つけろってーんだ!」
「んっとその……ま、まぁなせばなるとか」
「ならねぇよ!」
笑ってごまかそうとしている片割れに叫んでから、ハレルヤは額に手を当てた。いや、何か最近アレルヤが凄くアバウトになっている気がする。あらゆる方面で開き直ったというか何というか。別に良いけど。
「『庵』の中とかじゃねぇのかよ…」
「あ、その話なんだけどさ」
ぽん、と手を打ってアレルヤ。
何だとハレルヤが視線をやると、片割れは口を開いた。
「都ってね、庵が無いんだよね」
「…………は?」
「だから、無いんだよ、庵」
凄いよね、と何度もしきりに頷いてみせるアレルヤを眺め、ハレルヤは呆然と片割れの言葉を租借した。…庵が、都にはない?
そんなの有り得ないだろと、今はとても膨大な知識を思い返しているハレルヤは思う。有り得ない。こんなに広範囲の地域で、庵が一つもないなどというのは本当に。それでは庵の意味がないではないか。
殆どの庵とは、カモフラージュであるのに。
「…あの、ハプティーズさんがた…」
「……ハプティーズ?」
「ハプティズムさんたちなのでハプティーズ、ですぅ」
「あぁ、そういうこと?…それでミレイナ、どうかした?」
「庵って何です?」
その言葉に、ハレルヤとアレルヤは固まった。
そういえば……ミレイナには事情説明も何もしてない。
だから。
「……そのね、話は長くなるけどね」
「はいです。長話を聞くのは慣れてるです」
とりあえず事情説明からスタートである。