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「ヴァーチェ、そろそろ機嫌直せってな?ケルディムとエクシアが探しに行ったんだし、もう少ししたらセラヴィーも帰ってくるって、な?」
「……」
「おーい、何か喋らないかー?」

 黙りを決め込むヴァーチェに、ダメだこれはとデュナメスはため息を吐いた。完全に機嫌は九十度。これを直すにはセラヴィーの犠牲……もとい尊い努力が必要となるだろう。毎回そうなのだから、今回だって同様に決まっている。

 キュリオスとアリオスのことは……とりあえず置いておこうかと思う。あの二人が離れるとは思いにくいし、そもそもそんな状況をアリオスが許すとは考えにくい。緊急事態というのも考えられるが、それは無いだろうと何となく分かっていた。人形同士の繋がりでもあるのかもしれない。

 ……だから今はヴァーチェのことが最優先なのである。
 とりあえず、どうやったら機嫌が少しでも浮上するだろう。セラヴィーを連れて二人が帰ってくるまでに、少しくらいは上げておきたいと思う。
 が。

「…デュナメス」
「ん?何だ、ダブルオー?何か良い案でも…」
「無駄な努力」
「……そうか…やっぱお前もそう思うのか…」

 無表情ですっぱりと言い切られ、何だかデュナメスは泣きたい気分になった。自分でも薄々分かっていたのである。それをここまでハッキリと言われると、結構多めのやるせなさが襲ってくる。

「でもなー……誰かがやらないといけないからな」
「…苦労性」
「よく言われる」
「お疲れ様」
「ありがとな、ダブルオー」

 慰めてくれたらしいダブルオーに癒されつつ、それによって多少は回復したダメージを抱え、デュナメスはヴァーチェに向き合った。戦いはまだまだこれから、である。

 そして目下の戦闘もどき相手であるヴァーチェは、苛立ちを納めて呆れたようにこちらを見ていた。だが、だからといって機嫌が僅かでも直ったわけでない点に注意しなければ。今は所謂台風の目のあたりに一時的に入っただけ、この平穏さは仮初めの物である。間違って喜んではいけない。

「……その程度で復活できるのか」
「こう言うとき程、他人の気遣いってのはありがたいからな」
「そうか。…あのバカは気遣いすら出来ないからな…」

 声が一気に低くなった。
 あぁ、そういう話題からもそっちに行けるのかと、デュナメスは半ば無関係の他人のような気持ちで思った。気遣いの話からそちらに行けるのなら、多分どんな話題によってもセラヴィーに関する愚痴は出てくるだろう。

 つまり、話題の転換によって気を引くのは確実に無理なのだ。
 ……いや、経験から知ってはいたけど。

「…デュナメス」
「……んー?今度は何だ?」
「…ドンマイ」

 無表情が崩れて若干同情の色を吹くんだ表情で、ダブルオーはグッと右の親指を立てた。
 彼女からの励ましに、デュナメスは笑って返す。

 自分から見えないので断定は出来ないが、恐らく自分の今の笑みは疲れ切った物だったに違いない。
 

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