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祝えてるのかが分からない…けど、祝う気持ちは盛りだくさんですよ。
スクアーロ、誕生日おめでとう!

多分、三、四年後。



 ピッと剣に付いた血糊を払い、スクアーロは注意深く辺りを見渡した。
 もう、この周辺に殲滅対象はいないようだ。漂うのは死の気配と、あと一つ。ということは、あちらも終わったのだろう。
 全く、と思いながら彼の元へと足を勧める。待っていてもあちらからこちらへ来てくれるわけもないし、ならば自分から向かうしかないだろう。もし放っておいたら先に自分を置いて帰られかねない。徒歩で本部まで帰るのはキツイので遠慮させて欲しかった。いくら明日が休みで時間が有り余っているとはいえ。
 石造りの建物が作る角を曲がって、こちらに背を向けている男の姿を認める。
「ボス、終わったぜぇ」
「見りゃ分かる。遅ぇんだよ」
「アンタと比べりゃ誰だって遅いだろ」
 そのまま足音をさせないままザンザスの隣に立って、目の前の光景を見た。
 自分が目標を叩くときは足下に赤い水溜まりが出来ることが多いのだが、今見える石畳の上には赤い色などどこにもない。強いて何かを見つけるとしたら、それは若干どころでなく焦げている壁や地面だろうか。
 一発の銃弾で全てを焼き払える彼と、任務を片付けるスピードを競う気はない。こちらは一人一人切り捨てなければならないし、スピードも大切だが任務遂行の確実さの方が大切だから…そもそも競うことに意味はない。
 はぁ、と息を吐いて後頭部を掻く。
「にしてもアンタ、前々から気になってたんだけどよぉ……」
 それからチラリと夜空を見上げる。
 月の位置から、もう夜も更けているのだと推測できた。
「…何で毎年、この日に任務入れるんだぁ?俺とアンタの二人の任務」
「お前向けの任務だった、それだけだ」
「いや、それ俺の理由だろ。アンタが来る理由が見あたらねぇっていうか」
「気が向いた」
「本当かそれ……ってオイ!一人で帰ろうとすんじゃねぇよッ!」
 首をかしげている間に翻った肩から掛けられている上着に、スクアーロは慌てて後を追う。ここで置いて行かれでもしたらシャレにならない。
 悠然と歩く背に追いついて気付く。このまま進むと自分の創り出した惨状が広がる場所に出る。そして、それに気付かないザンザスでもないだろう。
「何だぁ?部下の仕事ぶりでも見る気かぁ?」
「さあな」
「……けどよぉ、そっちに行ったら迎えとの合流地点に行くのに遠回り…」
 早く帰りたいので言い募ろうとしたら、頭を思い切り銃で殴られた。
 銃、というのはザンザス愛用の銃である。銃と言うからには結構硬い。
 あまりの痛さに思わず立ち止まり、しゃがみ込んで頭を抱えていると、上から無慈悲な言葉が降ってきた。
「ゴチャゴチャ煩ぇんだよ。俺が行くと行ったら行く、それだけだ」
「どこのガキ大将の理屈だぁ…」
「煩ぇと言ったのが聞こえなかったのか?」
 ボソリと呟いた言葉もしっかりとザンザスの耳には届いていたらしい。今度は顎の辺りを蹴り飛ばされた。突然のことについつい受け身を取るのも忘れ、勢いのままに仰向けにあおれた結果、後頭部が石畳に思い切り打ち付けられる。
 …かなり痛い。涙目にはならないが、軽く目眩が襲ってきた。
 何だろうこれは……任務より身内による攻撃で重傷になってる気が。いつもの事とはいえ、少し思うところはある。
「ボスぅ……少しは手加減してくれよ…」
「はっ、テメェが手加減が必要なヤツかよ」
「アンタの手加減は必要だと思うぜぇ……今だって歩けそうにねぇしよ」
 起き上がってみたら、まだ頭がフラフラとしていて立ち上がれても歩けそうにない。あれだけ頭を打ち付ければこうもなるだろう。ていうか良く生きてるとか、これはそういうレベルではないだろうか。色々と攻撃が入った場所がキツイ。顎って急所だった気が。
 しかし自分のこの言葉はザンザスからすると意外な物だったらしい。
「本気でか?」
「本気でだっつーの…ったく、少しは労ってみろってんだ…」
「俺がか?」
「たまには良いんじゃねぇ?」
 毎日そうだったら流石に怖いが。
 どうだ?と痛むあたまを抱えたまま視線を上げると、なにやら考え込んでいるザンザスの姿があった。
 まさか本気で……と思った瞬間、ニヤリと浮かべられた笑み。
 ちょっと嫌な予感。
「労って欲しいんだな?」
「え゛……あ、いや、無理にったぁ言わな…」
「良いぜ。とりあえず運べば良いな?」
 その言葉が終わるか終わらないかの内に感じる浮遊感に、その後に感じられた暖かなぬくもり、いつの間にか近くまで来ていた嫌な予感を感じさせた笑み。
 状況を呑み込むまでざっと十秒間。その間のザンザスは歩き出していた。
「コレで良いんだろう?」
 その言葉にようやく我に返ったスクアーロは叫んだ。
「良いわけあるかぁ!降ろせ!これなら置いてかれるほうがマシだぁッ!」
「あんま暴れんじゃねぇ。落ちるぞ」
「落ちた方がマシだって言ってんだぁ!」
「遠慮するな。テメェらしくねぇ」
「遠慮じゃねぇ!てーか今の俺の言葉のどこに遠慮があったんだぁッ!?」
 ひとしきり叫んで、ゼーハーと息を切らせていると、上からクツクツと楽しげな笑い声が降ってきた。自分の反応を楽しんでいるらしく、その瞬間に抵抗するきも失せた。抵抗すればするほど離してもらえないのだろう。
 かなり気恥ずかしいが、俗には何と呼ばれるかなど考えたくもない、両膝の裏と背中に腕を回されて抱き上げられている状況は甘受するしかなさそうだった。
「何だ?もう諦めたのか?」
「お゛ー。何やっても無駄だろうしなぁ…」
「テメェにしては賢明な判断だな」
「うるせーよ」
 代わりに出来るだけの仏頂面を作ってやったところで、ポケットの中に入れていた携帯が震えた。誰かからの通信が来たらしい。
 とりあえずザンザスに断ってから通信に出る。
「誰…」
『ちょっとスクちゃん!遅いじゃないの!日付変わっちゃったわよ!』
「…ルッスかぁ」
『んもう…折角スクちゃんの誕生日だったのに、昨日中にパーティ出来なかったわねぇ』
「毎年の事じゃねぇか。そんな気にすることでもねぇだろ」
『それが問題なのよ』
 ビシッと、実際に目の前にいたら人差し指と突きつけられそうな感じで、電話向こうのルッスーリアは言った。
『毎年毎年、スクちゃんの誕生日にはボスと二人だけの、しかも一日中かかる任務が入るの。これじゃ困るわ。ボスの職権乱用も大概ね…』
「…?」
『あぁ、スクちゃんは分からなくても良いわ。ボスに「独り占めしないで頂戴」って伝えてくれるかしら?私はそろそろお暇するわね』
 じゃあ明日、と言われて切られた携帯を見て、ザンザスを見上げる。
「ルッスが独り占めはすんなって言ってた…けど、アンタ、何か独り占めしてんのかぁ?」
「自分で考えてみろ」





ボスの遠回りはまぁ、日付を超えさせるためと言うことで。
色々痛い思いをさせましたが…祝う気持ちはありますよ?ありますからね!
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