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前回に引き続いて、今回もギャンの怪しげなクスリの被害者の話です。
今回のはクスリを飲んだヒトよりも、飲んだヒトを見たヒトの方がちょっと被害者っぽい。
今日は晴れていて、青い空に雲がいくつか。
時計の針は七時を指しており、いつもと同じ。
そう、その日は全く持って『普通』だった。
……だが、それも兄を起こしに行くまでの話だったのだ。
「おーい、ゼータ、いい加減起きやがれー」
ガチャリとドアノブを捻ってドアを開けると、そこには頭のてっぺんまで布団を被って眠りこけている兄……ゼータの姿があった。勝手に入っても何の反応がないところ、本気で熟睡しているらしい。…まぁ、起きていてもあまり気にはしていないようだが。反応があったとしても、せいぜい一瞥程度が関の山。
それはともかくと、起こさなければ遅刻してしまいそうなので起こしに掛かる。
「あんま待たせると、メタスちゃんやらマークⅡやらに迷惑かかんじゃねぇか」
「……あと五分」
「そう言って五分ずつ先延ばしにするヤツが信頼されてっと思うなよ」
寝ぼけ半分に呟く兄の布団を掴み、プラスは勢いよくそれを引っぺがした。
引っぺがして……固まった。
何故なら。
「ゼータ……お前、頭…」
「ん……?」
まだ寝ぼけている様子のゼータだったが、起き上がって寝起きの際特有の、ゆっくりで緩慢な動きで頭の上に手を伸ばした。
それからあぁ、と頷いて一言。
「……いつもと違うな。フワフワしている…か」
「そんな冷静でいんじゃねーよッ!もっと狼狽えろ!」
「だが……あ、そういえば学校があったな……行かないと…」
「ゼータ休め!お前頼むから今日は仮病使ってでも休んでくれ!」
ここまで自分が必死になるのは珍しいと思いながら、瓜二つの兄の肩をガシリと掴む。
「じゃねーと色々危ないからッ」
「……何が危ないんだ?」
心底不思議そうな顔をしているゼータの頭の上。
……そこには、人間には本来あるはずのない物があった。
白い髪と同化するようにそこにあるのは……猫耳、だったのだから。
代わりと言っては何だが、人間の耳は消えている。猫耳がある今、それがあれば耳が二組もあることになるので要らないのは事実だろうが。
それはともかく……猫耳というのは、危険な物なのである。
なまじ顔が整っていて、その上何だかトロンとしている目のせいで、偶に性別真逆に思われることがあるゼータである。そこに猫耳がくっついてしまえば……恐ろしいことが起こ気がした。
つまり、ゼータに猫耳は破壊力抜群だったワケである。
瓜二つ(ただし目つきは自分の方が鋭い)プラスだったら…多分、こうはならない。
はぁ、と溜息を吐きながら、ベッドで正座でちょこんと座っている兄の傍に腰掛ける。
「何かな……今のお前を連れ出したら、絶対に間違った道に進むヤツが出る」
「……間違った道?何だソレは…?」
「知らなくて良いッ!良いからなッ!」
…ていうかむしろ、どうして自分は知ってるんだろうとか思ったりなんだり。
少しの間黄昏れて、それから慌てて電話機を手に取ってボタンを押す。押した番号はメタスの携帯のもの。そろそろ何らかの連絡をしなければ不審がられそうだ。
何回かのコールの後、相手が電話口に出た。
『はい、メタスです』
「よ、メタスちゃん。オレ、プラスだけど」
『あれ!?どうして同じマンションの部屋に住んでるのに電話なの?今、ゼータの部屋でしょ?私、話あるなら行くけど……』
不審がられないための連絡で、逆に不審がられてしまった。
このままでは本気でこっちに来てしまいそうだと察知したプラスは、慌てて制止の声を上げた。ここで彼女が来たら、収拾が付かなくなる気がする。
「ダメダメダメダメ!メタスちゃんだけは絶対に入るの禁止だ!」
「でも……」
と、その声は。
受話器とドアの方からと、両方から聞こえた。
恐る恐る顔を上げれば、そこには先ほどまで電話を通じて話していた人物が。
「もう、来ちゃったんだけど……」
「遅かったか……」
失敗した、と額に手を当て呻くプラスをよそに、ゼータは何もない常時のように手を挙げて、言った。
「…おはよう」
「おはよ、ぜー……た……その、耳……?」
「あぁ……コレか?今日起きたら生えていた……何だろう?」
……何か、本当に色々ダメだコレは。
まずゼータは自分の今の破壊力に気付いていない。
それから……メタスの暴走しやすさも。
彼女はしばらくその場で固まっていたが、しばらくするとフルフルと体を振るわせ始め……最終的には、ベッド上のゼータの所まで走り寄って抱きついた。
「何でも良い!凄く可愛いーっ!」
「……そうなのか…?」
「うんうんうん、どうしようゼータ、写真撮っても良い?携帯の待ち受けにして良い?パソコンのデスクトップに設定しても良い!?」
「ボクは別に……」
そこ、軽はずみに『別に…』って言うな。
心の底からそう思ったが、しかしメタスの気迫に押されてしまって口にすることが出来なかった。彼女の空気に押されて負けて恐怖を覚えたとも言う。
もうやる気も何も抱かないまま、プラスは再び電話機のボタンを押した。
しばらくしてから応答した高校の職員に、疲れた声音で。
「悪ぃけど……ゼータとオレと…メタス、今日休む…」
BGMはメタスの、ゼータの着せ替え人形化計画の話だった。
……テンションが高すぎる。
軽く打ちひしがれているプラスの頭の中には、原因究明という四文字熟語の姿はどこにもなかった。……そんなことを考えている場合ではなかった、ともいう。
だから、真相を知ったのはギャンを引き摺って、解毒剤を持ってきてくれたウイングとデスサイズが来た、夕方のときの事だった。
…プラス、お疲れ様。
設定としては、ゼータとプラスは似たような容姿、ただしプラスは目つきが鋭く、ゼータは眠そうな感じ。その目つきの違いの関係から格好いいと可愛いに分かれてる感じです。目つきって大切ですよね。
そういえば最近、初期にあったメタスの暴走とか収まってるよな…。