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拍手再録です。
05.ひこうき雲
父さん、母さん、兄さん、エイミー。大変です
ライルは遭難しました。
「いや……本当にどうすんだコレ」
呟いて、ライルは頭を抱えて砂浜にしゃがみ込んだ。
これって一体何だろう。何の罰ゲームだろうか。非常食も火の元も何もなく、無人島に取り残されるとか。一人じゃないだけマシかも知れないが、生憎、こんなメンバーなら一人の方がまだ良かったと思う。片方は良いけど、もう片方がかなりの問題だった。
「ライル・ディランディ、そんなところで止まっていないでこちらを手伝え」
「あちらに食べられそうな果物がありましたよ」
「……アンタら結構たくましいな…」
ライルの現実逃避の理由の内の片方……無人島に取り残されていると言うこと…は、彼らにも関係あるというのに。よくもこれだけ現実的に行動できる物だ。見事である。
「てーか、食べれる物とか分かるのか?」
「僕の知識をなめないでもらおう、ライル。このくらいは容易に分かる」
「でもさっき、間違えて毒キノコを取りかけてませんでした?」
「あぁ、あれはわざとだ。食べさせたいヤツがいるからな」
「……」
ティエリアとアニューの会話に顔を引きつらせつつ、本当に、アニューがいてくれて助かったと内心胸をなで下ろす。もしもいなかったら、場合によってはライルは抹殺されていたかも知れなかった。だって、毒キノコとか。しかもわざととか…。
速く誰か助けに来てくれと空を見上げれば細長い雲。
「あー……飛行機でも飛んでんのかな…手ぇ振ったら気付いてくれないかねぇ…」
「無理だろう。何を言っているんだお前は」
「……だよなぁ…」
辛らつな言葉に心が痛いと泣きそうになっていると、ポン、と肩に置かれる手。
「えっと……大丈夫ですよ。ちゃんと救助は来るはずです」
「……あぁ、そうだな」
何とか励まそうとしてくれているアニューの態度に、今度は別の意味で涙ぐんだ。
(2009/03/14)