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セカンドシーズン第二十三話の本編沿い…ですよ。
リジェネ…。
20.はだかの王様
君はバカだったね。
倒れていくリジェネを見て、リボンズは思った。
バカだった。自分に刃向かいなんてせずに、野心は野心のまま隠しておけば良かったのに、彼は、行動を起こすほどに野心を育て上げてしまった。その時点で既に、彼の抹殺が確定してしまったとも知らず、行動を続けて。
どうして自分に勝てると思ったのだろう。
何度も教え諭してあげたというのに。
自分によって彼が、彼らが創り出されたのだと言うこと。自分はいわば創造主と呼ばれる物であること。
自分こそが上位種……彼らの頂点に立つ存在であると。
そんな存在に挑んだところで、勝敗など目に見えているだろうに、彼はそれをも考えずに行動を起こした。
バカなこと。
愚かなことだ。
勝てる思ったから行動したのだろうけど、それこそ間違いであったというのに。それが、何よりも有り得ないことだったのに。
何度でも思う。どうして勝てると思ったのだろうか。
倒れ伏した『自分』に視線をやり、考える。
自分に、こんなことが出来ると知っていたら、リジェネは反旗を翻すことを止めただろうか。諦めて大人しく、自分の支配下にあり続けただろうか。
半々だと、リボンズは結論を下した。行動をする人間は何があっても行動する。それと同じ事だ。イノベイターといえど、思考回路が人間と極端に違うこともない。リジェネは行動したのだから、何があってもきっと行動をしただろう。
その点は、非常に残念だが変えることは出来ないだろう。
残念……そう、少し残念だ。彼の事はやはり、嫌いではなかったと思うから。嫌いだったら今頃、いや、それ以前に彼は死んでいたことだろう。
どのみち変わらないけれど。
リジェネは、死んだのだから。
いっそ、先に殺してあげるべきだったのかもしれない。そうすれば彼だって、反乱がうまくいく、だなんて幻想を見ることも無かっただろうし。出来もしない夢を見るよりは、それが出来ないのだと先に知る方が幸せなのではないだろうか。
あぁ、けれどそんな感傷に浸っている場合でもない。感傷と言えるほど、何を思っているわけでもないけれど。
とりあえず死んでいる『自分』とリジェネを片付けなければ。血も拭き取って、何もなかったようにしなければならないだろう。
しかしアリーは行ってしまったし、ヒリングたちは待機中。
つまり、自分でやるしかなかった。
ため息を吐いて、リボンズは階段を降りた。リジェネはともかくとして、自分の死体を運ぶのは何とも言い難いのだが。貴重な経験だと割り切ることが出来ればいいのだが、それも中々に難しそうである。何せ『自分』だ。
それでもどうにか『自分』の死体を運んで、リボンズはリジェネの方に取りかかった。
改めて見て、本当に彼は『何もない』と思う。
身を守る物は手に持つ銃だけ。それ以外に何もない、そもそも初めから何も持っていなかった彼。持っているように思えて、その実何も持てなかった彼。
憐れだと、一瞬だけ感じた。
そんな身で、一体何が出来るというのだろうか。イノベイターとしての特権は全て自分が管理できる。そのような物、自分からすれば有って無いような物なのだ。そして、それはリジェネだって知っていたはずである。知っていたはずだが、あるいは実感はなかったのかもしれない。それも、彼の愚かさの一つか。
「…リジェネ・レジェッタ」
運び終えた彼の体を見下ろして、リボンズは呟いた。
これでお別れだと言わんばかりに。
「君のその行動力には、少しくらいは敬意を払ってあげても良いよ」
だからそれくらいは誇ってくれても構わない。
そう続けて、リボンズは軽く笑い、身を翻した。
これがせめてもの、手向けという物だろう。
何も持てないままに自分に挑んできた彼に
何も持たないまま神に向かってきた王に
ほんの少しの敬意を。
リボンズも、リジェネをあまり嫌いでなかったらいいなとか思ったり。
もしもリジェネが「王様」の位置にいたら、リボンズはその上の「神」の領域にいる、のだろうかとか。少なくともリボンズの中ではそんな感じなのではないでしょうか。