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どこもかしこも大変なことになっていますよね、二十三話。
けどやっぱり、MS視点ならここの話かなぁと。
一番来て欲しくなかった相手が、目の前にいた。
ケルディムと、間違いなくいるであろうハロを思いながら、アルケーは息を吐く。覚悟はしていたけれど、出来れば戦場で、この二人と会いたくはなかった。
四年前に彼らのマイスターを自分が……正確には今のパイロットに操縦された『ツヴァイ』が、殺したのだ。それでも自分には罪がないと、仕方がなかったのだと言ってくれた二人だったからこそ、今までも普通に接することが出来た。
けれども、そうであったところでこれからの事態が変わるわけでもない。
戦場で会ってしまった以上は殺し合い、破壊し合うのだろう。彼らが勝てば痛くてもまだ自分にとっても良い結果になるだろうが……仮に自分の方が勝ってしまった場合、自分どころかケルディムも、ハロも、決して良い思いにはなれない。二人は再びマイスターを失い、自分は再び彼らからマイスターを奪うのだから。
なのに、この状況は何だろう。
可能性としては考えていた。ここに彼らが来ることを。
だが、考えていたのと実際に来るのとは違う。
「……ケルディム」
『アルケー…か』
聞こえてくる相手の声にも、複雑そうな気配が漂っている。当然と言えば当然なのかもしれない。操縦者は彼らの仇だが、操縦されているのはそこそこの付き合いがある自分なのだ。仇と敵対できることを喜ぶべきか、自分と敵対することを嘆くべきか、そう簡単に判断など付きはしないだろう。相手のことをよく考えることが出来る彼らならば尚更に。
いっそそこに、歓喜だけ置いてくれていれば良かったのにと思う。そうすれば、自分だってここまで考えることはなかったのに。考えることが苦手なのに、よくもここまで色々と考えさせてくれた……そう考えると、少しだけ彼らが恨めしくなる。
それは、相手も一緒なのだけど。
『お前と戦うのか…何か微妙だな…』
『同感だね』
通信に、ハロの声も加わった。
『アルケー、君はそこそこ悪くない性格してるから、戦うのはちょっと忍びないかな』
「……それって褒めてる?貶してる?」
『褒めてるんだよ。だから困ってるんじゃないか』
ため息の気配が感じられた。
そう。むこうだって同じなのだ。彼らも自分を知っているから、そこに躊躇いが生じる。悪くない関係を気付いている知り合いと戦うのは本当に、キツイのだ。
セラヴィーでもきてくれたら。そうすれば絶対に躊躇いなく戦ってくれたと思う。彼のマイスターだけの話でなく、彼はこういうところで手を抜いたりしない。
……そんなこと、思ったところで意味はないが。
目の前にケルディムがいる、それが現実なのだから。
「悪いな」
『謝るなよ。俺だって謝りたい気分だ』
全くいつもと変わらない様子のケルディムの言葉が続く。
『こっちこそ悪い。お前が相手だろうと俺たちは手を抜ける気がしない』
「……だろーね」
彼の答えに、アルケーは薄く笑った。
その答えが欲しかった。ケルディムと戦うにおいて、その言葉こそが最も重要な物だったのだから。それさえあれば……大丈夫だ。
この言葉さえあれば、自分は思うとおりに行動できる。
相手が容赦しないのなら、こちらも手を抜く必要がない。
全力で、何も考えずに戦うことが出来る。
薄い笑いを好戦的な笑みに変えて、アルケーは叫んだ。
「行けよファングッ!」
『ハロ!』
『分かってるってば!』
放たれたファングとケルディムのビームビットが衝突して、互いが破壊される音がした。爆風も、感じた。
そんな中でもアルケーは笑いながら口を開く。
「ケルディム、互いに全力だぜ!」
『あぁ。恨むなよ?』
「絶対に恨まないから安心しろって!」
笑って。
笑ってアルケーは言った。
「恨まないから全力で俺を倒せ!」
自分は道具。所有者を己で選ぶことは許されない存在にして、使用者をも己で選ぶことが許されない存在。そのくらいは自覚している。
だから大人しく、今のパイロットに使われる。それが、道具だから。
しかし、大人しく使われているからといって、今のパイロットが好きかと言われると肯定を返すことは難しいだろう。
皆、忘れがちかもしれないが。
自分にとってもアリーは、ミハエルの仇なのだ。
何気にアルケーは結構不幸な人(?)生を送っていると思います。
だって、本来の操縦者殺されて、殺した張本人が今は操縦してるって…。
複雑だろうなぁ…。