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 アニューの日課に『倉庫の中を確認する』と言う物があるのは、仲間内にも全く知られていない事実だろう。自分から言ったこともないし、彼らから言われたこともない。

 どうして倉庫の中を毎日確認するかというと、それは別に深い意味があってのことではない。倉庫の中に重大な意味を持つ道具がおいてあったり、中で訳ありの旅人を匿っているわけでもないのだが。

 倉庫の中の物が、たまに増えることがあるから。

 増える理由は分からないし、増える物についてもイマイチ把握は出来ていない。フライパンだったり、工具だったり、パン生地だったり、パンだったり、綿棒だったり、分厚い本だったり、長い髪の毛だけがごっそりあったり、ある時は骸骨まであった。

 最初に驚きこそすれ、慣れてしまった今ではそれは単なる娯楽の一つでしかない。今日は何があるだろう、あるいは何もないだろうかと思いながら倉庫を開くのが週間になったのは、こういう理由があったのだ。

 そして、別に他の仲間たちが傍にいないときを狙って開けに行っているわけではないのだ。やるべき事を全て終えてから少しだけ見に行く、それだけなのだが、どうにも仲間たちは何もすることがなかったらリビングに集まっている傾向があるのだ。だから、その関係もあって倉庫へ向かうアニューと出会ったりしないのだろう。

 今日だってそうだ。デヴァインが家にいるにはいるが、仕事を全て終えるやいなや、彼は直ぐさまリビングに落ち着いてしまった。

 さて、今日は何かあるだろうか、無いだろうか。
 そんなことを思いながら、アニューは気持ちを変えて倉庫の前へ立った。

「出来ればお菓子が良いわね。そろそろ切れてきた頃だし…あ、出来ればおせんべいが良いわ。ブリングが最近好んでいるようだし」

 実は食材など、いくらかはこの倉庫から取り出しているのだった。
 もちろん倉庫のことは知られていないので、仲間たちは知らない現実だ。

 そして。
 ガラリとドアを開けて……

「あら、珍しい」

 中にはヒトがいた。

 死んではいないようで肩は微かに上下しているように見受けられる。けれども意識がないのか、ピクリとも身じろぎしなかった。倉庫の暗闇に、突然ソトからの光が差したというのに、である。

 濃緑というか、黒というか。そんな感じの髪の毛はくるんと跳ねていて、前髪はやけに長いのが気になった。勝手に切ったら怒られるだろうか。

 そんな感じの青年が、そこにいたのだが。
 アニューはそれを眺めて、どうしようかと少しの間思案した。

 流石にコレはどうにかしないとマズイ気がする。のだが、何をどうすればいいのかが皆目見当が付かない。放っておくのがダメのは分かるものの、ならばどうすればいいのかと言われると口籠もるだろう。

 そうやって考えた結果。
 とりあえず倉庫のドアをぴしゃんと閉じた。

 もちろん見なかったふりをするわけではない。ここに仮置きしておいて、先に家にいくつかある空き部屋の一つを整えてから運ぼうと考えたのである。

 家に入りながらふと、デヴァインにこの事を言うべきだろうかと考えたが、別に言わなくても良いかと思い返す。あの青年が目を覚ますまで置いておくだけなのだし、わざわざ言うほどのことでもないだろう。もっと大変なことだってあるはずだから、こんなことを気にしなくても良いように、教えない方が良い。

 

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