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「帰らなくて良いのかなぁ…」
「良いんじゃね?どうせそんなに心配もしてねぇだろ」
「……でもさ、やっぱり何だかさ…」
「問題ねぇって。デュナメス残ってるし」
ふぁあと欠伸をして、アリオスはベッドの上でのびをした。寝ころんでいる自分の直ぐ傍では、キュリオスが座ったまま眉根をきゅっと寄せている。本当に帰らなくても良いのかと考え込んでいるのだろう。
別に問題ないだろうにと、自分からすると少し呆れる思いがあった。残っているメンバーでどうにでも、最悪の事態は回避できるだろうに。この半身は不安に思いすぎなのだ。
気持ちは分からないでもない。折角集まったのにまた離れるというのは、キュリオスがいるだけでも十分だと思っている自分でさえも、少し思うところがある。だから早く帰ろう帰ろうと言う彼の気持ちまで否定する気もない。
だが、それよりも今は。
開く気配のないドアの方を見て、アリオスは軽く息を吐いた。
「ヨハン遅ぇの…腹減った本気で」
「食べ物、ちゃんと持ってきてくれると思うよ?真面目そうなヒトだったし」
「あ?持ってくるのは当然だろ?」
「……当然なんだ」
苦笑と共に返される言葉に、おう、と頷いてみせる。
だいたい、食べ物調達をしなかった場合、自分にとってヨハンの存在理由が多くて三分の一、少なくて四分の一ほど減るだろう。つまり、自分にとって彼とはその程度の存在だと言えるのだった。
さて、何を彼は持ってくるだろうか。気分的にはサンドイッチが良い。あるいはスナック菓子。キュリオスがそばにいるから甘い菓子とかでも可。麺類は面倒なので今は遠慮したいところだ。
「…そういえばさ、ヨハンさんってさ、普通に異端だよね」
「それがどうかしたか?」
「すっごーく今更だけどさ、ここって都なのになぁって思って」
確かに今更だった。
お前なぁと呆れつつ、軽くデコを突く。
「った!?」
「昨日の夜に色々やっといて、今言うかそれ」
「…だって、今思ったんだもの」
「だろーな」
ひょいと反動を付けて起き上がり、アリオスはニッと笑った。
「あと付け加えるとな、この宿にいるやつ他にも何人か異端だぜ」
「そうなの!?」
「…気付けよ」
見なくても気配がここまで違うのだ、分かるものではないだろうか。
が、間違いなくキュリオスは驚いているようで、その鈍感さもいっそ何というか……嫌いではないから別に良い。
クツクツと笑っていると、ふいにキュリオスがつ、と顔を上げた。
その次に視線が向けられたのはドアの方。
「…あ、足音」
「んじゃ、ベッドの下に戻るか?」
「うん。ヨハンさんじゃないかもだものね」
アリオスとキュリオスは頷きあって、再びベッドの下に戻った。
と同時に、部屋のドアが開く。