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色々と思うところはありますが、まず。
ツヴァイ、本気で謝る。ごめん許して。
27:桜
ターンAは悩んでいた。それはもう初日から、ちょっと桜あんパンについて思い出してしまったときからずっと。
本当に、どうやったら桜あんパンを商品として出せるようになるだろうか。
「良い案はありませんか?」
「ねぇよ!ってか何でオレって捕まってんの!?」
「えっとですねー、やっぱり逃げられたくないのでー」
「うんうん、そこは何となく理解できる。けどな?」
そこでツヴァイは一度言葉を切って、その後に大声で叫んだ。
「何で埋められないといけないんだよ!」
本気で憤慨しているようだった。
しかし、それにはたった一つの返事しか用意していない。
さらりとターンAは答えた。
「趣味ですから」
「趣味!?ヒトを埋めるのが趣味!?」
「はい!そういうわけなので頑張ってください!」
「頑張れるかーッ!」
渾身の叫びとはこの事を言うのだろうなぁと、ちょっと他人事のように思いながらもターンAはパンを作る手を止めない。ここで手を止めてしまうと、少しできの悪いパンが出来上がってしまうのである。それは嫌なのだった。
何故ツヴァイをこうして捕まえているかというと、それは桜あんパンのためである。出来上がった桜あんパンの試食を彼に頼もうと思い、こうして埋めてみた。パンを作るのにはそこそこの時間がかかり、その間に飽きて彼がどこかへ行ってしまうことを防ぐためである。試食をしてくれるヒトに逃げられてしまったらどうしようもない。
もちろん事前に許可は取った。試作品のパンがあるので食べてくれませんかと。そして、それに同意したのはツヴァイ自身である。出来ればアインとドライも同様に連れてきたかったのだが、そこは二人ともどこかへ行っていたために無理だったのである。
ちなみにだが、ターンAにツヴァイを埋めていることに対する罪悪感はない。
そんなものは今更である。
「うーん…桜の花びらを無加工はマズイんでしょうか…」
「無加工!?え、ちょっとオレそういうの食わされるワケか!?」
「あぁ、食べられるようにはしてますよー」
「それでも殆ど無加工なんだろ!?」
「えぇ、まぁ桜あんパンですから」
付け加えると、あんパンということで餡も入っている。白あんで、パン生地を二つ庭って中を見ると、桜の桃色と餡の白色が結構綺麗な代物である。
「加工、せめて加工して!」
「そんなに焦らなくても死にませんよ?」
「いやいや、死ぬって気分的に死ぬ!」
「大げさですねぇ…ずっと前ですけど、ストライクフリーダムさんなんて、とっても長い時間埋められてても生きてましたよ?」
埋めたのは他でもなく自分だが。
そこは敢えて出さずに言うと、そんなの関係ないと喚く声。確かに関係はなかった。
「…じゃあ、桜を加工するべきなんですか?」
「単に食べれるレベルってーのから、もう一ランクくらい上げてくれ!そうしたら文句言わずに食べるから!」
「……そうですか…なら、仕方ありません」
非常に残念だが、お客様の意見を取り入れるのも仕事のうちである。
桜の花びらをそのまま使った桜あんパン、作ってみたかったのだけれど。
「ちゃんと加工してきます。だから食べてくださいね?」
「約束する。男に二言は無いからな」
「そうですかぁ…良かった」
ガンダムみたいに逃げ出されたらどうしようかと思っていたのだけど、これなら本当に大丈夫そうだった。安心である。
こうして大丈夫なのだと確信を持てたため、ターンAのやる気は右上がり。気合いを入れ直してパン生地や桜の花びらに取りかかる。
長い袖を腕まくりしていると目の前の窓から見える庭で、首だけ地面からつきだした状態でいるツヴァイが物言い足そうにこちらを見ているのに気付いた。
思わず首をかしげる。
「どうかしたんですか?」
「逃げないって約束したんだし、掘り返してくれても良いんじゃないか?」
「だめですよ」
「…何で」
納得いかない、という顔のツヴァイに一言。
ターンAはにっこりと笑って言った。
「だって、埋めるのは趣味ですから」
最近はパン屋としての性質の方が強いターンAですけどね、埋めるのも好きですもんね。
ていうかツヴァイ、本当にごめん。