チビスターズ第一話 ⑫
大切な戦いをハロに中断させられ、少し不愉快な気分だ。
これを機に、ハッキリとさせておきたかったのだが…。
……そう上手くいくものではないか。
焦りは禁物なのかもしれない。こういうことはじっくりといくべき……か?
一人納得し、ティエリアは立ち上がった。
ん?…とロックオンがこちらを見る。
「どっか行くのか?」
「部屋に戻ります。ミッションは明日なのでしょう?ならば、少し体を休めていた方がいいと思うので」
小さくなったアレルヤをずっと見ていたいのは事実だが、それで明日のミッションを失敗したら……それこそ本末転倒だ。万全の体調でのぞみ、さっさと終わらせて帰る。それが一番の選択だろう。
それはハレルヤにも言えることだが…彼がアレルヤから離れて休息をとるとは思えない。
そういうわけだったから、彼には休むように言わずに食堂から出ようとしたのだが。
「そういやそうだよな……俺も戻るかな」
後ろからこんな言葉が聞こえてきて、驚いて立ち止まり、振り返った。。
アレルヤがスメラギたち女子クルーに離してもらえないことは、彼にだって分かっているはずだから、アレルヤもつれて戻るというのは考えていないだろう。
ということは、アレルヤを置いて行くのか……彼が?
にわかには信じられない話だ。
「おい、眼鏡……何ボーッとしてんだよ」
横に並ばれ、はっと我に返る。
足を動かし始めると、ハレルヤが後ろからついてきた。進行方向は同じだ。
しばらく進んでから、ティエリアは口を開いた。
「……まさか、君がアレルヤを置いていくとは思わなかった。どういう風の吹き回しだ?」
「別に?俺にも気まぐれってのがあんだよ。それよか俺、お前が何で驚いてんのか分からねぇんだけど」
「その気まぐれを見たことが無かったから驚いているんだ」
というか、そんな気まぐれがあったのか。
「…君はもっと心の狭い男だと思っていたんだが」
アレルヤを独り占めして、他の人間に渡さないような。
そう言えば、ちょっとした敵意が向けられると思ったのだが。
「へぇ、よく分かってんじゃねぇか」
返ってきたのはこんな返事。
つい立ち止まり、振り返ると愉快そうな顔のハレルヤがいた。
「そうだよ、俺はそう言うヤツだ。アレルヤを他のヤツに渡したくねぇ。ずっと俺の傍に置いておきたい。そう思っているんだよ」
「では、何故だ?」
ずっと近くにいたいなら、どうして彼を置いてきた?
訊くと彼は苦笑を浮かべる。
「簡単な話だぜ?アレルヤが楽しそうだったから、それだけだ。折角楽しんでんのに、邪魔すんのはアイツが嫌がるだろ」
その答えを聞いて、ティエリアは改めて…思った。
そして、思ったことを口にする。
「ハレルヤ、やはり君はとてもアレルヤを想っているらしい。だが……」
すっと、彼を見据える。
「俺は負ける気はない」
「……上等だ。這い上がって来れないくらい、徹底的に叩きのめしてやる」
「それはこちらのセリフだな」
体の向きを元のように直し、ティエリアは再び移動を開始した。
「そういやさ、お前のその眼鏡って伊達?」
「いきなり何なんだ」
「アレルヤがこの前、不思議そうにしてたんだよ」
「度は、入っていないわけではないが低いな」
「ふぅん…今度貸せよ、それ」
「……何をする気だ?」
「たいしたことじゃねぇから安心しな」
「そうか。ならば貸さないことにしよう」
「なっ……普通『そうか』ときたら貸すだろ、おい!?」
ハレルヤとティエリアは仲が悪いながらも良いライバルになれると思ってます。