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うん、私の中では確実にそうだけど。
チビスターズ第一話 ⑩
「スメラギさん、お酒はひかえたほうがいいですよ……?」
「あら、いいじゃない別に。いつものことでしょう?」
「それがいつもだから止めてるんですよ……」
「そうかしら…………ところでアレルヤ、あっちの」
「あ、そういえばつまみが無いですね。取ってきましょうか」
「それよりも、あっちが」
「何がいいですか?たしかピーナッツがあったと思うんですけど」
「ねぇ、ちょっと」
「スルメもありましたっけ、そういえば。そっちも持ってきます」
「ね」
「何ならビールも持ってきましょうか?」
「…………………アレルヤ」
何度も話をそらそうとするアレルヤの頬を両手で挟み込む。
それから顔を九十度ほど回してやるとおそらく、今の今まで彼があえて視界から外していた光景が見えるはずである。
そう、なんとも言えない言い争いが。
「だから、アレルヤは俺のなんだって!」
「ロックオン、独り占めはずるいよ……」
「フェルトの言うとおり!アレルヤはみんなで愛でるのが一番なのッ!」
「知るかよンなこと!」
「その通りだな。彼は大多数の人間の前に出すべきではない。すぐに誘拐されるぞ」
「アレルヤは少し抜けているし可愛いからな」
この内容が、人知れず話されているならいいのだけど。
本人がこの場にいるのよねぇ……。
これは、本人には聞かせず水面下で行う会話なのではないだろうか。
それを自然と聞くことになったアレルヤが、何となく不憫に思えてくる。
唯一の救い(?)はスメラギ自身とリヒティ、ラッセ、イアン、そしていつの間にか現れたハロが仲間入りしていないことか。もしもハロまで入っていたら、アレルヤはどうなっていたのだろうか。
多分、リヒティは入り込むのが怖いのと傍で見ている方がおもしろいから、ラッセは呆れているし大人だから、イアンは父親の心境でいるから、ハロはそもそもそういう子じゃないから、という理由でそれぞれ入っていないのだと思う。
スメラギが入らない理由はもちろん、見ている方がおもしろいからだ。
「……どうやったら止まるんでしょうか」
「さぁ?私に訊かれても困るわ」
「戦況予報士としての力量とか、そういうのは使えないんですか」
「無理ね。データはあるけどあの子たち、あなたのことになると色々しでかすから」
人間の思惑というのは、ときとしてあらゆることを超越する物だから。
……まぁ、こういう場面で言うような言葉ではないけれど。けれど、それが一番適切な表現だと思う。
口には出さなかった思いを汲んでくれたのか、アレルヤははぁ、とため息を吐いた。
「どうしてなんでしょう……?」
「それは自分で気づかないとダメなことよ」
何で彼らがアレルヤのことになるとああなるのか。それは無闇に教えていいことではない。自分で気づく、それが大切なのだから。
でも、放っておいたらずっと気づかないだろうな、と考えるのもまた事実だったりする。
つまり、彼らの恋とか想いとか、そういうものは前途多難なわけだ。
影で応援しておくことにしようかしら。それとも、傍で見ておくだけ?
どっちにしろ楽しそうな気がする。が、巻き込まれる可能性も結構ある。
まぁ、そこら辺は彼らの努力次第であり、自分の力はあまり関係がない。
じゃあやっぱり、第三者として眺めていましょう。
しばらくの方針を決めてスメラギは、また言い合いを眺め始めた。
「え?皆がああなのって、アレルヤのことす……モガッ!?」
「バカ!お前、何言おうとしてんだ」
「…もっと周りをよく見た方がいいんじゃないか」
リヒテンダールはこういう子。