「ただいま……って、あぁぁぁ!?」
「よ、遅かったじゃねぇか」
「遅かったとかじゃなくて、ねぇ、君の手にあるのってもしかして…」
「ん?コレか?」
スプーンで中身をすくっていたプラスチック製の容器を持ち上げ、何故だか呆然としている半身に見せる。
「冷蔵庫に入ってたから食った」
「それ、ボクのなんだけど…」
「ふーん」
「ふーん…じゃ無いよ!昨日言ったじゃないか!」
「そーだっけ?」
そういえば、言われたような……言われなかったような。
正直、昨日の事など覚えていないので何とも判断がつきにくかった。覚えていない……というか、正確には殆ど聞いていなかっただけであって、それで覚えろと言う方が無茶な状況ではあったのだが。まぁ、それはそれで良いとしよう。
どうせ、聞いていたところで同じなのだから。
「ま、さっさと食べなかったお前が悪いって事で」
「理不尽だよ!」
「知らねーよ。諦めな」
「…そう…分かった」
ふいにアリオスの纏う空気が変わったことに、キュリオスは気付いた。気付かざるを得なかった。気付きたくはなかったのだが。
何せその空気というのが、感じたこともないほどの冷たい空気なのである。
…まさか、『あの』アリオスが?と、おそるおそる顔を上げると、
半身は、笑顔だった。
……どこか……押してはならないスイッチを押したらしかった。
「ア…アリオス…?」
「じゃあキュリオス、そんなにアイスが好きならこうしようよ。…ご飯も何もかも、君のは全部アイスにしよう?」
「…んなっ!?」
「ボク、準備があるから」
また後で。
そういって去っていく半身を、キュリオスは見送るしかできなかった。
多分、他の相手であった場合は置いておいて、半身相手ならこの子もこういう態度を取れるのではと思うのですけれどね。