[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
二期で沙慈はとても成長したと思うのですが、一期の時は色々鬱だったりしたこともあるのではないだろうかと思うのです。一度に大切な人とか、家族とかがあぁなったら、誰でもショックだろうし…。
そんな感じの話です。
15.大嫌い
最初は関係ないと思って、ただそれだけの存在だった。
遠く遠く、テレビ画面の向こう側に展開している、現実だけれど現実だとは思えない別世界の話だと。平和な日常を生きていた自分たちには全く関係ない、現実の中の非現実だとばかり。関わるようなコトは一生無いだろうと。
でも、世界というのは本当に酷い。
こんなにもあっさりと、まるで他人事だと思っていた事への罰かのように。
大切な物を奪っていった。
「ねぇ、刹那」
「……何だ」
「君にとって、人が死ぬってどういうコトかな」
「突然何かと思えば……本当に何なんだ?」
コトリ。音を立てて刹那が紙コップをベンチの上に置く。
ここは公園。ルイスと一緒に歩いていて偶然に彼を見かけた。ルイスの方は来る前に見かけたクレープ屋に興味があったらしくそちらへ行っていて、今はここにいない。だから自然と沙慈は一人と言うことで、そうなれば偶然であろうと見つけてしまった刹那が巻き込まれないワケがなかった。無表情ながらも嫌そうにしていた刹那に飲み物を一杯おごるという条件で、しばらくの暇つぶし相手になってもらったのはつい先ほどの事。
にしても、何が良いかと訊いてたら刹那が少し悩んでからミルク、と答えたときは少しどころでなく驚いた。大人びているからコーヒーや紅茶なんて言われると思っていたのだが。意外と言えば意外だったが、刹那の背の低さを考えれば分かる気もした。何気に彼は気にしていそうだ。
「お前は、あまりそういう事を考えるような人間に見えないが」
「ちょっと考えていたことがあって、ね」
「考えていたこと?」
「うん」
頷きながらも沙慈はあれ、と首を傾げた。さっきまで、一体何を考えていたのだったか。
腕を組んで悩み出した沙慈に刹那は呆れたように一瞥を投げかけ、紙コップの中身を一口ほど飲んだ。
「思い出せないなら、その程度の事だ」
「うーん……それはそうだと思うけど……何だかとっても大切で忘れちゃいけない様なコト、だったような気がするんだけど……」
「だが忘れたんだろう」
「そうだね。ってことはやっぱりどうでも良いコトだったのかなぁ……」
釈然としない思いを抱えつつ、それでも沙慈は言葉を続けた。
「で、ねぇ、君にとって死ぬって何?」
「動かなくなること」
返ってきたのは、実に単純で明快な事実だった。
あまりに刹那らしい答えに呆れながらも、沙慈は少しばかり残念に思った。刹那ならもっと、別の何かを返してくれるような気がしていたのに。根拠なんて無く、ただ何となくそうであるように思っていたのだが。
そうそう上手くいくものではないのかと思っていると、再びコトリという音。それは刹那が紙コップを二人が腰掛けているベンチに置いたときの音だった。
「で、お前にとって死とは何だ」
「僕?」
「人にそんなことを訊いたんだ……お前にも何かあるだろう」
どうだ?と問われ、沙慈の口は自然と言葉を零していた。
「辛いこと、だよ。死んだら会えなくなる。大切な人が傷ついてさえ辛いのに、死んでしまったら尚更だ。僕はそう、思う」
「……そうか」
「……っと、ゴメンね?急にこんな話に付き合わせて」
「気にしない」
ふい、と視線を逸らした彼に何となく微笑ましさを感じて、沙慈は近付いてきた足音に振り返った。
そこには、両手にクレープを持っている笑顔のルイスの姿があった。
パチリと目を開ければ、そこは家の、部屋の中。
先ほどの……夢を思い出して、沙慈は前髪をギュッと掴んだ。
「……あっちが本当なら、よかったのに」
自分から、あんな暖かな世界を奪った存在なんて。
「 」
残酷な夢。のような現実。
どうかこの現実よ、覚めて。
…なんてね、思ってたと思うよ。