[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
知ってるか知らないかだと、たぶん知ってるんだろうけど、こっちでは知らないって事で…。
あの姉弟は何気に仲良しだと思うんだ。
012:赤い花
「あら隼人」
「…姉貴か」
「こんなところで何をやっているの?」
ちらりとさえ視線を向けることなく答える自分に気を害した様子もなく、ビアンキはどうやら自分の後ろで立ち止まったらしい。彼女もとりあえず、一応、多分、きっと、自分が彼女の顔を見たら気絶するのだと分かってはいるようだし。かなり多くの『多分』が最初に付くのは、それを知っているはずなのに構わず行動を起こすことが多いからだ。たまに本当に分かっているのかが分からなくなるほど。
それはともかくと、獄寺は目の前にあった植物を指さした。これで、どうして自分がこの場所にいたのかは理解するだろう。
「それを見ていたのね」
「何ってか……血みたいに赤いと思って」
「彼岸花だもの、赤くて当然よ」
「ヒガンバナ?」
「それの名前。彼岸の花と書いてヒガンバナ」
知らなかったの?と呆れる声に煩いと返すと聞こえる嘆息。
知らなかった。知らなくて悪いか自分はイタリア人だと言い返したくなったが、そこはビアンキも同じ条件なので言うべき箇所ではないだろう。姉はイタリア人だが知っていたのである。
にしても。
彼岸、といえば。
思い出されるのは……
「隼人、」
「…分かってんだよ」
「…なら良いわ」
そして足音が遠のいていくのを聞きながら、少し気を遣ってくれたのかと思って顔を伏せた。多分、今残っている家族の中で一番傍にいてくれたのがビアンキだから、その気遣いは思うところがあったとしても素直に受け取ることが出来る。
赤い赤い彼岸花。
彼岸と言われて浮かぶのは、死んでしまった、
色々と、獄寺にも色々とあるよね、って話。