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勝手にお昼にお客様を呼んだりしてよかったかなと、玄関にはいるときにふと思った。一人二人増えても変わらないのは事実なのだが、いきなり人が増えたらデヴァインの方はあまり良い気持ちはしないかもしれない。
けれども、まぁ、もう呼んでしまったから仕方がないといえば仕方がないのだが。
そういう開き直り方をして、アニューは二人を家の中に招き入れた。
「ちょっと広いから迷子とかになるかもしれないけど……その辺りは頑張ってください」
「あぁ、いえ、お気遣いなく。私たちが帰る場所としている家も結構な広さなので、慣れればどうということは無いと思います」
「そうなんですか?」
それは是非とも行ってみたいものだ。他の人の家というのにあまり行ったことがないから、お呼ばれされるのはアニューのちょっとした夢でもある。突然な客人を招くのは、既に趣味と化している気がするがそれはそれ。
以前は異端の三兄弟を招いてみたら、リヴァイヴに物凄く怒られた。月代として、都を統べる者としての自覚が足りないと。あの時はかなり落ち込んだのだが、そうするとリヴァイヴがわたわたと慌てだして、思わず笑ってしまったのだった。
あの三人は今も元気だろうかと思う。弟さんと妹さんが元気よすぎて、一番上のお兄さんがとても苦労していたようだったけれど。
そんな事を思っている間にリビングに辿り着き、アニューはソファーに座っているデヴァインの赤い後頭部を視認した。どうやらこちらには気付いていないようだ。
「デヴァイン、帰ったわ」
「あぁ、お帰りアニュ……」
そうして、振り返ったデヴァインの体がピシリと固まった。
あぁやっぱり、とアニューは苦笑を浮かべた。良い気持ちかどうかは置いておいて、軽く驚かせてはしまったようだ。
「…その人たちは」
「さっき偶然に知り合ったの。こちらはソーマ・ピーリスさんで、こちらはグラハム・エーカーさん。ソーマさんは魔族の方で、グラハムさんは人間の方よ」
「…え!?」
驚愕に満ちた声を上げたのは、意外にもデヴァインではなくてソーマだった。
彼女は目を見開いてアニューを見て、呆然とした様子で口を開いた。
「私が魔族と……いつ?」
「見たときから分かっていたわ。私、そういうのに敏感なの」
「アニュー!異端なら…良くはないが、ともかく、どうして魔族を!」
立ち上がったデヴァインの大声に、だって、と耳をふさぎながら答えた。
「折角知り合いになれたんだもの、一緒に昼食くらい良いじゃない」
「分かっているのか!?リボンズは魔族を葬ろうと……」
「大丈夫よ、そんなの出来るわけ無いもの」
魔族といっても、殆どは異端と一緒だ。だから、魔族だけを選んで倒していくのは、不可能に近いとアニューは思っている。月代と魔族が静かな対立を始めたのがいつかは知らない、が、無理な物は無理だ。
ちなみにこの持論、隠したりもしていないのだが誰も反論らしい反論をしてくれない。きっと、皆も分かっているのだ……それが難しい話なのだと。
それでもやろうとするところ、頑張り屋さんだとしか言えないけれど。
「だから、別に魔族の一人や二人、倒さなくても問題ないわ」
「…その理論、分からなくはないが…リヴァイヴ辺りに聞かせたら大変なことになるぞ」
「そうね。だからデヴァイン、これ内緒だからね?」
口元に人差し指を当てて微笑むと、諦めたような嘆息が聞こえてきた。
それは良いのだけれど、どうしてデヴァインだけでなくソーマまでため息をついているのか、ちょっと分からなかった。