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 今、目の前にいるのは誰だ?

 ロックオンは、突然現れた三人と二体を呆然と見ていた。二体の方は見たことがある形状の、見たことがある存在だったが、残りの三人のうち……二人は知らない相手だった。知っているのはハレルヤくらいのものである。

 普通に考えれば、その二人とは初対面なのだと思うところ、しかし、どうしても二人のうちの子供の方に見覚えがある気がするのは、果たして自分の錯覚なのだろうか。女の子の方は、間違いなく初対面だと言い切れるというのに、もう一人を『初対面』と言うのに躊躇いを覚えるのは、一体、何故。

 呆然と見やっていると、傍から響いたのはネーナの声。
 驚いた様子で、子供を指さして言ったのだ。

「え……何でアレルヤがその格好を!?」
「…あれ、るや?」

 あれが、アレルヤ?
 自分たちが知らないという中、彼女らが知っていると言い続けていた?

 その事実に戸惑うが、その後は速かった。直ぐに、心が受け入れていたためか、思考の方も受け入れたのだ。彼がアレルヤだと。
 だが、それだけに止まらなかった。

 目の前でオレンジ色の人形がハレルヤの名を呼び、ハレルヤが人形をヴェーダと呼び、そのヴェーダとやらがハレルヤを殴るのを視認しながらも、ロックオンの頭の中はとある色に塗りつぶされていた。

 炎の色。

 昔、何かがあったような気がする。
 何があったのかは思い出せないが、とても大きな何かが。
 とても大きな、多くの物を失った何かが。



『兄さん、何も覚えてないのか?』

 弟のどこか責めるような声。

 そして。





『忘れてください、何もかも』

 笑みの浮かんだ泣き顔。





「大丈夫ですか?」
「…わ!?」
「ボウッとしましたけど…」

 唐突に目の前に現れた子供の顔に驚いて身を引けば、もう大丈夫だと言わんばかりの笑みを浮かべて、子供は自分に手を伸ばして……何かを取るような素振りを見せた。何もない場所で、何も付いていない箇所で。

「記憶の混濁があったみたいですね…イトで記憶が封じられていたから、その空白部分を埋めるように、昔の記憶が浮上してきたんでしょう。イトさえ取れば戻ります」

 そして、手を子供が……アレルヤが離したとき。
 ようやく、ロックオンは目の前の子供の名前を『思い出した』。

「……アレルヤ」

 

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