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式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
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拍手再録です



~家出少女との邂逅~

 その少女は家の前で倒れていた。
 そして、それを見下ろしている自分たちはと言うと……
「えっとな、兄さん、これってどうしたら良いんだろうな?」
「俺に訊くなよ…ていうか俺が知りたい」
 はぁ、と息を吐いてロックオンはとりえず、少女を起こそうと彼女の肩を掴んで揺すってみた。当然ながら反応はない……かと思いきや、微かに身じろぎ。もう少し揺すれば起きるだろうか。
 などと思っているうちに少女の瞼がゆっくりと開いた。
「う……」
「あ、起きたか?」
「大丈夫か、お嬢さん?」
 お嬢さんて……真っ先に手を少女へ手を差し伸べた弟を呆れながら見る。少女の年齢はざっと見た感じで十四歳前後で……こんなところで二十四歳の弟に嫌な評判が立つのは遠慮したい。そういうのは自分だけで十分である。というのも、以前に住んでいた場所ではからかいの意味も込めて、自分の方が何か酷い呼ばれ肩をしていたのだった。
 やはり弟には、こういう苦労はさせたくない。
 さっと辺りを見渡して人影がないことを確認して一息吐き、ロックオンは意識をライルと少女の方へと向けた。
「私…」
「君はここで倒れてたんだ…名前は?」
「…アニュー……アニュー・リターナー」
 アニュー。何とも珍しい名前だった。
 ふぅんと眺めていると、少女は何かを思い出したような顔をして……突然にライルの腕にガシッとしがみついた。
「お?」
「お願いです!匿ってください!」
 あまりにいきなり過ぎる展開に呆然としていると、重ねて少女は続けた。

「私、家出してるんです!」

(2009/04/15)


~すみません、この子知りませんか~

 その人は、泣きそうな顔で何かを探していた。
「アニュー!アニュー、どこに行ったんですか!」
 本当に泣きそうで、思わず声をかけてしまうほどに。
「…あの」
「アニュー!?…じゃないですね…何か用ですか?」
「その、誰か探しているんですか?」
「えぇ。僕の大切な妹です」
 こくりと頷いた、その青年の名前はリヴァイヴというそうだ。
 彼は六歳年下の、つまり十四歳の妹を探してこうして歩き回っているのだそうだが、朝からずっと探しているのに手がかりすら見つからないのだそうだ。道行く人に聞いても返事は喜ばしくない物ばかり。
 どうしましょうと、リヴァイヴはとてつもなく不安そうな顔で言う。
「アニューの可愛さは尋常じゃないんです。もしもですが、変質者に誘拐されていたらどうしましょう…っ」
「あ…あの…?」
「サツには行ったのかよ、このシスコン」
 呆れ顔でハレルヤが口を挟むが、リヴァイヴは行きましたと鼻をすすりながら答えた。
「ですが、困った顔をされるばかりで…」
「…何て質問したんです?」
「とても可愛くて抱きしめて頬ずりしたくなるくらい愛しい妹を知りませんか、と」
「んなもんで分かるかボケぇッ!」
 すぱーんと、ハレルヤのハリセンがリヴァイヴの頭を直撃した。ちなみにハリセンがどこから出てきたかなどは訊いてはいけないそうだ。トップシークレットらしい。
 というか、この分だと…道行く人にも同じような質問をしていたのではないだろうか。だとしたら手がかりが入らないのも当たり前である。アレルヤは何とも言い難いながらも苦笑を浮かべて、言い合いを始めた二人の間に入って言った。
「とりあえず僕らの家に来ませんか?少し落ち着いてから、僕らもお手伝いしますから」
「ちょっと待てアレルヤ、何で俺まで捜索隊に入ってんだ」
「え…やってくれないの?」
「…いや、別にお前がやれって言うならやるけどよ…」
 
(2009/04/15)


~そっくりさんからの電話~

『やあ、ティエリア』
「切るぞ」
『え、ちょっと待ってよ!』
「……何のようだ」
 チッと舌打ちをしながら、ティエリアはボタンから指を離した。
 改めて携帯を耳に当て、忌々しく思いながらも問う。殆どの確率で有り得ないのだが、もしもかなり大変な話を彼が伝えようとしているのなら、自分が聞いておかなければなるまい。本当に高確率で有り得ないが。
『あのさ、そっちにリヴァイヴ行ってない?』
「リヴァイヴ?いや、来ていないが」
『じゃあさ、アニューは?』
「そちらも来ていない。いなくなったのか?」
『うん。アニューがちょっと家出しちゃってねぇ』
 行っていないんなら良いよ、じゃあね。
 言うことだけ、訊くことだけ訊いて、リジェネは勝手に通話を切った。
 ツー、ツーと鳴る音をさほど苛立たしく思わずに聞き、ティエリアも携帯を折って、しまう。今回は本当に世間話でも何でもない、大切な話だった。
「ティエリア、誰からだ?」
 ヒョコリとキッチンから顔を出して、刹那が尋ねてきた。彼はただいま昼食を作っている最中である。いつもはアレルヤが行うが、そのアレルヤがいないためである。
 ソファーに全体重を預けながらリジェネからだ、と答えた。
 すると刹那がピクリと眉を上げた。
「リジェネというと…あのリジェネか」
「あぁ」
 以前、自分が属していた家に住んでいた彼。
 今は自分の居場所でない家に住んでいる彼。
「だが、だからといって別にどうということもない」
 彼とは今でもある程度は友好的な関係にある。
 ただそれだけなのだから。

(2009/04/15) 


~家出騒動の集結①~

「……」
「……」
 バッタリと出くわした。そう形容するのが最も相応しいのだろうと、アニューともう一人を見ながらライルは思った。二人とも、鳩が豆鉄砲を食ったような表情だ。いやはや、こんな表現がピッタリ合うような反応を生きている間に見ようとは。
 そんなことを思っている間も、二人は固まったまま動かず、リヴァイヴ、とかいうのを連れてきてしまったアレルヤはオロオロとしていた。ハレルヤはどうでも良さそうだが、それはもういつものことだから何とも。ニールは困ったような表情をしていて、これから何をどうするのが良いかを考えているに違いなかった。
 さて、実際、何をどうしたら良いのだろう。
 石化を解いてやれば良いのだろうか……しかしそうすると一騒動起きそうな気がするから嫌だ。だからといって放っておくワケにもいかず、ならば騒動を起こさないように石化を解くしかないのであり。
 だがそれは、間違いなく無理だろう。
 あのアニューの『匿ってください!』と言ったときの表情を見れば、それは誰にだって理解できるだろう事柄だった。
 しかし……そういえば、家出をしてきたというアニューの動機を、自分たちはまだ聞いていないのだ。それを聞くまでは色々と決めつけるのは早計かもしれない。
 となれば、話を聞くしかないのだが……あぁ、やっぱり石化は解くしかないのか。
 どうやって解こうかと思案していると、ふいにパタパタと足音が聞こえてきた。スリッパを履いたまま廊下を歩くときの音だ。しかも二つあるから、恐らくは刹那とティエリアがこちらにやって来るのだろう。
 丁度良いと、ライルは二人の到着を待つことにした。誰かが外部からこの場に来れば、否が応でもアニューとリヴァイヴは我に返ってくれるだろう。その後にアニューが逃げようとしたら捕まえれば問題ない。彼女はまだまだ小さい少女だから、想像よりは簡単に捕まってくれることだろう。
 そして、彼らがリビングに足を踏み入れるまで、あと、三、二、一…
「揃いも揃って何をしている?」
「……その二人は誰だ」
 零。
 カウントを終えると共に、刹那とティエリアが現れた。

(2009/05/10)


~家出騒動の集結②~

 来訪者二人によって我に返ったアニューの対応は速かった。
「わっ…私もう帰りますね!それじゃっ」
 スクッと立ち上がった少女はそのまま体を反転、リビングから脱兎のごとく出て行こうとした。瞬発力もあって、本当に素早く。
 しかし、それを許すようなハレルヤではなかった。
 別に彼女が逃げだそうとどうしようと自分の知ったことではない。が、ここで逃げられると話は振り出しに戻ってしまうのだ。それは酷く面倒である。何せ、ここまで付き合ってしまったから知らんぷりも出来ない。
 彼女を猫のように掴み上げて、目の前に来た不機嫌な顔と目を合わせる。
「……放してください」
「せめて理由を言えってんだ。そうしたら考えてやらねぇでもねぇ」
「だって!」
 と、アニューはビシッとリヴァイヴを指さした。
「お兄さん、過保護すぎるんです!」
「……え?」
 キョトンと首を傾げたのはアレルヤで、他の面々も似たような表情をしている中、ティエリアだけが納得というか頭の痛そうな表情をしていた。リヴァイヴは茫然自失の体である。ただ過保護と言われただけなのに、どうやら妹に怒られたのがきついらしい。どんだけシスコンだコイツは…と、呆れかえるばかりである。
「…具体的には」
「……あまりのベッタリ具合なので…あまり言いたくありません」
「そうか……訊いて悪かった」
 問いを投げた刹那は軽く頭を下げ、チラリとリヴァイヴを見やった。おおかた、コイツが……とでも思っているのだろう。ハレルヤも同じ気持ちだったのでよく分かった。
 というか、それなら家出でも何か分からなくはない。鬱陶しいのから逃げたかったら離れるしかないだろう。そして、それをアニューは実行したのだ……最も単純で手軽で、いつでも出来る手段で。
 成る程、彼女はなかなか行動力を持っている。
「んで、これからどうすんだ?」
 そう尋ねたのはロックオンである。まぁ、これからの予定を決めるためには、この事柄の返答は必要だろう。特に彼は家の責任者のような立場だし。
 対してアニューは少し悩む様子を見せ、そして、口を開いた。
 
(2009/05/10)


~家出騒動の集結③~

「私、帰ります」
「アニュー……!」
 ぱぁぁっと顔を明るくするリヴァイヴに、あぁコイツは本気で変わってないとティエリアは思った。昔、リボンズと大喧嘩をして出て行ったときから全く変わってない。あれから結構な時間が流れているはずなのだが、どうしてこうも人というのは変われないのだろうか。これはむしろ変わらなければならない類の事だと思うのだが。
 というか、あの時は赤ん坊だったアニューはともかくとして……リヴァイヴが自分に何の反応も示さないのはどうだろうと思う。どうせ今はそれどころじゃない、のだろうが。
 今にも抱きつかんばかり…というか抱きつこうとするリヴァイヴをぐぐぐっと押しのけながら、アニューは言葉を続ける。
「やっぱり、皆さんに迷惑はかけられないですから……」
「その……お兄さんのそのベッタリ具合は大丈夫なの?」
「……実は今でも結構慣れているので、少し我慢すればそのうち本気で何も思わなくなると思うので、大丈夫です」
「……」
 それは大丈夫、とは言わないのではないだろうか。
 無言のままそう思い、しかし無駄なことと口は挟まないことにしてから、ティエリアはリヴァイヴを蹴りのけて空いた席に座った。
「痛っ……何をす…って、ティエリア!?」
「あぁ、俺だ。どうした?昔一緒に住んでいた人間の顔も忘れたか?」
「いえ……そうでなくて……」
 少し警戒を持った目で、リヴァイヴは続けた。
「以前なら蹴って落とすのではなくて、銃などで脅してのかしていた貴方が……まさか、こんな平和的な方法をとるとはと、そう驚いていたんです」
「あぁ、そういえばそうだったな……だが、銃を持ち出しても動かないヤツがいるのだから仕方ないだろう」
「…確かに」
 苦笑を浮かべるリヴァイヴの脳裏には、恐らく自分と同じくリジェネの顔でも浮かんでいることだろう。あとは場合によってはヒリングやリボンズなど。あの辺りは言おうと頼もうと蹴り落とそうと銃を出そうと大砲を持ってこようと、動かないときはとことん動かなかったのだ。
 ほんの少し、昔を思い出して、笑った。

(2009/05/10)


~家出騒動の集結④~

 お世話をかけました、と一礼するアニューの頭に、アレルヤはポンと手を置いた。
 本当に良い子だった。お別れするのが残念だと思うくらいに、とっても。今生の別れというわけではないのだけれど、それでもやっぱり残念な物は残念なのである。
「良かったら、また遊びに来てね」
「はい。また来ます…兄も来ると思うんですけど」
「それはまぁ、そうだと思うけど」
 だって、少しの間見ただけでも極度のシスコンだと分かる彼が、アニューを一人でこちらに寄越すとは到底思えない。少しの信頼もティエリアを見たときから確実な信頼に変わったようだが、それの理由がイマイチ分からないのはさておいて、ともかくこれがあっても彼が付いてくるのは殆ど確定事項だ。
 何か、やっぱり色んな意味で凄い兄だと思う。
「お土産でも持たせてあげれれば良いんだけど」
「そんな…そこまでしていただかなくても…」
「そうだぞ、アレルヤ」
 恐縮しきった様子のアニューに、ティエリアはうんうんと頷いて賛同した。
 え?と視線をやると、彼はチラリとリヴァイヴを見やった。
「…菓子か何かを持たせたとする」
「うん、お土産ならそれがオーソドックス、だね」
「絶対にアニューではなくヒリ……もとい別の何名か食べ尽くすに決まっている」
「彼女だけではなくてリジェネもではないですか?」
「あぁ、それもそうだな」
 何かどこか通じ合っているらしいティエリアとリヴァイヴの様子を見て、アレルヤは首を傾げた。どうしてこんなに仲が良いのだろう。仲が良いのは良いことだからと放っておいたが……ちょっと気になると、ずっと気になるのだ。
 そういえば、一緒に住んでいたとかどうとか言っていたから、彼がこの家に来る前の話が関係しているのかもしれない。
 それを思うと、少し悲しい気分になる。
 思わず顔を伏せていると、頭に感じる暖かな感覚。
 振り返ってみると、顔を逸らしたハレルヤの姿。暖かな感覚の正体は、片割れが手を頭に乗せてくれたかららしい。
「妙なこと考えて落ち込んでんじゃねぇよ」
「……うん」
 あぁ、何て彼は頼りになるんだろう。暖かさに身を任せ、アレルヤは目を閉じた。

(2009/05/10)

 
~家出騒動その後~

「刹那さん久しぶりです!」
「あぁ、久しいな」
 ……例の家出騒動から、早一週間が経った。
 そんなある日に家に訪れたアニューを抱き上げ、刹那は不機嫌そうなリヴァイヴは視界に入れないようにして玄関から室内へ足を踏み入れた。まだ小さなアニューは、自分が抱きかかえられるほど小さく、軽い。
「元気にやっているか?」
「はい。兄もちょっとは反省してくれたみたいで、少し色々と楽になりました」
「そうか。なら良いんだが」
 反省したから、自分がアニューを抱き上げていても何も言い出さないのかもしれない。顔にここまでありありと不満を貼り付けているというのに、何も言わないのは。というか、それ以外に理由が見あたらない気もする。
 二人を引き連れ、刹那はリビングへ至る廊下を進む。
「今日はアレルヤがケーキを作っていた。チーズケーキだそうだが…嫌いではないか?」
「全然大丈夫です…というか、すみません、遊びに来たのはこっちなのに」
「気にするな。…で、そちらの兄はどうなんだ?」
「僕も問題ないですよ。あ、それとこれが土産です」
 そう言ってリヴァイヴが持ち上げて見せた紙袋の中には……菓子の詰め合わせ。付け加えると、その菓子は全て和菓子だった。何でなのかは把握できないが…恐らく、彼らの家に和風が好きな誰かがいるのだろう。そうとしか考えられない。
 アニューを抱いていない方の手でそれを受け取り、刹那はリビングのドアを足で開けた。はじめから少し開いていたから可能だった事柄である。
「アレルヤ、戻った」
「刹那お帰り…それからニュー、リヴァイヴ、二人ともいらっしゃい」
 キッチンから顔を出したアレルヤは笑みを浮かべ、どうぞ席に座って?と言い残して再びキッチンの中へと戻っていた。
 アニューを椅子におろし、リヴァイヴが座るのを見てから刹那も座る。
「…そういえば、他のメンバーはどうしたんです?」
「何人かは家にいるが、他は仕事などで外に出ている」
「……では、ティエリアは」
「いる」
「また後で、会えるでしょうか?」
「会えると思うが」

(2009/05/10)

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