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五万打&一周年のやつで書いた…その、マイスターで買い物、ですけどね?
何か…どうだこれ、甘やかせてるのか?
05.とりあえず
それは、マイスター全員で地上に買い物に降りたときのこと。
ふと、アレルヤがとある店の前で足を止めたのが始まりだった。
「……どうかしたのか?」
「え…いや、そのね」
尋ねてみれば、ちらり、と視線を店の中にやりながら、恥ずかしそうに笑む彼。
「あれ、可愛いと思って」
指さされたのはマルチーズのストラップで……その店は、小物を売る店だった。付け加えると、どっちかと言わなくても女性向けの店である。
あぁ、マルチーズ好きだからと納得しながら、なら、と刹那はアレルヤと他二名にそこに残っているようにと言って店の中に入った。突然行動を起こしたからか三人が唖然としていたが、そんなことはあまり気にならなかった。
そして数分後、店から出た刹那の手の中にはマルチーズのストラップ。
「…やる」
「え、良いの!?」
「そのために買った」
思った以上に喜んでくれた様子のアレルヤに笑みながら、刹那は何となく微笑ましい気持ちになった。実際に笑んでいるが、それはそれということで。
「…とりあえず」
「?」
「遅くなったが、それが今年の誕生日プレゼント…ということで」
どうだ?と訊くとニコリと笑うアレルヤ。
「全然大丈夫だよ!というか…誕生日、覚えててくれたんだ」
「当たり前だ」
「ありがと。それだけでも十分だよ、僕は」
「……アレルヤ」
と、そこでティエリアが口を開いた。
どうしたのだろうと彼に自然に集まる視線の中、ティエリアは言葉を続けた。
「そういうことなら、僕も何か買おう」
「え……いや、そんな、悪いよ…」
「気にするな。僕からの単なる好意だ」
「んじゃ、俺も参加させてもらうかな」
「ライルまで!?」
「せっかくの話だ、乗らないに越したことはないだろ?」
ウインクまで付けて彼はそう言って、この買い物の主役となったアレルヤの手を引いて歩き出した。目的地は特にはないようで、歩いている間に主役が欲しがる何かがあったら、それを買ってしまえば良いだろうと思っているらしい。良い判断だろう、これは多分。
その後ろを黙ってついて行くティエリアの、その後ろを歩きながら、刹那はどうなるだろうと、若干傍観者の気分で成り行きを見ることにした。というか、自分は既にプレゼントを買って渡してしまったから『一抜け』であり、傍観者になるしかないわけだが。
完全に見る側になった刹那に、そういえばと問いを発したのは、目の前を歩くティエリアだった。
「よくあそこまで簡単に女性向けの小物点に入れたな?」
「あぁ、俺はガンダムだからな」
「……関係ないと思うよー?」
前方から聞こえてきたのは、アレルヤの苦笑。
何かおかしいことを言っただろうかと首を傾けている間にライルが良い物を見つけたらしく、あれ買ってやるよと指さしてアレルヤが慌てて首を振っていた。見れば、かなり高額な品で……成る程、必死な様子で断ろうとするわけである。
「遠慮するなって、な?」
「でっ……でもあんな高額商品悪いです!」
「誕生日プレゼントなんだしさ、そう恐縮しなくっても良いと思うけど?」
「けれど……」
ためらう様子を見せるアレルヤ。この分だと、ライルがどうにか説得して……という流れは無理そうな気がする。ご愁傷様と言うべきかもしれないが、それはハレルヤの台詞なので刹那は言わないことにした。
そして、ティエリアはと言うと……いない。
……いない?
「おい、ティエリアはどこだ?」
「え……え?…って本当にティエリアいないし!?」
「ちょ…教官さんどこに!?」
「ここだ」
と、突然響いた声にぎょっと後ろを振り向く、と同時に目の前を飛んで、アレルヤの手の中に収まる物体。金属製、のようだが。
「これは…?」
「栞だ。受け取れ。返却は受け付けない」
とても強引なプレゼントの渡し方に、刹那はうんうんと頷いた。
そう、これが一番確実な渡し方なのである。
男前な刹那とティエに、図らずもなってしまったような。
刹那が特に。女性向け小物店に難なく入っちゃうところ凄いと思う。