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ヴァリアー中心拍手再録かな、正確に言うと。



~のどかな昼~

 とある晴れた日、ヴァリアー本部の中庭の椅子に座ったスクアーロの、その膝の上にマーモンは座っていた。特に理由はなく、強いて理由を言うなら、そこが本人の騒々しさから見ると意外であるが…落ち着く場所だからだろう。まぁ、彼だって喋らないときは喋らないし、大人しいときは驚くほど大人しかったりするのだけれど。
 そうやってマーモンは何をするでもなくスクアーロの膝の上にいたし、スクアーロはスクアーロで似合わず本を読んでいた。
 どんな本を読んでいるのだろうとタイトルに目をやると…剣術がどうのこうのという本だった。前言撤回。似合わなくなんて無い、完全に彼にピッタリだった。表面だけ見ていては本質は見えないと言うことだろうか…いや、ちょっと違う気がするけど。
 昼間特有ののどかさに、思考まで微睡んでいる感じ。
 ふぁあ、と欠伸をしていたら、ふいに上から声が降ってきた。
「そういや」
「ん?…何?」
「いやな、今日休みなのって俺らだけだよなぁ」
「そういえばそうだね」
 ベルフェゴールはどこかのマフィアを狩りに行ったし、ルッスーリアとレヴィは二人で掟を破ったバカな人間を始末に行ったはずだ。ザンザスはと言うと、昨日からずっと机に向かって書類を片付けている。
 大変だとは思うが手伝いに行く気はない。この平和ボケしそうな程ノンビリとした時間は貴重なのだ。一銭にもならない行動をして潰しても良いと思えるほど、この時間は安い物ではないと考えている程には。
 もう一度欠伸をして、それからフードの下の目をこする。
「何だぁ?眠いのかぁ?」
「それほどでもないよ。それよりもお菓子が出てこない方が問題」
「……あぁ、ルッスいねぇもんなぁ」
「というわけで」
 つい、と視線を上に向ける。
「ねぇ、嫌じゃなかったら作ってよ。たまには君のも食べたい」
「構わないけどよぉ…何が食いてぇんだぁ?」
「何でも良いよ、君に任せる」
 言いながら、マーモンは思わずクスリと笑った。
 暗殺部隊の人間のくせに、まるで普通の人たちみたいな今の自分たちが少しおかしい。
 けれど、まぁ、こんなのどかな昼くらいはそうであっても別に良いだろう。

(2009/04/15)

 
~眠れや仔共~

「ねぇ、スク」
「何だぁ?」
「眠れない」
 それは本当に何なんだとかの王子の方を見やると、彼は眠そうに目をこすりながら、それでも『眠れない』と言った。
「眠たいんだけどさ、寝ても直ぐ起きるの…ワケ分からないんだけど。眠いのに…」
 俯いて、ベルフェゴールは言葉を続ける。
「眠りたい、のに」
「ベル…?」
「だって……夢でも見てないとやってけないじゃん」
 自分の服の裾を握って下を見つめ続ける彼を、スクアーロは何も言えずに見た。
 そう。こんな現実なんて直ぐにでも去ってしまいたい、と思う。クーデターに失敗して、傷ついて、何よりも大切な物が取り上げられてしまった、こんな現実なんて。
 ベルフェゴールのそんな気持ちは、自分にも良く分かった。同じだから。
 何度、あれが悪い夢だったらと思った事か。寝て起きたら全てが夢だったらと何度思っただろう。けれど、それが有り得ない事は自分が良く知っている。主が帰ってこない事も、きっとヴァリアー内の誰よりも知っている。
 だから、何も言えない。
 自分に対しても、何も言えないのだから。
「ねぇ、どうしたら眠れるのかな?王子、王子なのに全然分からない」
「……じゃあ、おまじないでもするかぁ?」
「おまじない?」
 何それ?と首を傾げるベルフェゴールと、スクアーロはしゃがみこんで視線を合わした。
 そうして不思議そうな様子の彼の前髪をかき分けて、現れた額に軽く唇を押しつけてやる。驚いたように彼の目が見開かれるのが見えたが、それは気にする事もないだろう。
 顔を放して立ち上がると、ベルフェゴールは額を押さえて、真っ直ぐにこちらを見た。
「それがおまじない?」
「気休めだけどなぁ」
「……ふぅん」
 額に手を当てたまま何やら考え込んでいたベルフェゴールだったが、くる、ときびすを返して歩き出した。眠りに行くのだろう。
 今度こそ、ぐっすりと眠れれば良いのだけれど。

(2009/05/10)


~おかえりなさい、悪夢の国から~

 魘されている鮫を前にして、王子はさてどうしようかと苦しそうな寝顔を眺めていた。
 こういう事は、今までも良くあった。一番多かったのはやっぱり、八年前のクーデターの直後くらい。誰よりも近くでボスがいなくなるのを実感していた彼だから、誰よりもボスに近かった彼だから、誰よりも苦しんで夢に魘されていて。
 ザンザスが帰ってきてからは、そういう様子が一度も見えなかったから気にもかけていなかったのに。何だかんだで、結局はまだ完全には治ってないらしい。
 大変だね、色々と思っちゃう人って。
 そう思って、そういえばスクアーロは鮫だったかと考えながら、ベルフェゴールは談話室のソファーの上で目を閉じている次席の肩を揺すった。
「スク、こんなところで寝てたら風引く」
「ん゛……あー、ベルかぁ?」
「そ。おはよ、スクアーロ……っても昼間だけどね」
 直ぐに目が覚めたスクアーロにクスクス笑って答え、寝ぼけた様子の彼の腕を軽く引っ張った。それで意図を汲む事が出来る鮫は、素直に立ち上がってベルフェゴールが腕を引くのに任せるまま、歩き出す。
 向かうのはスクアーロの自室だ。
「最近徹夜続きだったからって、あんなところで寝とくなよバカ鮫」
「眠かったんだから仕方ねぇだろ」
「人にはあーだこーだ言うヤツが何か言ってるし。ま、眠いなら勝手に寝ろよ。あ、王子も眠いから添い寝してやろっか?大サービスだぜ」
 多分、近くに誰かがいたら大丈夫だと思うのだ。一人にしなければ、ザンザスが帰ってきた今なら絶対に魘されたりしないと思う。それに、傍にいたら起こしてもやれるから。
 本当に大サービス、である。王子なのにここまでしてやろうなんて、どれだけ自分は寛大なんだろうとさえ考えるくらいだ。まぁ、それだけスクアーロが弱ってるっぽい姿を見るのが嫌なのだけど。だって、かなり調子が狂う。
 傲慢なら傲慢らしくしていれば良いのである。
 どう?と少し顔を上げてみたら、前髪の奥に隠れた映った表情に慌てて俯いた。
「…ありがとなぁ、ベル」
 上から降ってくる声は、全てお見通しだと言っているような響きを持っていて。
 付け加えると、先ほど見えた鮫の表情は、優しげな笑みで……きっと、彼の『仲間』の自分たち以外には見せないような笑みを浮かべていて。
 どこからどう見ても、傲慢なんて片鱗もない。
 けれど、傲慢でないのは先ほどと同じなのに、今回のはどこか暖かい感じがした。

(2009/05/10)


~レヴィのボス日記~

「ザンザス、お前意外と苦労してんだな」
「…は?」
 突然すぎる言葉に思わず聞き返したが、しかしそれを気にもせずにスクアーロは続けた。心の底から同情する、といった様子で。
「これからもその、何だぁ……とにかく頑張れ」
「カス鮫、何を言っているのか説明しやがれ」
「や、大したことじゃねぇんだけどよ」
「良いから言え」
「これだよ、ボス」
 答えたのはスクアーロではなく、マーモン。
 スクアーロと共に部屋に入っていたマーモンは、酷く躊躇うように一冊の本……いわゆる日記と呼ばれる物を差し出してきた。黒い表紙で、やや分厚いような作りの物。何の変哲もない普通の物だ。
 しかし何となく、それを受け取ってはいけないような気がした。見間違いだと思うのだが、一瞬、本から黒い邪気のような物が昇っていくのが見えた気がしたのである。
 が、受け取らないわけにはいかない。マーモンから本を受け取り、それを開く。
 ……そして、直ぐに後悔した。
「…いや、俺らもそれ見せようかどうしようかと思ったんだけどなぁ」
「最終的には、やっぱりボスに見せないとっていう結論になって」
「…止めた方が良かったんじゃねぇ?」
「………同感」
 二人の会話も右から左に抜ける。普段であれば有り得ないことだろうが、今はあまりの衝撃に思考が上手く働かなかったのだ。
 その日記は、観察日記と呼ぶべき物だった…ただしザンザス自身の。
 その日の自分の様子が事細かに記されるのだ。食事のこと、物を投げた回数及び種類、などと言ったことが。ただ、いくらか開いている日付もあり、それと自分の作った最近のヴァリアー内のスケジュールを照らし合わせ。
「…レヴィか」
「アイツならやりかねねぇとは思ってたけどなぁ…」
「…まぁ、良い」
 手の中にあった日記を焼き消して、呟く。
「今の任務から帰ってきた時が、アイツの最期だ」

(2009/08/02)


~愚かなる考え違い~

 助けてくれ、助けてくれと。ただそれだけを繰り返す標的に、うんざりしてしまうのはなにも自分だけではないだろう。
 全く持って不可解だ。自分たちという存在が来た、という事実を彼らは正確に把握すら出来ていないとでも言う気か。そんな馬鹿なこと。『自分たち』の事を知らない輩だろうと、自分たちという存在くらいは知っているはずだ。あるいは、予測づけていなければならないだろうに。
 必ず、いるのだ。
 どの場所にも、どの組織にも。
 後ろ暗かろうと、燦々と日を浴びていようと。
 制裁者、というものは。
 そして。
 それを知らない、ワケでも無かろうに。
「ねぇ、知ってる?」
 もしかしたらこの男は、自分の見た目を以て『助かるかも知れない』とでも考えたのかも知れない。子供だから。自分より年若く、小さいから。甘さを持っているかも知れない。そんなことでも考えたのだろうか。
 だとしたら、愚かすぎる。
 見た目と中身がそぐわない事なんて、そう滅多にないことでもあるまいし。
「僕らはね、躊躇いなんて持たないんだよ」
 何に、とは言わなかった。言わなくても分かるはずだ。
 案の定男はそれを理解したらしく、いっそう怯えた表情を浮かべたが、今度は耳障りになってきた『助けてくれ』という言葉は錘がなかった。ようやく認めたらしい。意味がないのだ、と。
 遅すぎるくらい遅い話だが。
 あぁ、本当に。
 こんなのが自分たちと同じ世界にいるという事実すら苛立たしい。
 同じステージに立たれていないだけ、まだマシという物だろうが。
 がくりと項垂れた男に、マーモンは静かに言った。
「僕を苛立たせてくれたお礼に、少しばかり酷い方法で殺してあげるよ。さぁ、君の最も恐れる事は何?それを見せながら死なせてあげる」

(2009/12/15)


~木片の思い出~ 

「ちょっ…ボス落ち着けぇ!」
「黙れ」
「うおっ…危なッ…」
 今日もなのかと、私はため息を吐きたい気持ちになった。
 私は、この部屋の扉。ちなみにここで働き出したのは一週間前。それ以前にここで働いていた扉がどうなったのかは、私がここにいるという事実によって示唆されているだろう。
 そして、一週間。
 私は延々とこの二人のケンカ……ではないな、これは……そう、一方的な暴力を見ていた。どうやらこの二人、上司と部下らしく、上司がコップやら分厚い本やら椅子やら何やらを部下に投げつけるのだ。
 部下の方も多少は抵抗して何かを投げ返していたこともあったけれど、その後直ぐに倍返しに遭うから何とも言えない。
 大変だなぁと、私は、しかし人ごとのように見ているわけにはいかないのだ。
 何故なら私は扉。しかも木製で、ちょっと大きめの扉なのである。
 つまり、余波を食らうのだ。
 今だってガラス製のグラスがぶつかった。この程度では壊れない自信はあるけれど、やっぱり痛い物は痛い。止めて欲しいが、言ったところで、言えたところで恐らくあの上司は止まりはしないだろう。
「つーかボス、今日は何でそんなに機嫌悪ぃんだぁっ!?」
「テメェの面見たら苛ついた」
「報告書は自分で出せとか言っといて…理不尽すぎんだろーがッ!」
「知るか」
 ついには銃を取り出した上司…もうこの人は暴君で良かろう…は狙いをピッタリと部下に合わせた。
 あぁ、死んだな、と私は思った。
 ただし、それは部下の人ではなく私が、である。
 案の定、部下の人はそれを紙一重でかわして、衝撃は全て私が受けることになった。
 バラバラの木片になりながら、私は思う。
 私の次の扉は、もうちょっと長く任期を務めることが出来ればいいのだが、と。

(2010/05/06)


~休暇の行方~
 
「何で休みの日だっつーのに寝坊すら出来ねぇんだろうなぁ…」
「それはまぁ、しょうがないんじゃない?」
 他人事のように欠伸交じりに応じると、じっとりとした視線が送られてきた。が、実際自分の言う通りだと思うのであえて無視。
 事の始まりは……なんて、説明するまでも無い。ヴァリアー次席が零した通りの現状だ。それでも説明が足りないというのならば、付けくわえて、お使いを任されたのだという言葉を入れてみても良いだろう。
 まぁ、問題はお使いに向かわされた先、だったのだけど。
「しかしねぇ…いくらボスに言われたからって、本当に日本まで来る?」
「それこそ仕方ねぇだろうが…しかもベルまでのりやがって」
「最終的にはルッスもだったね」
「…どうして誰も止めようとしねぇんだぁ…?」
 無茶ぶりだろ、と愚痴るスクアーロの肩を、マーモンはポンとたたいた。
「それはね、ボスに逆らっても無駄だからだよ。それに、」
「それに?」
「あそこで逆らったところで休日は無かったと思うよ?一日中ベッドの上っていう展開で。確かに寝坊は出来たかもしれないけどさ、自由が無くなってる時点で意味がないし。それってあまり望ましくないよね」
「あ゛ー…まぁ、そりゃそうか」
「だから、自分の足で歩いてる今で満足した方が良いんじゃない?」
 言いながらも随分とささやかな幸せだなぁと元凶三名に思いを馳せる。断った場合、ルッスーリアはともかくとして、ベルフェゴールは絶対にキレる。ナイフだけならスクアーロだって何とか出来るとしても、そこにザンザスが加わったら色んな意味でお終いだ。
 その際の二人の意見はきっとこれだろう。
 『鮫のくせに生意気な』
 ……他人事ながら同情しよう。
 そんな事を思っていると、その鮫がうんうんと頷きながら口を開いた。
「かもなぁ…ってか、そういやお前、何でついて来てくれてんだ?」
「僕?いや、暇だったし…一人で行かせるのもなって思っただけ」
「……ありがとなぁ」
「気まぐれだから。気にしないで」
 感動のあまり今にも涙を流しそうな鮫の頭をよしよしと撫でていると、通りがかりの誰かが不思議そうな顔をしてこちらを見て、そのまま歩き去って行った。

(2010/06/06)

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