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とりあえず、ミレイナが信じる物が100%違う。
それだけは断定できる話だと思います。
トレミーの女性メンバーの殆どで菓子作り、という話です。
05.信じること
今日は、トレミーの女性メンバーだけでお菓子作りをしよう、と言う事になった。女性だけなのでこの時間中はキッチンは男性厳禁。付け加えると、スメラギも不参加だった。彼女の場合は気が乗らないのと酒が飲みたいのの両方があるのだろう。
ともかく、そうやって菓子作りは始まったのだ。
だが……まぁ、男性厳禁ではあるが、機械厳禁ではないので。
「ハロ、レシピよろしく頼んでも良い?」
「マカサレテ!マカサレテ!」
「そう?ありがとう」
頼まれてくれるハロに微笑みながら、フェルトは器具を用意し始める。といっても、既にアニューやミレイナが殆ど用意していたが。マリーは材料を用意する係で、そちらも殆ど揃っていた。やはり人数が多いと事も速く済む。
それから後は、わいわいと話ながら生地を作り、寝かせている間に他愛もなく喋ってみたり。そうしているとあっという間に時間が経っていって、いつの間にか生地を出しても良い時間になっていた。
生地を四等分に切り分けながら、マリーが口を開く。
「どんな形が良いでしょう?普通に丸いのでも良いと思うけれど…」
「はいです!ミレイナはハートを作るです!」
「誰にあげるの?」
「パパです!そう言うグレイスさんは誰にあげるのですか?」
「私?」
唐突に問われて、少し詰まって後にポツリと。
「やっぱり、クルーのみんな、かな」
「そうですか。じゃあ、リターナーさんは誰ですか?ストラトスさんです?」
「……とりあえず」
少し顔を赤くしながら、アニューは頷いた。
何て幸せそうだろうと、フェルトは少しだけ羨ましく思った。いつか、自分もあのような顔をすることがあるのだろうか。アニューがしているのと、同じ意味で。分からなかったが、あればそれは素敵なことなのだと思う。
そんな素敵なことをしているアニューは、そのままの表情で頬を掻いた。
「その……ここに入る前に、土産期待してるって言われちゃって…」
「おぉ!ストラトスさん何か凄いです!」
「単に口説き慣れてるだけじゃないの?あのチャラ男」
「そんなことな……ってあれ?今、誰が言ったです?」
「え?」
ミレイナに言われて気付く。そういえば、チャラ男発言をした誰かの姿は、この場にはなかった。自分たち四名の声の誰の物ともその声は違っていて。強いて言うなら……
「…ハロ?」
「ナニ?ナニ?フェルト、ナニ?」
「…うぅん、何でもない」
強いて言うなら、ハロの声に似ていたような気が、しなくもないのだが。
考えすぎだと、フェルトは軽く頭を振った。そもそもハロが滑らかに喋っているのを聞いたことがないし、それに喋れたとしてもあんな内容を喋っているとは考えにくい。今だってこてんと体を傾けている様が、なんて平和なことか。
ということで、違う。
違うと信じよう。
「それじゃ、焼くですぅ!」
「みんな、焼く準備をしましょう」
ミレイナとマリーの言葉にハッと我に返ったフェルトは、型抜きを終えて形を作っていた焼いていないクッキーを順々に並べていった。
そう、さっきのは考えすぎだ。ハロは今まで通りのハロのまま、それで良いではないか。
…それでも少し不安だった。
「…ねぇ、ハロ。ハロにとってライルってどんな人?」
「ガンバリヤ!ガンバリヤ!」
「……そう。そう、よね」
良かった。ちゃんとハロはハロのままだった。
安堵して息を吐いて、ふっと、フェルトはオーブンの方を見て……固まった。
何か、設定温度が嫌に高い。
「ちょっ…オーブン止めて!温度が高すぎる!」
「本当!誰が設定したの!?」
「ミレイナですぅ。あと、放ってても大丈夫ですよ」
グッと右の親指を立てて、ミレイナは力強く言い放った。
「信じる心が力になるので、信じていたらクッキーは焦げないのですぅ!」
あぁ、成る程。信じれば焦げないのか。
信じれば……って。
「ミレイナ、そんなワケないから早くオーブン止めて!」
「えぇぇ?グレイスさん疑うですか?」
「そう言う問題じゃないの!」
……結局、クッキーはどうにか無事でした。
ミレイナの信じる物は何か違って、フェルトが信じる事がとても切実な話です。