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気がつくと、また、違う場所にいた。
流石に二度目なので狼狽えることなく、周りに何があるか、誰がいるかを確認する。
まず、いるのはハレルヤ、ミレイナ、キュリオス、そして…壊れているアリオス。
何があるかと言えば、答えは『何もない』だった。
「ここは……どこ?」
「知らねぇってか…何でまた場所が変わってんだ」
「ミレイナも驚きです…」
「何か……都、とは違うよね」
あの雑多とした都の中に、こんな広すぎる、真っ白な空間があるはずもない。人工が人工なので、建物をとにかく建てなければならないだろうから、こんな地域があったら誰も放っておかないだろう。
となると、つまり。
ここは都ではない…ということだろうか。
果たしてそれがあり得るだろうかと、アレルヤは首を傾げる思いだった。が、この場にいること自体が望んでのことではない以上、どこにどう飛ばされてもおかしくはないとも思った。こうなってしまう原理が、そもそも分からないのである。
「……とりあえず歩いてみる?」
「って、どこにだよ」
「……どこか」
ハレルヤに問われても、こうとしか返せなかった。
本当に、ここがどこかが分からない。ハレルヤにも分からないようで、ではどこなのかと訊かれても分かるわけもない。事象に関しては自分の方が専門家もしれないが、存在などに関しては彼の方が上なのだ。
しかし……となると、原因究明の方が大切なのだろうか。
口元に手をやって考え、ふっとアレルヤは顔を上げた。
そして口を開く前に、ミレイナがシュッと手を挙げた。
「ここはやっぱり原因解明が必要だと思うのです!」
「原因?…って何だよ、何か手がかりあんのか?」
「無いです!」
「無いのかよ」
「無いのです!ですから、皆で飛ぶ前の事を思い出してみるです」
ニコリと笑みさえ浮かべるミレイナに、凄いなと思いながらアレルヤは再び思考の海へと沈んだ。何か、飛ぶ前に何か無かっただろうか。
と、キュリオスがアリオスを抱きしめながら、怖ず怖ずと手を挙げた。
「あの……その時、何か、鏡が熱くなった気がするんだけど」
「鏡…ってヴェーダが?というか…所有してるの?」
「…ちょっと収納して持ってるよ。だから…多分合ってると思う、よ」
自信なさげなキュリオスだったが、恐らくその感覚は信じるに値するだろう。何せ、彼も人形の一員なのである。彼らは、強いのだ。
だが、ヴェーダが関わっている、とは。
あの鏡の、彼女の力は何だったかと考えれば二つしかない。全てを知ることと、時間を司ることくらいの物だ。
それが一体、どうして違う場所に飛ばされるような事になるのか。
全く、ワケが分からない。
同じように持ったのか、ハレルヤも思案するような表情になっていた。
「ヴェーダがねぇ…」
「たっ…多分ってことだから、間違ってるかも…」
「いや、今はそれしか手がかり無いしな…それを信じるしかねぇ」
「それに君は人形の一員なんだから、もう少し自信を持っても良いんだよ?」
そう、人形の一員なのだから。
その『人形の一員』が、ヴェーダに関する事を間違うわけがないのだから。