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出会ってわりと直ぐのころ、みたいな。ちょっと違うか。ミッション始まってるし。
とりあえず、まだ完全にアレルヤと仲良くなってない刹那、みたいな感じで。




13.散歩道



 たまに、刹那は住居周辺を散策することがある。それは、筋トレを終えたり任務がなかったり、眠る気がなかったりしたときしか行わない、少し希有な行動なのだが。
 しかし、今回の散策は少し違う。
 今、刹那は人を迎えに行くところだった。
 ティエリアは、こちらに来ることが滅多にないから。なのに一人で勝手にふらりと外に出てしまうなど、彼の言葉を借りるならば『万死』である。迷子になることはない……とは思うのだが、変なところに入り込んだらそれも言い切ることは出来そうにない。
 つまり、刹那は一人で買い物に出てしまったティエリアを迎えに行こうとしているのだった。全ては家で待っていると行ったあの兄貴分のせいで。
 迎えに行ってやれとか言うなら、自分が行けばいいのに。
 家から出てから今まで何度も思ったことだが、今もまだ思う。夕食の準備だか何だか知らないが、生憎と料理に関しては微妙な差であれこちらの方が腕は上なのだ。夕食がどうのこうのと言うのなら、そこは自分が残るのが筋……いや、違うか。
 正確には、隣でのんびりと周りを見ながら歩いている彼が残るべきだった。
 どうして刹那と一緒にアレルヤが歩いているかと言えば、それは彼にやることがなかったからである。あと、スーパーの場所とかを確認しておきたかったらしい。
 あぁ、とその時彼の言葉を聞きながら思ったものだ。また何度か、しかも今度は一人でこちらの来るつもりなのか、と。彼に対しては気に入らないなどという感情は覚えていないから良いとしても、そうしょっちゅう来られては困るかもしれない。まぁ、しょっちゅう来れるほど余裕などあるとは思えないのだが。
 というか、である。どうして今回は自分の家にマイスター全員勢揃い、なのか。どうやら全員がロックオンに連れてこられたようだが。
 そんな疑問を考えながら、体が覚えているとおりに曲がり角を右に曲がると、慌てて後を追いかけてくる長身の影……何か少し面白い。小動物を連れてるみたいな感じが。
 小動物…というのも変かと首を傾げ、どうでも良いかと考えるのを止める。
 そんな時、タイミング良くアレルヤが口を開いた。
「……ねぇ、刹那」
「何だ」
「歩き慣れてるみたいだけど、ここって良く通るの?」
「…まぁな」
 このルートは、自分が散策を行うときのいつもの道だった。近隣に絞って歩くので、自然と『どこを通るか』なんて物は決まっていくのである。
 だから、この道ならば恐らくは通行人や野良の動物さえいなければ、目をつぶっても目隠しをしてでも歩ける。体が既に障害物の位置、曲がり角から曲がり角への距離、曲がるときの角度まで覚えきっているのだ。
 一回の散策で三、四回くらい往復するから、多分そのせいだと思うが。
 何故それ程往復するのかと言えば、暇だから、である。
 あくまで、散策は暇つぶしなのだ。
「この道って良いね…木が両側に並んでる」
「一応、公園の中の道だからな」
 公園というのは人々が集まる場で、のびのびとするために来る場所だと把握している。だから、あまり殺風景なのは歓迎できる事ではないのだろう。
「あの木って紅葉?あれはイチョウかなぁ?」
「俺には分からないが…間違ってはいないと思う」
「そっか…じゃあ、秋にもこの辺りに来ないと」
「…?」
「紅葉観賞、だよ」
 ニコリと笑って言って、その時にはお弁当とか持ってこようか、とアレルヤは続けた。どうやら彼の中では自分も一緒に行くことになっているらしい。
 紅葉を観賞をして何が楽しいのだろうと思うのだが、不思議と断る気にはなれなくてこくりと頷くと、彼の笑みがさらに深まった。……本当に不思議なのだが、その笑みを見てどこか満足している自分がいる、気がする。
「その時にはマイスター全員で来れるといいね」
「ロックオンが張り切りそうだな」
「ふふっ…確かにね。スメラギさんも言ったら張り切りそうだけど……そうしたら紅葉観賞じゃなくって、単なる酒盛りになっちゃうから何ともね…楽しそうだけど」
「俺は絶対に嫌だ」
 スメラギの酒盛りには何度か強制的に参加させられている。未成年だからと、酒は飲めないからと言っても全く聞く耳を持たれなかったのである。酔っぱらいは強いのだと、その時に実感を伴って刹那は理解することになった。
 だから、紅葉観賞をするのだとしたら、せめてそんな事態にだけはしたくなかった。悪夢を何度も繰り返すのはごめんである。
「…というか」
「何?」
「ちゃんとこの道を覚えているか?」
「え?」
「それが目的だろう」
「……話すのが楽しくて忘れてた…」






アレルヤはそういう子だと思う。一つに集中してたらもう一つに集中できない、みたいな。
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