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あ、と思ったときには体を浮遊感が包んでいた。
そして次の瞬間、バシャンッと音いう音と冷たい感覚を知った。
どうやら、どこか水場に落ちたらしい。
突然何なんだと思い、多分何らかの転移系の能力が発動されたのだと推測する。だからといって、ルイスの瞬間移動ではないだろう。彼女にこんなことをする動機はないし、何より自分たちの様子を彼女は知らないはずだ。
となれば別の誰か、何者かの力による者なのだと思い至るのは必然であり。
では一体何者なのか、どのような能力なのかと考える必要性が表れ。
……そして、それよりも先にやるべき事がある。
何かと問われれば簡単に答えることが出来る。
ここがどこかを把握すること、だ。
まず…落ちている場所。池などではなく風呂。ちなみに一般家庭に出回っているようなサイズの物。ここは風呂場らしい。
それと風呂場の内装を見る限りでは、どうやらここが一般人の民家あるいは宿であるのだと分かった。物好きな富豪の家であったとしたら、もう少しどこかがに金がかかっているはずだからその点から把握。
ていうか、どうして今この時間にこれだけ水……ではなく湯が風呂に溜まっているのだろうか。水ならまだ放っておいたのだろうと分かるのだが、ここでどうして湯。まさかとは思うが、こんな殆ど真昼の時間帯に、風呂にでも入ろうという話なのだろうか。
まぁ、そういう不規則な生活をする相手もいるだろうと納得することにして、ならば……と、ふっと思い至ることがあった。
湯が温かい。
その湯は汚れていない。
ということは今から入ると言うこと。
…ということは、ここの住人がこちらに来るということで。
「……の音……………が…」
「じゃ……………の…………」
案の定。外から聞こえてくる話し声に、ロックオンはゆっくりと銃を手に取る。中には実弾と、白い弾。白い方は使うこともないだろうが、念のために入れたままにしておいたのだ。そして、今回も入れたままにしておく。
警戒を募らせる中、ドアは開き。
そして。
「……ニール?」
「……ライル?」
そこにいたのは、双子の弟だった。
隣には知らない顔もいたが、それはまた後で気にすることにしよう。
それよりも……これは、行幸だ。
何せ、自分は『思い出して』いたのだから。
だから、弟に会いたかった。
「兄さん、どうしてこんな所に……ってか風呂場…」
「ライル」
呆れた様子のライルに、風呂から出たロックオン……否、今は『ニール』として。
頭を下げた。
「に……兄さん?」
「悪い、ライル…思い出したから」
「え……」
どこか焦った様子の、驚いた様子の弟の声に顔を上げ、静かにニールは言った。
「全部思い出した。あの日のこと、全部」