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ハロは最強です。
それをふまえて読んでください…っという感じの話になりました。
06.黒ぶちメガネ
チッと舌打ちをして、ティエリアは手の中にある割れた眼鏡を見た。
不覚だった。だってまさか、いつもは何もない通路上にハロが転がっているとは思わないではないか。重力下であったことも手伝って、曲がり角直ぐにいたハロを踏みつけて顔面から転けてしまったのである。
結果がこれ。この眼鏡はもう使えないだろう。
しくじったと後悔する気持ちは強く、しかも、それを助長する事態まで広がっていた。
「……ティエリア、大丈夫?」
「……とりあえずは」
目の前で心配そうにしているアレルヤである。
これこそが最大の後悔だろうか。転けてしまった現場を、偶然アレルヤに見られてしまったのである。全く、どうしてこんなタイミング良くこの場所を通りかかってくれるのだろうか。プトレマイオスⅡは結構な広さがあり、出会う確率はそこそこの低さを示しているというのに。
不機嫌ながらもアレルヤの指しだした手を取り立ち上がったティエリアは、諸悪の根源である赤いハロを軽く蹴った。このくらいの報復は許されるだろう。というか最近は沙慈の傍にしかいない彼(…?)がどうしてここにいるのか。
「うわぁ……眼鏡が大惨事だね…あ、鼻!鼻血は大丈夫!?」
「問題ないが…少し痛い」
それはもう盛大に打ち付けたので。
ヒリヒリとする鼻の頭に今更ながら涙目になりつつ、割れた眼鏡をアレルヤに押しつけた。こんな物を持っている気にもなれない。
大人しく眼鏡を受け取って、目の前の青年は首をかしげた。
「どうするの?眼鏡、もうこれは使うの無理でしょう…?」
「このままでも問題はないがな」
「眼鏡、度が入っていないんだっけね…でもさ、ちょっと違和感ない?」
「多少はな」
いつも着用している物が無くなるのだ、違和感がないわけがない。
はぁ、と息を吐いているとすいと差し出される二つのレンズが付いた物体。
壊れていない眼鏡だった。
でも何でか黒ぶち。
「…これは?」
「あ、あのね…」
訝しく目を細めると、オドオドとした様子でアレルヤは答えた。
「代わりにどうかなぁって…」
ついと銀と金の瞳が下を向く。
「赤ハロが」
「ゴメンネ!ゴメンネ!」
元気よく耳を開閉して目を点滅させて、可愛らしく体を傾ける赤ハロ。
一見すると本当に申し訳ないと思って、その埋め合わせに新しい眼鏡を取り出したかのように見える。どこから取り出したかは知らないが、一見すれば。
だが、その取り出された眼鏡が黒ぶちというのに作為的な物を感じるのは、果たして自分だけなのだろうか。いや、絶対にそれはないだろう。現にいつも笑っているようなハロの表情が、今も笑顔だが『してやったり』という笑顔に見える。
などということも違和感が無くなることは関係なく。
「……仕方ないか」
ため息を付いて、とりあえず着用。
「どうだ?」
「……えっと、これ見て」
目の前にずいと突き出されたのは鏡。コンパクトサイズで、アレルヤがいつも持ち歩いているわけではなさそうだから、恐らくこれも赤ハロの所有物だろう……だから、一体どこから取り出して。
そんな疑問はつきないのだが、それをも忘れさせる光景が鏡の中にあった。
鏡に映る自分の顔を見て、ティエリアは無言で眼鏡を外してグシャリと潰した。手が痛かったが、そんなこともお構いなしにである。
顔を逸らしつつ、申し訳なさそうにアレルヤが口を開いた。
「まさかそこまで似合わないとは思わなかったよ……」
「僕もだ。相性というのはやはりある物なのか…」
黒ぶち眼鏡とティエリアの相性は最悪だった。
日頃の眼鏡と思い切り違った様子だったからか、それは尚更強く思えることだった。
「…早めに代えの眼鏡を手配するか」
「うん、それが良いかもね……」
異論など出るはずもなく、ティエリアはそして。
とりあえずもう一度、今度は力一杯赤ハロを蹴り飛ばしておいた。
隣にいたアレルヤは、苦笑しながらも止めようとはしなかった。
何故ここで赤ハロだったかは書いた本人にも不明です。
でもティエリアに黒縁眼鏡は似合わない気がする…。