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もしもソーマが方向オンチだったら…なんて想像の末の作品です。
どうなんだろう…でも、それってどうなんだろうか…。
18.方向オンチ
息を吸って、吐いて。
少し落ち着いたところで、今の状況を確認する。
この場所は?……人革連の軍基地だ。
自分は誰か?……超兵一号、ソーマ・ピーリス…と、これは関係ないか。
周りに人は?……誰もいない。
目的地の方向は?……分からない。
では、今いる所は?……分からない。
結論。
ソーマは、見事に迷子になっていた。
いや、違うと、その結論が出た瞬間に慌てて首を振った。違う、そうではなくて、ただ単に曲がる道を間違えて、知らない場所に出てしまっただけなのだ。そこから、恐らくあちらだろうと目的地の場所の見当を付けながら歩いていたら、いつの間にか全く知らない場所に出てしまっただけなのだ。
だからこれは迷子ではない。
れっきとした……何だろう。
何だか何かが違う気がしたが、それでもソーマには自分が『迷子』であることを認めることは出来なかった。
おかしいと、歩きながら腕を組んで悩み込む。
確か、自分は司令室に呼ばれたからそちらに行こうとしていただけ、のはずだ。道のりはちゃんと確認して、その上で部屋から出たはずなのである。
それが、どうしてこんな。
「このような姿を晒すことになるとは……」
唇をかみながら、ソーマは悔しさに呻く。
「超兵として、何という失態だ…」
幸いにして周りには誰もいないが、それはあまり関係がなかった。
ともかく、自分は迷子になってしまった。その事実こそ全てであり、事前に十回くらいは確認したのに迷ってしまった、自分に対する情けなさだけが本物だ。
ちなみに何故、十回も確認をしたのか。
理由は簡単だ。……同じ過ちを繰り返さないためである。
今度は爪をかみながら、ソーマはどこまで歩いても変わり映えしないように見える通路を歩いた。もっと色々と付けてくれたら、いっそ標識でも取り付けてくれたら楽なのに、と少しばかり恨みがましく思いながら。
…ソーマが迷子になったのは、何もこれが始めてではない。
最初、迷ったのはこの場所にまだ慣れていないからだと思った。実際に軍基地内部の地図も頭の中にはたたき込まれていなかったから、それは間違いではないのだが、問題はその後なのである。
どうしても、一人だと目的地に着けないのだ。
食事を取るときは、放っておくと食事を簡単に抜きかねない自分を心配する、良い上官であろうセルゲイが迎えに来てくれたりするから良いのだ。命令を受け取るときも、だいたいは彼からであり、そういえば殆ど一緒に行動することが多い。
が、一人になるとどうしてだか知らないが…着けない。
そんなバカなと思う。セルゲイと歩きながら脳内にたたき込んだ地図を思い出し、道を重ね合わせてその時は問題ないと思うのに、いざ一人で行こうとすると……どうしても着けなかったりする。
まるで手品のようだ。
だが、手品ではないのは…セルゲイと一緒なら行ける事からも違うと分かる。
ということはつまり。
「私に問題があるのか…いや、だから絶対に認めない…認めるものか…っ」
「…少尉?」
と、ふいに知った声が降ってきて、ソーマは慌てて顔を上げた。
「ミン中尉…」
思わぬ人物の登場に驚いていると彼は、ここから先には倉庫しか有りませんよ?と首を傾げた。どうしてそんな場所に自分が来たのかと、不思議に思っているらしい。
「どうかされたんですか?」
「いえ……その、食堂はどちらかと」
「あぁ」
その言葉に、合点がいったというようにミンは頷いた。
「また迷子ですか?」
「…っち……違います!私は決してそんな…っ」
「食堂なら、丁度私も行こうと思っていたので…一緒に行きましょうか」
クスリと笑う彼にソーマは一瞬だけ黙って、直ぐに了承を伝えた。
こうして、ソーマは彼と食堂に行くことになったのだが…
「中尉、私は決して迷子になっていたんではありません」
「そうですか?けれど、軍部では少尉が方向オンチだと実に有名なんですが」
「……!?…とっ…とにかく違います!」
…道中、ずっと迷子に関して否定の言葉を零していた。
ミン中尉を出せたので、私的には大満足です。