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番外編・8
「そういえば、君って首飾りになれるんだってね」
「はい。持ち運びに便利なように、という事だそうです」
「いつでも一緒にいれるように?」
「えぇ」
かつて、お父様に聞いたら答えてくれた言葉を思い出して、私は静かに微笑みを浮かべた。あの時あの言葉を聞いた時、本当に嬉しかったのを覚えている。お父様の穏やかな笑みまでも覚えているほどだ。
「でも……首飾りって、誘拐されやすそうだね」
「問題ありません。そう言う時は直ぐに戻って撃退します」
「撃退?ってどうやって?」
「そうですね…」
私は少し悩んだ。いくつか方法の候補は出ているけれど、そのどれを言うべきだろうと悩んだのだ。全部言うことはないだろうし、『王』だって一例を求めているに過ぎないだろう。あまり多く言っても困らせるだけだ。
そうやって考えて、一番無難な物を言うことにする。
私は『王』を見上げ、口を開いた。
「銃を出現させて銃口を眉間に向けます」
「……そっか」
「そうすれば絶対に大丈夫です」
誰だって自分の命は惜しいだろう。私だって、何の理由もなく壊されてしまうのは遠慮したいと思う。私でさえ、こんなことを思っているのだから、血の通っている普通の存在は余計に、そういうことを思っているに違いない。
ただし、彼らが思う理由は自分が死にたくないからだろう。
私の場合は少し、違う。
死んでいてはお父様を守ることが出来ないから。
死、というのには色々な種類があると、生まれてから今までの短い間で知った。肉体の死だけでなく、精神の死もあるのだ、と。精神の死は定義が難しい事も分かったが……分かったから、私は自分の定義を作り出した。
精神の死とはつまり、自分が自分でなくなることだ。
自分を失い、自分を奪われ、自分の自由を消されることだ、と。
「でも……あれ?出現って?」
「私だけでなくお父様でさえ、これの原理は良く分からないのですが……私は何もないところから武器を取り出すことが出来るんです」
首をかしげた『王』に私は答える。これは本当だ。
私でも信じられないくらいの事なのだが、お父様にも知らない事というのはあるらしい。
それを知ったときの驚愕といったら無かったが、お父様は苦笑を浮かべて「私も人の子だと言うことだよ」と言っていて。完全にその言葉を理解したわけではないが、何となくの感情は知った。
「…変なことなのでしょうか」
「そんなことはないと思うよ?凄い事なんじゃないかな、そういうのが出来るって」
「そう…でしょうか」
「うん、多分ね」
笑みを浮かべた『王』にそう言われると、何だか何でも彼の言うとおりであるような気がしてくるから不思議な話だ。何故かは分からないが、『王』にはそういう雰囲気にさえる何かがあるのだろう。
そんな『王』が嫌いではないと、私は思う。
客人である彼と別れなければならないのが残念に思うほどには、嫌いではない。
別れても、いつかまた会えるのだろうか。
私はふと、思った。