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この親子の話はどんな形であれ書いてみたいと思ってました。
というか、このお題でこういう系の話しか浮かばなかったって言う。
037:溝
どうやら、周りから見ると自分と養父の仲は良い物になっているらしい。
自分で自覚がなかったから、それをあの鮫が似合わないくらい穏やかな笑みを浮かべてそれをこちらに告げたとき、果たしてどのような反応をしたらいいのかと迷った。いや、迷うと言うよりは戸惑うという方が正しかったかもしれない。
とりあえず、その時はそんなワケの分からない感情になるきっかけを作り出したスクアーロを殴って、その話を終わりにしたのだった。
……そして、今。
その話をして以来初めて、ザンザスはボンゴレ九代目の部屋を訪れていた。
他愛のない世間話をしに来たわけでは、無い。そんなことをするためにわざわざ、こちらに来るほど親しくなったつもりもなければ、意味もなく意味があろうと馴れ合おうとも思わない。用件は単なる重要書類の受け渡しだ。
だというのに、目の前にいる老人の嬉しそうな顔と来たら……本気で分からない。そんな用件でも、自分が来たら嬉しいとでも言い出すつもりか。昔クーデターを起こした相手を喜んで出迎えるなど、寛容などではなくいっそ不用心の域にはいるのでは無いだろうか。
「用件は終わったな?俺は帰る」
「あぁ……すまないね、このくらいのことで呼び出してしまって」
立ち上がり見下ろす顔が、今度は残念そうな色を帯びる。
……だから、ワケが分からないと言うに。
そして、結局分からないことは分からないままで放っておくことにして、ザンザスは部屋のドアへと足を運ぶ。
「…私たちは、少しは分かり合えるようになっただろうか」
ドアノブに手をかけたときに、不意に後ろから聞こえる呟きのような言葉。
響きはそれが独り言であることを示しており、返答の義務はないだろうと、相手も別にそれを求めてはいないだろうことは理解できた。
そんな質問だったが、しかし、何の気まぐれか…気付けばザンザスは口を開いていた。
「周りから見ると、俺たちの関係は良好になったらしいがな」
だが自分は知らない、と言外に返して、そのままドアを開いて出て閉める。
その後、直ぐにはドアから離れずに、額に手をやって息を吐いた。
何だか、かなり似合わないことを言った気がする。
十年後はそこそこ仲良しになってたら良い。と思いますが、実際はどうだろうか。