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教育実習…?なんて思ったんですけど、良く考えたら一人いますよね、こういうのに当てはまりそうな人。
07.教育実習
「でね、ここが食堂」
「…はぁ」
「メニュー内だったら好きなものを好きなだけ食べられるから、重宝できると思うよ」
そう言って、隣に立っていたアレルヤはニコリと微笑んだ。
沙慈はそれに曖昧に笑って返すしか出来ない。何せ、たとえどれだけ穏やかな笑みを浮かべていようと彼はCBなのだ。それでも、彼がイアンの様に悪い人間ではないのだろうと、そういう事が分かるからどうしようもなく反応が難しい。
どうしようと、悶々と悩んでいる間も、そんなことは知りもしないだろう彼が、中に入ろうか、と促してきた。丁度お昼時だから、昼も案内のついでに取ってしまおうと言うことだろう。
断る理由はない。沙慈は同意を示した。
そうして入った中は、思ったよりも広い。もっともっとこじんまりした場所かと思ったら大間違いだった。団らんの場所としても使えそうな気がする。
そして、そこに先客がいた。
彼はこちらに気付いた様子で顔を上げ、隣のアレルヤは軽く手を上げた。
「やぁ、刹那。一人かい?」
「まぁな。ダブルオーの所にいたらいつの間にか昼時だった」
「だからそのまま来たって事?あ、隣良い?」
「構わない」
「ありがとう」
「…別に」
二人の親しげなやり取りを眺めながら、沙慈が思うのは意外性くらいのものだった。
だって、刹那がここまでちゃんとしたコミュニケーションを取れるとは。昔、隣に住んでいた時には全く思いも寄らなかったことである。
こんな事実を知るには恐らく、このCBという組織に関わらなければならなかったのであろうから、ここでも微妙な気分だ。だから、自分はCBなんて好いても何でもないというのに。
けれども、それはまた後の話だ。
沙慈は促されるままに刹那とアレルヤの向かいに座った。昼食を、という話ではあったがどうやら、先に世間話をするらしい。
こういうのは、どこでも同じなのだろう。
「どうして沙慈・クロスロードと?」
「ほら、沙慈君って来てまだ間もないから案内しとかないと迷子になるよ」
「成る程な」
トレミーというのは、それほど複雑な通路の敷き方は行われていないように、沙慈は思っていた。けれど、部屋の数が結構多いのだ。だから、各部屋の用途を覚えていなければならないと、こういうわけなのである。
いつもは赤ハロがいるとはいえ、自分でも覚えておきたかったから彼からの申し出は、実に願ったりかなったりの物であったと言えるだろう。
「ブリッジは案内したか?」
「真っ先にね。あそこは大切だから」
大切、というのは集合などに関してだろうか。あの場所は、そういえばよくよく覚えておくようにといわれた気がするのだが…そういうことらしい。
「昼からは俺も付いても構わないが」
「え?そんな、良いよそんなの…刹那、ダブルオーと一秒でも一緒にいたくないかい?」
「大丈夫だ、ダブルオーだって分かってくれる」
「そう?」
「ダブルオーはガンダムだからな」
「…なら、良いけど」
沙慈から見れば全くワケの分からない説得に納得したらしいアレルヤは頷き、それからこちらに視線を向けた。構わないかと訊いているらしい。
問題はなかったので、沙慈もこくりと頷いた。
しかし、それでも疑問に思ったことは疑問のまま残る。
思わず、先ほどの刹那の言葉を思い出して首を傾げた。
「ダブルオーはガンダムだからって、それが何の理由になるの?」
「ガンダムだからだ」
「え…いや、それって理由?」
「十分な理由だろう」
何を言っているんだ、と言わんばかりの表情を向けられて、沙慈は救いを求めるようにアレルヤの方へと視線を向けた。
だが、そこにあったのは救いではなくて、困ったような笑みだけだった。つまり、助けてはくれないらしい。助け方も分からないだろうとは思うが。
そんな、と多少しおれつつ、それでアレルヤは納得していたのだし、こちらでも納得できるための材料を探そうと頑張ってみることにする沙慈だった。
だって、刹那は刹那だもの。
新米の沙慈は戸惑ってると良い、色々と。