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書きたかったのです、この組み合わせ。
絶対に書かないとっていう組み合わせって割とありますね…。
043:泣くことすら
「僕は、恐らく泣くことが出来ません」
「はい」
「泣けないのではないとは思うのですが……残念ながら、泣き方が思いつかないのです」
それは果たして残念なことなのか。全くと言っていいほど分からないが、少なくとも、それが『人間』としては異端であることは分かっていた。
だからといって、それをどうこうしようとは思わない。むしろ、泣けないことを感謝するくらいの勢いだ。誰に対しての感謝なのかは、自分でも全く分からない。それでも、感謝くらいはしてやっても良いかもしれないとは、思う。
泣くという事は、感情を外へと流し出すことだ。
そしてそれは、今の自分が望むことではない。
「『人間』と同じ事が出来ない人間なのですよ、僕は」
と、一度言葉を切って、骸はクロームを見た。
彼女は、真っ直ぐにただ、こちらを見ていた。それ以外を忘れたかのように、眩しいほどに真っ直ぐと、ただそれだけを。
それに、骸は目を細めた。『もう一人の自分』といえども、彼女はまだ『人間』としては正常だ。マフィアの、裏の世界において、それが命取りにならなければいいのだけどと、ほんの少し心配ではあるが。
「……そんな僕でも、クローム…僕に付いてくると言うのですか?」
「はい」
当然、と言わんばかりに頷くクロームに、本当に?と重ねて問うと、今度は「はい」ではなく首肯が返ってきた。
「何故です?」
「それは……骸様が、骸様だから」
やはり真っ直ぐな光を宿している目で、クロームは言う。
「骸様なら……私は、ついて行きます」
「化け物のような僕でも?」
「骸様なら、怖くないです」
「…やれやれ」
何と一途なことだろうか。
それは羨ましい一途さだったが、同時に心地よい一途さだった。
この話では、クロームは骸に対して真っ直ぐで、骸はそんなクロームに救われてる感じですね。