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人より多くを知るというのは、つまりは人より辛い目に遭うと言うことだ。
こればかりはどうしようもないと、諦め半分ではあるけれど。
それでも、たまには思ってしまう。
どうしてと。
どうして、こんな力を与えたのですか?
「ねぇ、デュナメス、やっぱりヴァーチェの傍にいたほうが」
「だから、アイツには一人の時間が必要なんだよ」
「えぇぇ?僕には全くそうは思えないけど」
首を傾げながらその実、セラヴィーには全てが分かっていた。
自分がヴァーチェが困るような性格であるのはぼちぼちと知っているし。そうなれば自然とどういうことなのかくらいは想像できる。
だからといって、何をどうと変える気もない。
この性格全てをひっくるめてこその『自分』だ。
しかし…それでも何となく寂しい気もするのだけど。
「そりゃ、ここまでハッキリと避けられちゃったらなぁ…」
「寂しいのか?自業自得だろ」
「だって仕方ないじゃないか」
自業自得、というのにはどうしても言い返せないので、軽く頬を膨らませるだけに反対意思の表示は止め、セラヴィーはデュナメスを見た。
「何と言っても、僕らは他に換えのきかない対応型なんだからね?たとえ僕の性格に難があったのだとしても」
「…あぁ、難があるのは認めるのか」
「事実だからね。ともかく、そうであってもやっぱり悲しい物は悲しいのであって」
「凄く自分勝手な理屈じゃないか?」
「気のせいだよ」
さらっと言って、セラヴィーはヴァーチェがいるであろう方向を伺い見た。ケルディムほど正確にはつかめないが、気配は何となく伝わってくるし、ならば多分大丈夫だろうきっと。まさか、昔のように突然行方をくらます…つまり家出なんてしでかさないはずだ。あの時と違って今は父はおらず、彼を連れ戻す事が出来る存在はいない。
「そういえばデュナメス、君たち人型四人って全員一緒に行動してたの?」
「ん?あぁ、そういやそうだな…何でだかイマイチ分からないけどな」
「運命?」
「それはないだろ」
呆れたようにみんなの兄貴分は嘆息した。
「そんなのがあったら、オレら全員が離れることもなかっただろうし」
「さぁ、それはどうだろうね?運命のせいで、僕らは会えなかったのかもしれないんだよ?その可能性を忘れちゃいけない」
「…お前、何か知ってるのか?」
訝しげな視線を向ける彼に、セラヴィーはにこりと微笑んだ。そこから彼が何を読み取るかは、分からないけれど。
「さぁ?僕にだって知らないことはあるし、知りたいことや知っていることもあるけれどね、それを知っているかは秘密って事でどうかな?知らない方が楽しいこともあるでしょう?」