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このお題も残り四つですね…頑張れ。
ところでパラノイアって、依存的な意味で良いんでしょうか?
16.パラノイア
「刹那・F・セイエイ」
ティエリアは腕を組んで呼びかけた相手を見下ろした。
見下ろされた相手はチラリとこちらを見ただけで直ぐに視線を手元に戻した。こちらの事など興味がないといわんばかりである。
…苛つく。ここまで綺麗に無視されるのは本当に苛つく。
だから、その苛立ちのままに刹那の手元にあった物を、手に持っていた分厚い本で叩きつぶした。べき、という堅い物が壊れ折れる音がした。それを聞きながらも清々するなどと思っている自分は間違っていない。
当然、肩を振るわせる刹那を気にするつもりはない。
全てはこちらを無視した彼に対する正当なる制裁なのである。
「…相変わらず凄いね、ティエリア」
「これくらい当たり前だ」
「いや…僕には無理なんだけど」
「それは君だからだろう」
こんな事をするアレルヤなんて想像できない。やったとしたら、きっとそれは酷く怒っているときくらいだろう。付け加えて、そのような事態は滅多に起こり得ないに違いなかった。そういう相手だ。
そんな彼なので、刹那の横に座っていた彼は刹那の背を励ますようにポンポンと叩きつつ、どうにも困った笑みを浮かべている。放っておけない、ということだろう。
当たり前の報いなのだから放っておけばいいのに、相変わらず甘いことだ。
「刹那、またイアンさんに作ってもらえば良いじゃないか」
「だが…プラモデルにするのは中々骨が折れると言っていた」
「それに頼み込んだんだよね」
「そこまでやるのか、君は」
何とも呆れる話だ。本人が酷く大まじめである事が余計に呆れを強くしている。
そこまでガンダムに入れ込んでいる彼のことは、果たしてどう評価するべきなのだろうか。ガンダムマイスターとしてはまぁ、ガンダムに対する愛情があった方が良いとは思うのだが。だが、少し粋すぎているような気もする。
大切にするのは良いが、大切にしすぎるのは問題だ。
その感情のせいでミッションに支障が出る可能性がある。
人間という存在は強い感情によって、時に有り得ない行動を起こすことがある。それは自分たちにとってはあまり好ましい事態ではない。
「…いい加減にガンダム離れをしたらどうだ」
「断る」
「うわぁ…普通に言い切っちゃったね、刹那」
「当然だ」
「当然?これのどこが当然なんだ?」
これが当然であってたまるものか。
苛立ちを押さえることも出来ずに睨め付けると、しかし、やはりこちらなど見る気も無いらしい刹那は、残骸となったパーツを目にして涙を流していた。人間はこんな事でも泣けるのかと、ほんの少しだけ人間に対する評価を変えた。
こんな評価の変更は必要ないと思うんだが。
まぁ、出来てしまったので仕方がないということで。
眉間を揉みほぐしながら息を吐き、壊れたパーツを瞬間接着剤で必死で修理しようとしている最年少マイスターを見る。隣では、一緒にアレルヤも手伝っていた。やはり甘い。こう言うときは普通に無視しても誰も怒らないだろうに。
というか。
「それで修理した部品で組み立ては出来るのか?」
「出来る。というか、やる」
「こういう時の刹那の執念は凄いんだよ」
アレルヤも隣から口を挟んだ。
「この前ハロがついつい部品をひいてしまったときも、ちゃんと直して組み上げていたからね。壊れたなんて分からないくらい綺麗に出来てたよ」
「傷は塗装によってはごまかせる」
「…ね?」
だから大丈夫だと言いたいらしい。
ニコリと笑んで言うアレルヤに……ティエリアは、何も言い返す気が無くなった。何というか、何を言っても無駄だと思ったのである。
にしても以前からやってもらっていたのか、プラモデル的加工。
イアンにも中々苦労させていると思いながら、とりあえずティエリアはそこまで評価されている刹那の技術という物を見学することにした。
「…このパーツはどうするんだ」
「これはこちらと付ける」
「刹那は一目で分かるんだよ、こういうの」
…それもガンダムに対する愛故か。
説明書が無くても刹那ならガンプラを組み立てることが出来る気がする。