式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
というわけで、「界風という街」は終了。次からは別の話に移行します。
けど、今回はまだ。
慶次と再び二人きりになった後、他にも本当に色々な場所に行った。
普通?の商店だとか、街のゴロツキが住んでいる場所だとか何だとか。おかげである程度、街の地図が頭に入ったと思う。ちなみにゴロツキの住んでいる場所を教える理由は、どうやら自分が間違えてそちらに入らないようにということらしい。
最終的には前田家の茶屋にたどり着いて、いつきはぐっとのびをした。
「今日はたくさん歩いたべ」
「だなー。で、どうだい?界風は良いところだろ?」
「だべなー。活気があって、いろんな人がいて面白いべ」
色んな人…たとえば、殴り合ってる商店の店主と従業員とか、からくりがたくさんある店だとか、質屋にはとても不思議な人がいたし、怪しげな宗教もそういえばあったきがするし、それになにより。
竜に、会えた。
雪女という種族の妖としては、この邂逅は実に幸運だったといえる。それ以外の妖だって、きっと運が良かったと言うだろう。竜は……正確には妖の上位三種は……つまり、そういう存在なのだ。
畏敬と畏怖を同時に集めるような。
そんな存在。
だから、そんな存在が、竜と鬼が同じ地に住んでいるというのは正直、有り得ないというか恐ろしいというか。界風は好きになれそうだったが、あまり強い力を持つ妖がたくさんいるのは色んな意味でいただけない。何も危害が加えられるとは思わないのだが、何となく、萎縮してしまうのだ。
まぁ、あの二人はとてもいい人だったように思えるから、それも杞憂で、そのうち普通に接したり出来るのだろうか。
そんなことを考えながら茶屋の中にはいると、
「おや、遅かったですね。風来坊に雪の子供」
誰かが、いた。
その人は色素の薄い長い髪を持っていて、どこか不気味な気配を漂わせるような人で。なのに湯飲みを持ってのほほんとしているからギャップが激しく、一体これはどういう反応をしたらいいのかと、惑う。敵意はないようだけれども。
ともかく、その人は茶をすすってから、ポンポンと隣のスペースを叩いた。そこに座れ、ということらしい。
どうしたらいいだろうかと慶次を見上げると、驚くことに彼はとても厳しい視線をその誰かに向けていた。歓迎したくない相手であるようだ。敵意はないのにと不思議に思っていると、楽しげな笑い声が聞こえてきた。
「風来坊、何も私はこの店を潰しに来たのではありません。そんな目で見ないでいただきたいのですが」
「さぁて、アンタの言うことは信用ならないからねぇ…」
「おやおや、嘘は言っていないのですが…まぁ良いでしょう。それより」
すっと視線が滑ってきたのを感じ、いつきは少しだけ身をすくめた。
その反応に満足したかのように目を細め、その誰かはちょいちょいと手招きをした。やっぱり、来い、ということらしい。
逡巡したのは一瞬だった。
き、とその誰かを見据えて、いつきは足を一歩踏み出した。
そうして、彼の目の前に辿り着いたところで止まる。
「おらに何の用だべか?」
「いいえ、大したことではありませんが…あぁ、やっぱりだ」
「……何のことだべ?」
「貴方は、たいそう立派な感覚を持っているようですね。それを確認したかったのです」
「感覚、だべか?」
「えぇ。根拠は幾らかあります。例えばそうですねぇ…」
湯飲みを置いて、その誰かは空いた手の指を一本立てた。
「竜に対して雪女は絶対服従ですが、貴方の反応はその度を超えています。そこから、外からの力に過敏であることが分かりました。それに鬼の雰囲気に押されていたでしょう」
ねぇ?と二本の指を立てて笑う彼に、いつきは何だか気味悪さを覚えた。
別にそのくらいを知られてもなんと言うことはない、気がするのだが……彼にだけは知られてはいけなかったのではないか、という感情も芽生えてくる。それは、恐らく本能的な何らかであり。
何か言わなければと口を開いた瞬間。
「光秀ッ!テメェ人様の家になに迷惑かけに行ってやがる!」
怒声、と形容するのが相応しい大声が店内に響き渡った。
「…元親!?」
「へ?鬼の兄さんだべか!?」
「おや、迎えが来てしまったようですね」
驚いている自分と慶次を余所に、どこまでもマイペースに光秀、と呼ばれた男はふらりと立ち上がった。立ち上がってそれから…うっすらと笑う。
「では、これで退散しましょう。新しい、良いおもちゃも確認できましたし」
鬼と争うのは吝かではありません。
そう言い残して、光秀は去っていった。
あっという間の邂逅で、会話で、退散で。この出会いは何だったのだろうと一瞬思ったが、多分これは最後の光秀の言葉が全てを物語る出会いなのだろう。
…街に来て初日から、おもちゃに任命される、とは。
これからどうなるのだろうと、いつきは酷く不安を覚えた。
まぁ、このあたりとか色々な関係はまたそのうち、という感じで。
普通?の商店だとか、街のゴロツキが住んでいる場所だとか何だとか。おかげである程度、街の地図が頭に入ったと思う。ちなみにゴロツキの住んでいる場所を教える理由は、どうやら自分が間違えてそちらに入らないようにということらしい。
最終的には前田家の茶屋にたどり着いて、いつきはぐっとのびをした。
「今日はたくさん歩いたべ」
「だなー。で、どうだい?界風は良いところだろ?」
「だべなー。活気があって、いろんな人がいて面白いべ」
色んな人…たとえば、殴り合ってる商店の店主と従業員とか、からくりがたくさんある店だとか、質屋にはとても不思議な人がいたし、怪しげな宗教もそういえばあったきがするし、それになにより。
竜に、会えた。
雪女という種族の妖としては、この邂逅は実に幸運だったといえる。それ以外の妖だって、きっと運が良かったと言うだろう。竜は……正確には妖の上位三種は……つまり、そういう存在なのだ。
畏敬と畏怖を同時に集めるような。
そんな存在。
だから、そんな存在が、竜と鬼が同じ地に住んでいるというのは正直、有り得ないというか恐ろしいというか。界風は好きになれそうだったが、あまり強い力を持つ妖がたくさんいるのは色んな意味でいただけない。何も危害が加えられるとは思わないのだが、何となく、萎縮してしまうのだ。
まぁ、あの二人はとてもいい人だったように思えるから、それも杞憂で、そのうち普通に接したり出来るのだろうか。
そんなことを考えながら茶屋の中にはいると、
「おや、遅かったですね。風来坊に雪の子供」
誰かが、いた。
その人は色素の薄い長い髪を持っていて、どこか不気味な気配を漂わせるような人で。なのに湯飲みを持ってのほほんとしているからギャップが激しく、一体これはどういう反応をしたらいいのかと、惑う。敵意はないようだけれども。
ともかく、その人は茶をすすってから、ポンポンと隣のスペースを叩いた。そこに座れ、ということらしい。
どうしたらいいだろうかと慶次を見上げると、驚くことに彼はとても厳しい視線をその誰かに向けていた。歓迎したくない相手であるようだ。敵意はないのにと不思議に思っていると、楽しげな笑い声が聞こえてきた。
「風来坊、何も私はこの店を潰しに来たのではありません。そんな目で見ないでいただきたいのですが」
「さぁて、アンタの言うことは信用ならないからねぇ…」
「おやおや、嘘は言っていないのですが…まぁ良いでしょう。それより」
すっと視線が滑ってきたのを感じ、いつきは少しだけ身をすくめた。
その反応に満足したかのように目を細め、その誰かはちょいちょいと手招きをした。やっぱり、来い、ということらしい。
逡巡したのは一瞬だった。
き、とその誰かを見据えて、いつきは足を一歩踏み出した。
そうして、彼の目の前に辿り着いたところで止まる。
「おらに何の用だべか?」
「いいえ、大したことではありませんが…あぁ、やっぱりだ」
「……何のことだべ?」
「貴方は、たいそう立派な感覚を持っているようですね。それを確認したかったのです」
「感覚、だべか?」
「えぇ。根拠は幾らかあります。例えばそうですねぇ…」
湯飲みを置いて、その誰かは空いた手の指を一本立てた。
「竜に対して雪女は絶対服従ですが、貴方の反応はその度を超えています。そこから、外からの力に過敏であることが分かりました。それに鬼の雰囲気に押されていたでしょう」
ねぇ?と二本の指を立てて笑う彼に、いつきは何だか気味悪さを覚えた。
別にそのくらいを知られてもなんと言うことはない、気がするのだが……彼にだけは知られてはいけなかったのではないか、という感情も芽生えてくる。それは、恐らく本能的な何らかであり。
何か言わなければと口を開いた瞬間。
「光秀ッ!テメェ人様の家になに迷惑かけに行ってやがる!」
怒声、と形容するのが相応しい大声が店内に響き渡った。
「…元親!?」
「へ?鬼の兄さんだべか!?」
「おや、迎えが来てしまったようですね」
驚いている自分と慶次を余所に、どこまでもマイペースに光秀、と呼ばれた男はふらりと立ち上がった。立ち上がってそれから…うっすらと笑う。
「では、これで退散しましょう。新しい、良いおもちゃも確認できましたし」
鬼と争うのは吝かではありません。
そう言い残して、光秀は去っていった。
あっという間の邂逅で、会話で、退散で。この出会いは何だったのだろうと一瞬思ったが、多分これは最後の光秀の言葉が全てを物語る出会いなのだろう。
…街に来て初日から、おもちゃに任命される、とは。
これからどうなるのだろうと、いつきは酷く不安を覚えた。
まぁ、このあたりとか色々な関係はまたそのうち、という感じで。
PR
この記事にコメントする