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よーやくバジル君が出せました…長かった。
053:告げる
「…ねぇ、バジル、何をやっているの?」
「洗濯ですよ。親方様が教えてくださったんです」
「そうなの……」
「はい!」
そう言って、とっても楽しそうに桶と板とで洗濯を続ける少年を、オレガノはとてつもなく微妙な気持ちで眺めた。とっても楽しそうにしているのに悪いのだが、それはちょっと何かが違う気がする。けれど、それを言うには彼はとても楽しそうなのである。言うのが少しでなく…躊躇われるくらいに。
けれど、いつか言わなければならないだろう。その時、自分が言えるのかどうかはあまり自信が持てないのだが。
出来ることならこの現状を生み出した張本人……家光に、どうにか前言を撤回して欲しい物だ。何となくバジルは、その後もこの洗濯を続けていそうな気がするけれど。そこにはあまり触れない方が良いがする。
そんな諸々のことを考えていたオレガノの沈黙を別の意味に取ったのか、良かったら、とバジルが口を開いた。
「何か洗濯しましょうか?」
「…いいえ、今は遠慮しておくわ」
「そうですか……」
心底残念そうな表情で呟かれると何とも、今の自分の言葉が間違った反応なのではないかと思えてくるが、別に間違っていないだろう……これは。
「そういえば、何を洗っているの?」
「親方様の肌着です」
「……」
それを渡されるときの様子がありありと浮かんでくるようだった。家光はきっと、とても楽しそうな笑みを浮かべて「これも洗っといてくれ」なんて言って、肌着を手渡して去っていくのである。
そんなことをするよりも、まずは間違いの方を訂正するべきだと思うのだけれど。
とりあえず、それを家光に期待するのは無理なのだろうと何となく理解はしているけど。
バジルのあの日本についての知識による行動は、もしかして十年後も顕在なのか。