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ちょっと間が開きましたが風巡る街です。
今回は幸村とか佐助とかがちゃんと出てます。前回の分でメインだった皆さんもいます。つまりすっごく賑やかな事になりました。
「真田幸村、今なんてった」
その言葉を。
政宗は聞き返す必要はなかったのだが、聞き返した。
「ですから、政宗殿の身柄を一日だけお借りいたしたく、」
律儀に答えてくる幸村……には悪いのだが、別に自分は良いとしても、だ。全く良しとしない相手も数名いるわけであって。
「却下ぞ」
「却下だな」
「却下だべ」
「却下だよねぇ」
「却下じゃないの?」
案の定、上から順に元就、元親、いつき、佐助、慶次が腕を組んでうんうんと頷きながら即答した。どうやら自分の意思はあまり関係ないらしい。まぁ、それも予想内と言えば予想内ではあるのだが。
…ここは、前田の茶屋だ。だから慶次たちがいるのであって、元親はふらりと寄ってきた。どうせ自分の気配でも察知してきたのだろう。何だかんだで、自分が街にやってくると必ず顔を見せる。同時に、一緒に街に来る元就と険悪な雰囲気を出す。
そんな元就と元親なのだが、今回ばかりは手を組んだらしい。ちら、とトゲトゲとした視線を一瞬だけ交わした後、何も言わずに幸村に視線を戻した。
こうなると絶対に勝てないだろう、幸村は。
五対一の言い合い、というかむしろ公開処刑というか。
それを眺めながら当事者たる政宗は、団子を食べながら傍観者と化していた。
言い合いやケンカ等々には、場合によっては加わる事もある(面白そうだから)のだが、今回は自分が中心にいるため行動は控える。こう言うときはいざとなったら逃げることが出来る場所にいた方が良いのだと経験から知っているから。伊達に長生きはしていない、ということである。
自分の団子が食い終わったので元親の物にまで手を伸ばしている時、佐助が呆れたようにため息を吐いた。
「だいたいさぁ、どこに竜を働かせようっていうバカがいるの」
「ぐ……」
「ここにおるではないか」
言葉に詰まった幸村が何かを言い出す前に、元就が冷たく言い放つ。
「全く…愚かとはこのことを言うのであろうな」
「本当だべさ。アンタ、竜の凄さを分かってねぇべか!?」
いつきまで同意し、最終的には幸村は綺麗に小さくなっていた。
憐れとは思わないが、同情心くらいは抱く。
…ていうか。
ず、と茶を飲みながら、政宗はチラリと視線を直ぐ側に立っている鬼に向けた。
「竜に働かせんのはダメでも、鬼なら良いってどんな了見だ?」
「俺は馴染んでるから良いってことだ」
どか、と政宗の隣に腰掛ける元親に、政宗はくく、と笑って答える。
「ま、それ以前に元親のは趣味入ってるしな」
「そう言うわけだ…って政宗!俺の団子食った!?何か消えてんだけど!?」
「良いじゃねぇか。どうせ何も食わなくても死なねぇだろ、お前」
「お前もだろーが!」
「俺は良いんだよ、俺は」
「どういう理論だ!?」
「…ギャーギャー煩ぇな」
直ぐ側にあったもう一つの団子の皿…つまり慶次の皿から団子を取って、ぐ、と元親の口の中に差し込んだ。ちゃんと喉の方まで行かないようには配慮したが、ふとそうしてやろうかと思ったときには串が折られていた。残念。
「てか串を噛み折んじゃねぇよ」
「一番手っ取り早かったんだから良いだろーが。正当防衛だ」
串の残骸をはき出しながら言う元親に、それもそうだと同意を示すのも何となく面倒だったので、政宗は何も言わずに残りの串に刺さっている団子を食べることにした。このまま慶次の皿に戻すのは少し問題だろう。食べるのも問題とツッコミを入れられる可能性もなきにあらず。だがそこは気にしない。
にしても、と視線を再び言い合っている、ただし元親は抜けてしまっている一団を眺めながら思う。いつまで続けるつもりだろうか、言い合い。放っておいたら延々と続くのだろうか……それは困る。元就がいなければ政宗は帰れない。
どうにかして元就だけでも連れ戻さなければ。そう思っていると、四人に囲まれてダメだ止めろと言われ続け、それでも耐えて何とか言い返そうとする幸村がふいに目にとまった。中々、頑張っているようだ。
……。
「真田幸村ー、やってやっても構わねぇぜ」
「政宗!?」
「誠か!?」
隣からの驚愕の声、視線の先からの明るい声。
両方を両方から受けて、政宗はにぃと笑みを浮かべた。
逃げるよりも面白さの方を取った政宗さんでした、みたいな。