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やはり、目の前のこの少女は自分のことを知っているのだ。
最初に感じた事が間違っていなかったことを喜ぶと同時に、オーガンダムは……ひどい違和感を覚えていた。
おかしい気がするのだ。
どうして、少女のことが思い出せないのか。
思い出せないのか、なんて考えている時点で、自分は彼女のことを知っているはずである。なのに、どうしても。
「オーガンダム……もしかして…記憶が、封じられて?」
「封じ…?」
「それなら説明がいく」
少女は普段とは違って、珍しく長い文章を喋っていた。それだけ事態は悪い物らしい。オーガンダムにもそれは理解できて、軽く頭を振った。
だめだ。だからといって、何も変わらない、思い出せない。
今この瞬間にならハッキリと分かるのに。
どこかの歯車がかみ合っていないと。
けれど、オーガンダムは一つの事実に行き当たって眉をひそめた。
それなら、何かが違うのなら、父はどうして何も言わないのか。
「…お父様は、どうして……」
「オーガンダム…」
どこか、悲しそうに少女は表情をゆがめた。
悲しそうに、哀しそうに。
「お父様は、死んでいるの」
その言葉に。
時間が止まった気がした。
衝撃を受け、固まっているオーガンダムに構うことなく、少女は辛そうに言葉を続けていく。それを、進んで口にはしたくないと言うように。
「八人みんなで決めたけれど……貴方がお父様が生きていると信じたがっているのなら、その幻想の中にいてもらおうと……思っていたけれど。だめ。もう、事態はそれを許すほどに緩やかではないから、言う
お父様はいない。
それを認めて、オーガンダム。いえ…
お姉様」
瞬間。
パチン、と記憶がはじけた。
『お父様、私は妹も欲しいのですが』
『妹かね』
『はい。弟ばかりは嫌です』
『そうだな…ならば、妹も作ろうか』
そう言って、お父様は穏やかに笑ったのだ……
「……ダブルオー、なのですか」
オーガンダムは、自分が望んだが故に生まれた妹に、手を伸ばした。