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武士仮面はどこまで武士仮面で良いのかが分からない…。
突発的仮想物語 3.色とりどりの生徒たち
一時間目の授業は丁度、朝に食堂で出会ったオレンジ色の髪の生徒……アリオスのクラスを、刹那は受け持つことになっているようだ。そういう情報は自然と思い浮かぶ物であって、これが仮想空間における自分の基本的設定なのだろうと推測できた。
流石に一人だと困るかと思っていたら、他にもう一人と共に授業を行うのだというのが、分かった。
……ただし、その一人はとてつもなく問題な相手だった。
「さぁ!出席を取るぞ!」
…………某武士仮面だった。
何でこいつと一緒に授業を受け持たなければならないのかと、頭痛がしだす頭を抱えながら刹那は呻いた。どうしようか、この状況。とりあえず無事に授業を終わらせる自信はこれっぽっちもない。
果たしてどうなるのだろうと、状況に対して完全に傍観の立場を取る刹那の前で、武士仮面はどんどんと出席を取っていく。
そして妙に元気なその様子に、僅かな違和感を覚えるのに大した時間は必要なかった。
おかしい、のだ。いくらあの武士仮面とはいえ、何の理由もなくわいわいとするような浮かれた人間でもないだろうに。何故か、今は何をしていなくても浮かれきってしまっているように見えるのである。
どうしてだろうかと考え、思い出したのは今朝の会話。
こちらには、彼の、より求める存在がいるのだと言うこと。
「それから……我が愛しのダブルオー!」
「黙れ金髪ッ!」
案の定行われた武士仮面の熱烈な告白に、返されたのは鉄製の筆箱。コントロールが甘かったのか、残念ながら額に当たりはした物の、角の部分が当たることは無かった。惜しかった、のだが。
「ふ……ふふふ…」
何となく残念に思っている間にも武士仮面は床に落ちかけた鉄製の筆箱を素早く取り去り、酷く怪しげな笑い声を上げた。
思わず、引く。
そんな自分に構うことなく、武士仮面はついには高笑いを始めた。
「はははは!ついに手に入れたぞ!ダブルオーの筆箱を!」
「…っ…しまった!」
「ふふふふ…これはもう私の物。投げられぶつかり拾ったのだから私の物だ!誰にも私はしない!ふふふふ…ふははははっ!」
「喧しい」
ごん、と。
刹那は武士仮面の後頭部を殴り、その隙に手から筆箱を抜き取ってダブルオー……という名前らしい生徒の方に軽く放った。これは彼の物なのだから、彼に返すのが筋という物だろう。武士仮面に奪われるというのは、全く筋の通っていない話、だ。
難無く筆箱をキャッチした彼は、目線だけで感謝の意を告げてきた。
それには口元を上げるだけの軽い笑みで答え、床に倒れ伏している、今にも復活しそうな武士仮面の腹部を思い切り踏みつけた。
「ぐっ…」
「気絶でもしていろ、この変態が!」
「…少年…これがSMというも…」
「刹那・F・セイエイ、目標を駆逐するッ!」
今度は後頭部をサッカーボールのように蹴りつければ、それはどうにか耐えられない物だったらしい。武士仮面は気を失ったようだった。
それでも気を抜いてはいけないのが、この男、だ。
まず、刹那は空いている席から椅子を一つ持ってきてもらった。自身は教室から出来る限り丈夫な縛る者を探す。鎖でもあればいいのだが普通なら無いだろう……そう思っていたのに、実際にあった。ちなみにそれを見つけたのは自分ではなくケルディム、という名の生徒である。
本当にあるのかと、渡された鎖を見てしみじみと思ったが、今はそれどころではない。
持ってきてもらった椅子に武士仮面を座らせ、その彼を今度は鎖でグルグル巻きにしてみせる。相手が彼であるといえども、鎖までは断ち切ることは出来ないだろう。
そうしてどうにか処置を終え、刹那は額をぬぐった。
「……どうしてコイツが教育の場にいるんだ」
「それは俺も思うが、あまり触れるべき箇所ではないのだと諦めている」
「…お前は?」
「俺はセラヴィーという」
セラヴィーと名乗った生徒は腕を組んで、息を吐いた。
「この教師……いつもダブルオーにちょっかいを出す。どうすれば良いのだろうな…?」
「対策はないと思うぞ。対応策ならあるだろうが」
「それは…力づくで気絶させろと言うことか?」
「そうとも言うな」
頑張れダブルオー。こうなるのは宿命だったんです。